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30話 最深部へ

 富士樹海に隠された山中の廃坑道、それを利用することで要塞内部への潜入に成功した私たちフォビドゥンバレットは、そこから多くの障害を突破した。

 敵兵士と設備を無力化しながら、ひたすら最深部を目指す。

 そしてこの時、今まで突破してきた扉とは一線を画す巨大な扉が姿を見せた。

 重厚な金庫を想像させる円形の扉はアイリス研究所のものに似ているが、あれの大きさは人間が出入りする想定で設計されたものだ。

 だが、私たちの目の前でその大きさを誇示しているのは、カラーギアさえも悠々通れるような巨大な質量の塊だった。

 私たちはついに、富士機械化要塞の最深部たる中枢へと続く扉に手をかけていた。

 この巨大な扉を前に私は、ダイスに搭載されたハッキングツールを複数併用して扉の防護壁を食い破る。

 「この先は要塞最深部の中枢区画だ。ここからは速度を重視、一気に駆け抜けるぞ!」

 「「「「「了解!!!」」」」」「――ザザッ」

 そして軽い電子音を合図に巨大な扉がロックの解除を告げた。

 巨大な鋼鉄の扉が横にスライドしてゆっくりと開かれる。

 扉が開くにつれて広がっていく扉の隙間からは、焼け付くような熱気が熱風となって私たちに吹き付けてきていた。

 熱風に逆らうように私たちは、その最深部へ、最初の一歩を踏み出そうとした。

 その時――大きなエネルギー反応が突如として前方に出現する。

 それは私たちを待ち構えていたかのようなタイミングだった。

 「うわっ、なにこのエネルギー量っ!?」「――っ、ミドリ!!!」

 赤き少女が驚きで目を見開くのと同時、戦場ではすでに冷静な声が飛んでいた。

 そして呼ばれた名の通り――新緑の名前を与えられた一人の少女が前へと躍り出て、私たちの前に大きな盾を中心としたシールドが展開される。

 「ッ――やら、せ、ない。シー、ルド、展――開!!!」

 眼前で少女の大盾とエネルギーの塊が衝突する。

 その衝撃で大盾を支える緑色の少女の体が後方へと押し返されるも、大盾は依然として健在――いまも巨大なエネルギーの塊を防ぎ、私たち全員を守ってくれていた。

 だがこの状況が長く続けば、私たちに訪れるのは盾もろとも消炭にされる未来だ。

 「アオイ! ――!」

 「任せて! はあああああ!」

 冷静な声に応えた少女たちが盾の少女の後ろから飛び出した。

 宙空に飛び出した少女は飛んだ勢いそのままに、光の発生源へと向かっていく。

 その手には青い輝きを放つ大剣が携えられており、エネルギーをこちらに照射し続ける光の発生源へ向けて、その大きな剣を振り下ろそうとする――が。

 「――っ、グレネード! キサラ!」

 その時、別の装備が宙空へと狙いを定め――光の発生源へと迫る青き大剣を持つ少女に向けられていた。

 無骨な外見をしたそれはグレネードランチャーと呼ばれるもので、砲弾が爆発することで対象にダメージを与える――敵を爆破するための装備であった。

 冷静な声が次の指示を発するが、光の発生源に接近していた大剣の少女はすでに勢いがついていることに加えて重い大剣を装備しているため、中空では急な回避を行うことができない。

