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41話 少女たちの輝き

 「人間がおもちゃ無しで俺様と戦おうってか。それも1人、生身で? ――ハッ。お前に俺様を笑わせる以上のことができるというのか、やれるならやってみろ、人間ッ!」

 無手で迫る私を嘲るようにして魔女は笑った。

 それはCEMとしての強さ、脅威度ランク4の魔女としての強さ、取り込んだお姉さんの強さ、どれをとってもただの人間に勝ち目があるとは思えないのだろう。

 そこには泰然とした強者の余裕があった。

 「じゃあそれを試してやる。私たちは負けない。そうだな――アカリ!」

 私は少女の名前を叫び、魔女との間合いを一気に詰めた。

 「私にはみんながついている。だからこれは私一人ではなく――みんなの拳だ」

 単純な普通の拳が魔女に届くことはない。

 だから私は信頼する仲間の力を借りることにした。

 この拳から溢れる赤い輝き――それはアカリのソウルコア。

 たとえ自分の肉体の機能が停止していても。

 私の信じる少女たちはその魂――ソウルコアとなって力を貸してくれていた。

 私は最速最小の動きで接近して魔女の傲岸不遜な顔に赤く輝く拳をお見舞いする。

 隣にはアカリがいて、支えてくれる。

 「確かにいいパンチだ。吠えるだけのことはある。ふんっ、だがな――」

 魔女は殴られた勢いに身を任せて、そのまま後方へと吹き飛んでいった。

 しかしその一撃で戦いが決着するはずはなく、吹き飛びながらも空中でくるりと体勢を変えた魔女は後方の壁に足をつき、壁を蹴って跳躍――一瞬でこちらに舞い戻る。

 「いいパンチをもらった――こいつはお返しだ!」

 壁を蹴った勢いを利用して振りかぶる魔女の拳は暴力であり破壊の一撃だ。

 さらに赤い炎を纏わせた魔女の拳をまともに受けてしまえば、重装甲のカラーギアでさえも一撃でスクラップにされる――そんな想像が容易に浮かんだ。

 だが、それでも。

 「いかに魔女の拳が強力でも私たちには最強の盾がある。そうだな――ミドリ!」

 「――んなぁ?!」

 私は少女の名前を叫び、魔女の赤く燃える拳を大盾で受け止める。

 私は魔女が吹き飛んだ瞬間に少女の大盾を拾い、防御の構えを作っていた。

 この盾から溢れる緑の輝き――それはミドリのソウルコア。

 「いい顔だな。そんな顔もできたのか、魔女」

 私は緑に輝く大盾を前に突き出し、赤き炎を纏う魔女――その腕の可動域を封じる。

 隣にはミドリがいて、支えてくれる。

 「人間如きが俺様と力比べしようってかぁ!」

 「いいや、流石に勝てないからそれはやめておく」

 拳を封じられた魔女はその圧倒的なカラーを用い、大楯を溶かして真っ二つにした。

 しかしその時にはすでに、引き裂いた盾の後ろに私の姿はない。

 「どこだ人間、どこに消えた!」

 「魔女、私はここにいるぞ。私たちは支え合う、そうだな――キサラ!」

 私は少女の名前を叫び、魔女から距離をとってスナイパーライフルを中腰で構えた。

 このライフルから溢れる黄の輝き――それはキサラのソウルコア。

 隣にはキサラがいて、支えてくれる。

 そして魔女がこちらの位置に気付いたときには、すでに弾丸は発射されていた。

 「ふんっ、こんなものでッ」

 対する魔女は身を守るべく炎の壁を展開する――が、カラーを宿したライフルの弾丸は拳銃の弾丸のように溶けることはなく、炎の壁を貫通して魔女の下腹部に命中する。

 「ぐうっ、ぬううう。このっ、この俺の、俺様の腹に傷をつけたなあああああああああ」

 黄色に輝く弾丸が魔女の赤き肉体に傷を付けた。

 その身に弾丸を受けた魔女は激昂、即座にこちらへと肉薄し掌を突き出してくる。

 「女を取り込んだ腹をよくも――許さんッッ! オオオオオオ、消し飛べッッッ!!!」

 突き出された魔女の掌に炎の球体が出現したかと思えば、それは頭上に掲げられて一瞬で巨大化する。

 その大きさは魔女の体の数倍を超えていて、これでは相手に当てるというよりも、飲み込むとかすり潰すという表現がしっくりくるほどの大きさになっていた。

 「私たちに切り裂けない障害は存在しない、そうだな――アオイ!」

 私は少女の名前を叫び、こちらに迫る巨大な火の玉に向けて走り出した。

 「はぁ!!! 血迷ったか人間!!!」

 眼前に迫る大火球を前に、私はその手に握る得物に力を込める―それは大剣。

 私は回収した大剣に助走でつけたスピードと遠心力を加えて、力の限り振りかぶる。

 この大剣から溢れる青の輝き――それはアオイのソウルコア。

隣にはアオイがいて、支えてくれる。

 「せいっ、やああああああ!」

