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0:白い部屋
白い部屋。
窓もない白い部屋。
家具も、壁も床も天井も、そこに横たわる少年の死体も、死体の着ている洋服も、真っ白な部屋。
「大好きよ、本当に好きなの」
その死体に一人の少女が頬擦りをして、愛しそうに抱きしめる。
気温が異常に低いこの部屋で息まで白くしながら彼女は語りかけた。
彼女もまた、白い。肌も、膝下丈のワンピースも、頭のリボンも、レースのあしらわれたチョーカーも、真っ白。真っ白だ。
「でも、一緒にいることができるのがあと少しだけなの。とっても残念だけど、分かってね?」
彼女はそういうと、そっと死体をベッドへ下ろす。世界で一番美しいものを見るような、うっとりとした目で見つめながら、ゆっくりとおろしベッドへ深く沈むのを見届けると溜息を吐いた。
そしてそのまま、たった一つの扉へと向かいいくつもの錠をはずすと、その扉は音も無く開いた。
すべるように部屋をでた彼女の前には、張り付いたような笑顔で佇む、唯一信頼してきた彼がいた。




