表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/51

1.ドラゴンハートを拾った。(1)

会社に出勤して作業道具を取り出し、

人数分の荷物をトラックに積んだ。


俺の仕事はゴミ処理場の清掃。

汚くてキツいだけでなく、魔界では清掃員のイメージが良くないため、他の者はやりたがらない仕事だ。

だが、前世で持っていたスキル「浄化」を使えば、少し我慢するだけでそれほど大変な仕事ではなかった。


道が悪く、トラックの荷台に乗っていると、地面の凹凸が全身に伝わってくる。


ガタンッ。


不満なのは俺だけではなかったらしく、

誰かが運転席に向かって怒鳴った。


「運転ちゃんとしろよ!ケツが痛え!」


返ってきたのは、窓から突き出された中指。


「ぷふっ。」

「ククッ。」


周囲の笑いに、その男は顔をしかめて怒りを押し殺した。


ガタガタ揺れるトラックの上で、しばらく尻を痛めていると、吐き気がこみ上げてきた。


数日前から始まった魔界編入100周年の祭りが昨日終わったばかりで、祭り期間中は酒が安く、つい飲み過ぎてしまったためだ。


浄化を使って酔う前にアルコールを消すこともできたが、酔うために飲んだのだから、そんなことをすれば酒がもったいないではないか。


ガタン。


「着いたぞ、降りろ!」

「お降りくださーい!」


どどどっ。


手際よくトラックから荷物を下ろし、チームを分けて行動することになった。


俺のチームは俺、ハンス、そしてジョッシュ。


ハンスはここ半年ほど一緒に仕事をしている仲間。

ジョッシュはトラックで恥をかいた男で、誰も組もうとしなかったため、経験があるという理由で俺が引き受けた。


一緒に行動するジョッシュが人懐っこく寄ってくる。


「えへへ、よろしくお願いします、先輩方。」

「なんで俺たちが先輩なんだ?お前の方が年上だろ。」

「年齢だけが全てじゃないですよ。有名ですからね、お二人。事務所でも最強のコンビって聞いてます。」

「水に落ちても口だけは浮かぶな。」


ハンスの言葉に、ジョッシュは手を振って言った。


「俺も、そういう口だけのやつ大嫌いです。」


そんな二人を横目に、ゴミ処理場の入り口を守るインプに近づいた。


「今日も来たな?一度も休んだことがないな。実に勤勉だ。」


俺の背丈の半分もないインプ。

下級魔族だが、ああ見えて魔法使い。

俺のような人間がどうこうできる存在ではない。


インプが笑いながら言う。


「ククッ、お前がいつ死ぬか賭けてるんだが、もし死にたいなら教えろよ。あの世への旅費は用意してやるぜ。」

「死ぬつもりはないから、そんな賭けはやめとけ。」

「さあな。弱い人間が死ぬ場所なんて選べると思ってるのか?行けよ。」


入場の許可をもらい、俺たちは防毒マスクをつけて中に入った。


「初めてのやつは、死にたくなければベテランの言うことをよく聞いて、生きてまた会おう。」


他のチームが離れていくのを見送った後、蟻の巣のように広がる通路を先導して歩いた。


ゴミ処理場は文字通り、

都市から出た不要物が集まる場所。


こういう場所はいくつか存在しており、定期的に掃除しないと変異スライムが発生してしまう。


グサッ。


俺は持ってきた電気棒でスライムの核を突いて破壊した。

細長い液体がついてくる。

棒を振って振り払った。


俺たちは周囲を確認しながら、汚染されたスライムを処理していった。


ここはゴミ処理場。

まれに金目の物が捨てられていることもあり、運が良ければ1日分の酒代くらいは稼げる。

そんな中、思いもよらないものに遭遇した。


「これって…あれじゃない?噂でしか聞いたことなかったけど、本物とは…」

「先輩方、この化け物、もう死んでるみたいですよ?」


俺たちの目の前に、通路を埋め尽くすように転がっていたのは、都市の主が宴で使用したというドラゴンの死体だった。


ここまで来る途中、以前よりスライムが少なかったのはこのせいか。

死体にびっしりとくっついて見えなかったようだ。


スライムの集まり方は気持ち悪かったが、

その鱗から放たれる独特な魅力に、つい見惚れていたところ、ハンスが沈黙を破った。


「ぼーっとしてないで片付けようぜ。ひと儲けできるぞ!」


金になると目を輝かせたハンスが、死体に張りついたスライムを倒し始めた。


「ジョッシュ!手伝え!」

「はいっ!」


俺もその列に加わった。


『これ、いくらになるんだろうな…』


どうせやる仕事なら、金も稼げた方がいい。

電気棒を手に、死体にくっついたスライムを突いた。


グサッ。

ジューッ。


すると、それまでと違う濃厚な魔気が顔に襲いかかってきた。


「うっ…」


思わず顔をしかめ、慌てて浄化筒のバルブを押さえた。


不浄のエネルギーを防ぐための防毒マスクをしているのに、鼻と目が痛む。

俺は作業を中断して後ろへ下がった。


「やめろ。」


脳内に直接響くような声。


ピタッ。


二人は作業の手を止めて俺を振り返った。

なぜ止めたのかと不思議そうに俺を見つめる彼らに言った。


「これは俺たちでどうにかできる相手じゃない。人を呼ぶか、上に報告を…」

「ダメだ!!」


俺の言葉が終わる前に、ハンスが叫んだ。


「人を呼べば皆来るだろ?そしたら取り分が減る!俺たちだけで片付けよう。」

「3人じゃ危険すぎる。」

「ユジン、頼むよ!これが最後のチャンスなんだ。これさえ乗り越えれば、もうこんな生活しなくて済むんだぞ…!」


防毒マスク越しに、目をギラギラさせるハンス。

その姿に、背筋に冷たい汗が流れた。


「ジョッシュ、お前もそう思うか?」

「え?ええ!他の奴らにやらせるのはもったいないです。どうせ金手に入れても、博打や酒に使うだけですし、俺たちでやった方がマシですよ。」


ジョッシュまで同意しているこの状況で、ここで引き下がるのは危険だと、俺の本能が告げていた。


「じゃあ、お前の言う通りにしよう。ただし、危ないと思ったらすぐに引き上げるってことで。」

「信じてたぞ!俺だって命は惜しいからな。心配するな。ジョッシュ、早く金になるもの拾え!」

「へへっ、了解です、兄貴!」


再び作業を始める二人。

俺も少し離れた場所で作業に加わった。


グサッ。

ジューッ。


どれくらい作業しただろうか。

腫瘍のように貼り付いていたスライムを大方処理し終えたとき、胸元の浄化筒交換シートが黒く染まっているのが見えた。


俺は慌てて背中のバッグから予備の浄化筒を取り出し、交換した。


カチッ。

シュルルル…。


「ふぅっ…はぁ…」


浄化筒を交換していた間、我慢していた息を吐き出し、荒い呼吸を整えた。

空気が少しマシになった気がする。


少し休もうと思ったそのとき、

露出した胸骨の間から、キラリと光る物体が見えた。


『なんだ、これ?』


後で確認してもいいはずなのに、運命に引き寄せられるような感覚。

気が付いた時には、それを手に取っていた——

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