 青色に輝く大剣が魔女の放った大火球を真っ二つに両断する。

 私は大剣を振るった勢いを利用して一回転、さらにもう一振りを魔女へと叩き込む。

 「ぐおおおおおっ。まさかあの大火球を切るとは……見事だぁ。くっくっく。面白くなってきたぞ人間、もっと、もっとだ! お前の、いや、お前たちの可能性を見せてみろ!」

 大剣に斬られた魔女はよろよろと後退するも、その傷はすぐに再生して塞がった。

 その様子から魔女を倒すには、さらに大きな一撃を与える必要があると私は確信する。

 「生半可な攻撃ではすぐに再生する、か。ではこれならどうだ――アカリ、キサラ!」

 赤いソウルコアを握りしめ、燃え盛る赤を拳に宿した私は魔女へ接近戦を仕掛ける。

 「ハッ。人間の拳など俺の体に触れるのも辛かろう。それでどうする、どう戦う!」

 至近距離から拳を一発、二発と連続して打ち込んでいくが魔女の様子に変化はない。

 魔女がその身に纏う炎をこちらが相殺できても魔女本体までダメージが通らず、こちらがダメージを与えるに至らない状況が続いた。

 「さすがに硬いな。だがここまでは想定通りッ、これなら――どうだッ!」

 私はカラーを出力するソウルコアをアカリの赤色からキサラの黄色に切り替える。

 己の全身に纏ったカラーは黄色が発生させる雷の力で攻撃速度を倍加させ、さらには移動速度をも上昇させていた。

 そして魔女の拳を高速移動で回避し、そこからカウンターとして魔女の腕を掴んで背負い、そのまま投げた。

 攻撃の勢いのまま投げられた魔女の巨体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。

 「ぐおっ――おおっ。はっ、はははははははは!」

 アカリの赤色とキサラの黄色、二人の少女のカラーを切り替えて放った連携攻撃――その攻撃力と奇襲性は高いはず、なのに。

 地面に叩きつけられた魔女は大の字になって倒れ、愉快に笑っていた。

 ライフル弾に腹を撃たれたときは急に怒り出した魔女が、今は地面に倒れて笑っている。

 「何が可笑しい、なぜ笑う?」

 その光景を見た私は思わず、頭の中に浮かんだ問いを投げていた。

 「いやな。綺麗に投げられちまったのが面白くてよぉ。くくくっ。ははっははははは!」

 「投げられたことがそんなに面白いのか?」

 「ああ――俺様は人間のことを下等な生物とばかり思っていた。だがお前といいこの女といい、人間は俺の想像を超える生物だった。だから嬉しい、楽しいのさ! もうウォーミングアップは終わりでいいか? いや、いいよな! 女の力が俺様の中を駆け巡っている! もう無理だ、この力を試したい欲求が爆発するぞおおおおおおおおおおお」

 魔女は私の返事を待つことなく一動作で起き上がり、こちらに向かって突っ込んできた。

 私との間合いを瞬きの一瞬で詰め、即座に拳を繰り出してくる。

 「くっ」

 「そらそら! おらよっとぉ! どんどん行くぞっ」

 胎動する魔女の腹から大量のカラーが生み出され、全身に供給されているのが見えた。

 その異常なカラー量が生み出すのは炎の出力向上に留まらない。

 それは魔女の身体機能と再生能力の底上げだった。ゆえに私は今以上の攻撃と防御を行使しなければならなくなった。

 状況は悪化の一途を辿る。

 「それでも私たちは負けないッ。これならどうだ――アオイ、ミドリ!」

 私はそんな状況を変えるために、まずは繰り出される数多の拳に緑の盾を生成することで耐え、魔女の炎には青い炎をぶつけることで相殺を試みる。

 「負けてたまるかああああああああああ!!!」

 ミドリの緑色とアオイの青色、二人の少女のカラーを切り替えて放った連携防御――その防御力と対応力は高い、はず……なのに。

 魔女の拳によって緑の盾は砕かれ、青い炎は魔女の炎に丸ごと呑み込まれた。

 「がはっ。はぁ、はぁ……このまま、終わると、思うな――私たちが、お前を、倒す!」

 「いいぞ。立ち上がれ。もっと打ってこい! お前たち人間の可能性を見せてみろ!」

 「まだだ、私はまだ諦めない。みんなと共にいる限り、私は諦めないッッ!」

 私はちらり、と後方で倒れているヘイの姿を横目に確認する。

 あの子を助けたい、無事に帰してやりたい。

 ヘイには幸せになってもらいたい。

 いま私に力を貸してくれている少女たちも、彼女の幸せを望んでいる。

 だから私は魂の一片になろうとも、絶対に勝利を諦めることはない!

 「アカリ、キサラ、ミドリ、アオイ――力を貸してくれ。みんなの力でヘイを守ろう」


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