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光輝、7年ぶりの対外試合⑥~結姫が語る光輝との日常(結姫サイド)~

 みーくんの次の相手はC級二段の仙崎君だ。C級とは言っても、旧基準で考えると、B級でも上位の選手だろう。おそらく、彼が再びBに昇級し、三段を取る日も近いはず。それにしても……


「E級って言ってもD級ぐらいの実力はありそうだけど、仙崎先輩なら余裕でしょ」


「ああ。仙崎先輩、今はC級だけど、三段クラスの力だからな。今日も調子良さそうだし、勝負になんねーよ」


 勝手に言ってくれちゃって。私は「見てなさいよ~」と思うと同時に「むんっ」と発し、「みーくん、がんばれ、がんばれ!」と両手ガッツポーズを胸元に作って念を送る。そんな私の横に暗記時間中で運営が暇になった舞さんが近寄ってくる。


「ねぇねぇ、結姫(ゆき)ちゃん」


「あ、お疲れ様です。舞さん」


 若干、今の私の両手ガッツポーズの様子に舞さんは引き気味の様子だったような気もするが、気にしないことにする。


「さっき言ってたけど、結姫ちゃんって、ウチの会で練習する日以外はかささぎ橋で四条君と練習してるのよね?」


「はい。ほぼ毎日、やってますよ~」


 私がほんわかした様子でさも日常を語るかのように言う。


「ほぼ毎日って、かささぎ橋って週2回じゃなかったっけ?」


「だから、練習が終わった後に練習場所の家の離れで夜の空いた時間でやってるんです。かささぎ橋の練習がない日もみーくんと取ってるんですよ~。だから、ほぼ毎日です」


「それって、いつから?」


「私がA級に上がるか上がらないかの頃ですから、中一の時? もう、5、6年はやってますね」


 今の私の一連の言葉を聞いて、舞さんはハッとした表情で私とみーくんを交互に見る。そして、舞さんはガシッと痛くない程度に私の両肩を掴む。


「対戦成績はどれぐらい? ほぼ毎日ってことは軽く100試合以上は取ってるわよね?」


 私はそんな舞さんの鬼気迫る表情に緊張が走り、たじろいでしまう。


「は、はい……ま、まぁ、私もみーくんも、テーマ持って試合したり、取り方の指定をしたりするので、一概にそのままの勝敗とは言えないと思いますが……」


 実際は毎回、それなりに本気で取っているのだが、何かテーマを抱えての試合が多いため、内容こそ重視すれど勝敗はお互いそれほど気にしたことはない。


「たぶん、五分五分のやや私が勝ち越してるんじゃないかと思いますけど……」


「結姫ちゃんと五分五分って…………結姫ちゃん、四条君に負けることあるの?」


「はい、普通に負けますよ。さすがに私が束勝ちすることもありますけど、そこはさすがに意地ですね~」


 私があっけらかんと言うと、舞さんは目を見開き、みーくんの方を向いて、「あの子、一体……」とぼそぼそ呟き、何かを胸に秘めてるかのように俯く。

 その様子に私はどうしたものかと慌てふためく。


「ま、舞さん……?」


(結姫ちゃんは並のA級じゃない。私も目標はクイーンだけど、彼女もクイーンを目指せる強さ……! そんな子に五分の対戦成績だったとしたら……!)


 私が様子のおかしい舞さんに話しかけると、舞さんは無言のまま立ち上がり、パイプ椅子に座っている山上会長のもとへと向かって行った。


「会長」


 そして、暗記中で静まり返った柔道場という空間の中に凛としつつも透き通った声が響き渡る。


「ん? どうしたんや」


「この試合、私に読手をやらせてもらえませんか」


 舞さんの声はよく通るので、今のやり取りは会場にいる全員に聞こえていた。今の舞さんの発言で会場が控えの部員だけでなく、暗記中の試合に臨んでいる選手たちもざわついた。席を離れていたみーくん一人を除いて。

 この試合は一試合休憩をはさむ殿山さんの代わりに仕方なく桜花女子の顧問の斎藤先生が読手を務める予定。斎藤先生の読みは私も聞いたことあるが、少なくとも今の殿山さんよりはうまいけど、この人は公認読手じゃない。

 しかし、舞さんは全日本が主催する大会でも読手ができる公認読手。しかも、つい最近、A級公認読手になった。この人は読手としても一流なのだ。確かに舞さんが最初から読んでくれれば……


「まぁ、万一のためにとは思ってたけど……いきなり、いけるか?」


「大丈夫です。準備はできてます」


「アンタがそういうなら、ええけど」


「斎藤先生もかまいませんか?」


「は、はい。わたしは別に」


 斎藤先生はぶっちゃけ、読手からのプレッシャーから解放されそうでほっとしたような様子を見せた。どうも、話はあっさりと収まったようだ。

 殿山さんといい、斎藤先生といい、普段からこの人たちの読みを聞いてる桜花女子の選手たちに有利すぎるから、山上会長としても大会運営の都合上、異論はない。

 そして、決定が下されて、舞さんが私にアイコンタクトを送る。そっか、誰かが舞さんの役をやらないといけないんだ。


「じゃあ、私が代わりに競技運営に入りますね」


 みーくんの試合を近くで見れないのは残念だけど……

 みーくん、舞台は整ったわよ。見せつけなさい。あなたのかるたを。


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