 回避も防御もできない状態の青き大剣の少女目掛けて、その装備は無慈悲に火を吹いた。

 「――ファイア」

 富士機械化要塞の最深部に盛大な爆発音が響き渡る。

 だが、狙われたはずの青き大剣の少女は健在であり、あろうことか無傷だった。

 「ふぅー」

 それは盾の少女の後ろから飛び出したのが、青い少女一人ではなかったからだ。

 もう一人の少女は黄色を纏い、宙空ではなく真横に飛び出していた。

 真横に飛び出した黄色の少女は両手でスナイパーライフルを構えて、今まさに発射される瞬間のグレネードランチャーの弾を撃ち落としたのだ。

 そしてグレネードランチャーは発射の瞬間を狙われたことで発射された弾丸の爆発が装備本体を巻き込み、装填されていた他の弾薬に誘引して盛大な爆発を引き起こしていた。

 「そのまま行って! アオイ!」

 グレネードランチャーが引き起こした大きな爆発によって、ソレの視界が塞がれたことを冷静な黒き司令塔の少女は見逃さなかった。

 すかさず青き大剣の少女に向けて攻撃続行の指示を出す。

 それを聞いた青き大剣の少女は剣を握る両手に力を込め、飛び出した勢いに加えてさらに空中で一回転してから、その一閃を光の発生源に向けて解き放った。

 「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!! ――!?」

 だが、振り下ろされた大剣の刀身は空中で透明な膜に遮られ、静止していた。

 「くっうぅぅぅ――硬いいいいいっ」

 黒き司令塔の少女は、その表面に何かあると違和感の正体を注視して解析を進める。

 「あのシールドは、まさか……そうよね」

 黒き司令塔の少女は表面に張られた透明な膜――シールドが大剣を押し留めているということ、すぐにその種類を看破すると、瞬時に対応策を傍に控える赤き少女へと伝えた。

 「それなら……キサラは陽動――本命の準備はできているわね、アカリ?」

 黒き司令塔の少女が看破した情報を元に新たな指示を出した頃、空中で静止したままシールドと拮抗する大剣の少女を狙うべく、別の装備が動き出していた。

 先ほど破壊されたグレネードランチャーが装備されていた腕部、そこに備えられた別の装備が鋭さを鈍色に輝かせた。

 やがて回転を始めたそれはモーターブレードと呼ばれるもので、回転する刃が接触物を即座にミンチへと変える――相手を斬り刻むための装備であった。

 殺傷能力の高いモーターブレードの攻撃を阻止すべく、スナイパーライフルを構えた黄色の少女が再度狙いをつけるが、発射された弾丸は透明な膜に軌道を逸らされてしまう。

 唸りを上げて回転する凶器は止まらない。

 そして振るわれる刃が青き少女の肌に肉薄した時、それは起こった。

 「――なんとか間に合わせたみたいね、アカリ」

 黒き司令塔の少女が少しホッとした様子で呟く。

 その傍らにはそんな呟きを意に介さず、目を閉じたまま極限の集中を続ける赤き少女がいた。

 己の胎内で脈動する力を片手で抑えながら、もう片方の手で世界に音を響かせる。

 パチン――赤き少女が二本の指を使って鳴らしたそれは、戦場にはおよそ似つかわしくない軽快な音だったが、それゆえによく通る音だった。

 それを実行したのは、戦闘の中でいまだ盾の少女の後ろに隠れていた赤き少女だ。

 彼女は前に出て戦う少女たちに守られながら、カラーを使うために意識を集中させ、己の色を極限まで高めていたのだ。

 そして――極限の集中によって生み出された色は、鳴らした音によって世界に現出する。

 「ふぅぅぅぅ――オーダー・レッド・パニッシュ」

 世界に現出した赤が一つの装備を焼き焦がす。

 そして――小さな爆発が起きた。

 その装備は光の発生源たるソレの全体からすればかなり小さな部位だといえた。

 だがその部位が担っていた役割は大きさと反対に重要だったことがわかる。

 それは爆発によってその役割が機能を停止したからだ。

 「――ッ、シールドが消えたっ!?」

 青き大剣の少女は手応えの変化に驚きながらも、シールドの消失を感覚で理解した。

 炎を放った赤き少女はその小さな部位がシールド発生装置だと知っていた。それは黒き司令塔の少女から指示されたから。

 その指示通り、最小の場所に的確な一撃を命中させることができたのである。

 「よくやってくれましたアカリ。では後は――アオイ、あなたの役目ですよ」

 「わかった。とっおおおおおおお、せいっ、やあああああああ!!!」

 エネルギーを放出し続けていた腹部の光源が青き大剣によって両断された。

 それによってエネルギーを放出する攻撃装備は破壊され、盛大に爆発する。

 ようやく敵の攻撃が途絶えたことで、ひたすらに光を耐えていた盾の少女はふぇぇと息をついて地面にへたり込む。

 「お前たち、見事な連携だ。私の指示なしでよくここまでやれるようになったな」

 「当然です」「あ、りがと、う、ござい、ます」「まぁまずまずかな」「どんなもんよ!」「うまくいってよかったわ」

 黒き司令塔の少女の指揮、緑の盾の少女の防御、青き大剣の少女の斬撃、黄色のスナイパーの少女の狙撃、赤きカラーの少女の炎――少女たちのコンビネーションは完璧だった。

 実験を乗り越え、訓練の日々によって成長した少女たちの連携は、富士機械化要塞最深部で待ち受けていた機械兵器、カラーギア『ダイダロス』の攻撃を耐え、そればかりか反撃を成功させるまでになっていた。


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