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総文祭の選考会終了 閉会式のようなもの

 お昼休憩をはさんで3試合目。1試合目と同じく、殿山が読手を務めた。

 さすがに舞に比べると、読みの質は劣ってしまうが、だいぶ会場にも殿山の声や読みに波長が合ってきたのか、光輝(みつき)の取りは1試合目に比べると、かなり安定していた。

 そうなると、初段の畑山は光輝の敵ではなく、危なげなく21枚差で下した。ちなみに仙崎は昼休憩をはさんで切り替えられたか、光輝との試合を引きずることなく、佐藤との試合を12枚差とこちらも束勝ちで二段の貫禄を見せつける。

 段位的にも、グループ内での光輝との試合以外は相手を圧倒して勝利してるから、彼も下馬評通りの力を見せたといってもいいだろう。


 そして、この日、予定されていた試合は全て終了。閉会式のような締めの挨拶が行われ、グループ内の1位を表彰と同時に総文祭の大阪府選抜メンバーの発表も行われた。


「それでは、今年の全国高等学校総合文化祭・小倉百人一首競技かるた部門、大阪府チームの選抜メンバーを発表します」


 大阪の高校かるた連盟の会長で春日山高校かるた部の顧問の後藤先生が会場内に響き渡るように発すると、1位で通過している人はともかく、当落線上にいる選手はやや緊張した面持ちだ。中には祈るように目を閉じてる者もいる。


(そっか。3年生にとってはせっかくのチャンスだし、選ばれたいよなー。俺が出なけりゃ、誰かが入れたかもしれないんだ……)


 光輝がそんな思いに耽っていると、


「主将、翔国高校・四条光輝君!」


「え?」


 突然、自分の名前が予想外なところで呼ばれて、ただ驚く。


「はい、四条君、前へ」


「あ、あ、はい……」


 いや、今日の成績なら確かに選ばれると思ってたけど、まさか主将とは……

 事態が飲み込めないまま、光輝は挙動不審のまま、先生が提示した場所へと行く。みんなからの視線が痛い。


「副将、春日山高校・仙崎拓矢君!」


 この調子で、三将、四将……と呼ばれて行って、八将が前列へと並んだ。さらに補欠メンバーも二人発表された。いや、というか、


(俺、なんか場違いじゃね?) 


 光輝はそう思って、助けを求めるように結姫(ゆき)の方を向くと、彼女はパアーっと明るい笑顔で光輝を見ていて、スマホでパシャパシャと写真撮ってて、「マジかよ……」と、逆に頭を抱えることになった。

 だが、冷静に考えると、光輝はこの大会に臨んだ心意気としては一番最低だ。

 父親からもらえるYouTuneカード1万円分に釣られたのが大きい。

 せいぜい受験勉強から逃れるため、推薦入試の材料になるようなものを得るためというのもあったが記念参加の程度の意識ぐらいしかなかった。

 正直、本気で総文祭のメンバー入りを目指していたわけではない。「まあ、選ばれればいいかな」というぐらいのものだった。

 今回、補欠メンバーや選外になった人の中には本気で目指していた人もいたはずだ。

 それを急遽、出場することになったぽっと出の無段の男子高校生に取られるのは無念なのではないだろうか? 光輝はそう思っていた。


「それでは、今回、選ばれた選手たちにそれぞれ抱負のようなものを語っていただきたいと思います。では、まずは主将の四条君から……」


 先生から発言を促されたので、光輝は一呼吸おいて全体を見渡す。その中には結姫がスマホを構えた姿があり、そのスマホからビデオ機能をタップする音が聞こえたが、気にしないようにする。


「えぇ……今回、主将という重要なポジションに選んでいただいたのはとても光栄だと思ってます。これもひとえに今回、このような機会を与えてくださった山上会長、そして、そこにいる花山さんなど、これまで支えてくださった方のお陰だと思っております。ただ…………」


 光輝が一つ言葉を飲み込むと、周囲も次の一声に注目する。


「だからこそ、俺は主将、いや、選抜メンバーを辞退します」


 俺がそう言うと、周囲がざわつく。そりゃそうだ。


「みーくん?」


 結姫も今の光輝の発言には解せないという様子で、隣にいる大阪の高校かるた連盟の後藤会長も困惑している。


「ほぅ……ワシらが今回の結果とか見て選んだだけや。何か不満でもあるんか?」


 そんなざわつく声を一蹴するように山上会長のしわがれた声で場が静まり返る。


「もちろん、不満はありません。ですが……いくつか理由はあります。まず、大阪代表というチームの主将として力不足だということ。大阪はこれまで優勝経験こそありませんが、そちらにおられる桑野六段、花山五段をはじめ、素晴らしい選手が主将として実力、精神的にも引っ張ってきた伝統があります。小学校から今日までかるたの世界から離れていた自分がそんな大役を担えるとは思えないです。

 そして、今日は勝たせてもらいましたが、1試合目など展開次第では負けててもおかしくない試合もありました。それに俺は部活やかるた会で精力的に取り組んできたわけではありません。今回、出場した選手の中には本気でこの8人に入りたいと思って、練習に取り組んできた選手もいるはずです。そんな人たちを差し置いて、ポッと出の俺がこの8人の中に入るわけには……!」


「みーくん、それはちが……!」


光輝が辞退の理由を読み上げていくうちに結姫が間に入ろうとするが、


「それはちゃう!」


 意外な声が二人の声を遮る。その声の主は隣の仙崎だった。


「仙崎君?」


「俺や桜花女子の選手の中にはこのメンバー入りや近江に行くために練習してるし、その思いの強さは確かや。やけど、お前と対戦して思ったが、どう考えてもお前の強さはそれに負けないぐらい練習に取り組んできたかるたや。悔しいけど、練習してきた質や量はここにいる誰よりも上なのは相手をしてわかった。そして、お前は実力で引っ張っていけるだけの強さがある。だから、主将に選んだんやと思う」


 その仙崎の言葉にみんながうんうんと頷く。それを見て、光輝もむず痒い気持ちになる。

 改めて、本当に俺なんかでいいのか? この期に及んで、辞退しますなんて言ったような自分にと光輝は余計に罪悪感に苛まれる。


「でも、俺、団体戦の経験なんて、ほとんどないけど……」


「俺は去年も総文祭経験しとるし、その辺はなんとかフォローしたるわ」


「私も協力するよー!」


 結姫も手をぶんぶんと振りながらそう言ってくれる。


「そう言うことや。アンタが経験不足なんはこっちも承知の上で選んだんや。アンタが力発揮できるように大阪明星会で協力するからな」


「は、はい……」


 さすがに山上会長にまでこう言われると、もう逃げ場はなくなったし、男として引き下がるわけにもいかない。


「みんな、こう言ってますけど……」


 大阪の高校かるた連盟の後藤会長から、そう言われ、


「は、はい。えーっと、本当にこんなヤツで、主将として頼りないと思いますけど……でも、久しぶりの大会でもいい感じで取れてたと思うので、このかるたを本番でも発揮できるように、いや、それよりも強くなれるように精進していきますので、皆さん、よろしくお願いします。え、えぇ……以上です」


 最後、締まらないようにぼそっと言うと、少し遅れて場内に拍手が鳴り響いた。光輝の抱負? みたいなのが終わって、順に各選手が抱負を語っていく。

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