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49話 カラードの力

 「禊雫、完全に人間をやめたな――――アイリスッやつを殺せ!」

 アイリスが指示に従ってCEMボーグへの命令を行おうとする。

 だが、その全てが遅かった。

 すでに命令を送る対象――CEMボーグは視界のどこにも存在しない。

戦いは一瞬で決着していた。

 「まさか――僕のCEMボーグを、全て喰った、の、か」

 私は増えた尻尾を器用に動かし、敵の兵隊を全て腹に収めていた。

 レオナルドの元で戦う彼女たちには何の罪もないのだ。

 もう命令に従わなくていい、死ぬまで戦い続ける必要はない。

 せめてその魂には安らかな最期を与えよう。

 そして私の力を目の当たりにしたメイドが一歩前に出る。いよいよ本命のお出ましか。

 「見事です。ではここからは私が相手を務めさせていただきましょう。指揮官、この相手には手加減ができません。無傷で確保することは断念してよろしいですか?」

 メイドは微笑を讃えて私と正対したまま、部隊の指揮官に確認をとる。

 「仕方ないか。禊雫の回収は死体で構わない。いいかアイリス、そいつを完膚無きまで叩きのめして、その下卑た腹からプラーズを引き摺り出せ!」

 白髪の男の命令とともにメイドがナイフを携え、一直線にこちらへと向かってくる。

 恐るべき俊足で迫る敵に対して私は、尻尾をバネにした跳躍で速度を調整、その速度に対応しようとした。

 「オーダー・ゴールド・グラビティ」

 《ゴールド・カラー・リリース》

 「ガッ――?!」

 アイリスが何か口を動かしたところまでは視えていた。だがそこから急に体が押さえつけられたように重くなった私は、飛び出そうとしたその場で転倒して、勢いのままに地面を転がっていた。

 「アイリスが持つカラーによる質量操作、そして大和の技術であるカラー補助デバイス――CED、これによって彼女は周囲の重力を自由に操作できる。どうです? 僕の最高傑作のアイリスは」

 ご丁寧に解説をしてくれる。

 なるほど。今の現象はカラーを使用して発生させたものか。

 「アイリスがあなたを倒せば、プラーズの作った実験体全てよりも僕の研究のほうが上だと証明できる。CEMボーグを倒したことは褒めてあげましょう。ですが、研究者としての技術は僕の方が優秀だったというわけですねぇ。くっくっく、あはははははっ」

 笑う研究者を前に私は思う。

 果たして大事なのは研究――それとも勝った負けたなのか、と。

 「はぁ……君は自分のことばかりでプラーズのことを何も理解していない。可哀想だ」

 私はメイドの放った技――その現象に驚きつつも、心は冷静そのものだった。

 それはこの状況をプラーズが事前に教えてくれていたからだ。

 まさかこの場に現れる敵対者がペイント園のレオくんだとは思わなかったけど。

 『私がお姉さんの願いを叶える。あなたを――殺す。これでお姉さんは自由になれる。だから頼まれてくれないか』

 あの時の会話でプラーズは――ある頼み事と勝利への一手までを託していたのだ。

 「あなたが強くても私は負けないよ……プラーズに頼まれたことがあるから」

 私は強く宣言して何倍にも強くなった重力に逆らい、ゆっくりと立ち上がった。

 あのメイドのカラー能力は強大だ。

 それでも私はここで自分が立ち上がれない姿がイメージできなかった。

 私がプラーズに頼まれたことを果たせないはずはない。

 愛しい相手からの頼みは絶対に叶える――私は約束を守る女なのだ。

 立ち上がった私はメイドに組み付き五本の尻尾を使って体を完全に拘束する。

 「まさか私のカラーを跳ね返すほどの力を使うとは、ですがそれでは何の解決にも――」

 「ダイダロスッ!!!」

 私が発した名称に反応したメイドは沈黙するカラーギアを見た。

 そして気づく。

 破壊されたカラーギア、その残骸の一部が発光していることに。

 「「ファイア」」

 胎内のプラーズの声で私は攻撃命令を下した。

 私の声とプラーズの声が重なることで命令は受理され、ビームは放たれる。

 「……任務完了、全てはご主人様の計画通りに。これで、私は解放、――」

 その一撃はメイドの腹を的確に貫いていた。最後は自らを捧げるようにして一撃を受けたメイドは力無く地面に倒れる。

 それと同時にカラン、という金属音が響いた。それはメイドの首に取り付けられていた白色のチョーカーが外れた音だった。

 それを確認した私は、これも予定通りかとメイドを自身の体内へと吸収する。

 「んっ、ふぅ……これであなたは一人。守るものは誰もいない。まぁ本心から守ってくれる人は最初からいなかったみたいだけど。命を大事にしなかったあなたの負けね」

 周囲に誰もいなくなって孤立する彼に言葉をかけた。

 この場の勝敗が決したことを伝える。

 「そんな、僕のアイリスが負けるなんて。ありえない。まさか最初から、カラーギアの一撃を用意していたというのか。どこまで僕を馬鹿にするんだ、プラーズ……! くそっ、くそっ、くそっ。まだだ私がいる限りお前だけは――」

 彼の態度を見て私はため息をついた。

 どうやら敗北を受け入れる気はないらしい。

 ここで私が何を語ったとしても彼が耳を傾けることはないのだろう。

 「後は当人たちで決着をつけるといいよ。男の子はそういうものでしょう?」

 そう言って私はレオナルドを呑み込む。

 彼はポカンと口を開けたまま、何の抵抗もなく私の腹の中に収まった。

 「プラーズ、頼み事は果たしたよ。あなたを信じているわ」

 正直、プラーズを害した彼のことが殺したいほどに憎い。

 彼に同情する部分があるとしても看過できない要素が大きすぎた。

 だから私がこの手でレオを殺してもよかったが、それはダメだ。


 これは孤児院から続く――――――彼ら二人の因縁なのだから。


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