【エッセイ】劣化バッテリー
現場作業員として工具を使うにあたり、バッテリーを使用することが常々あります。
これはそんな時にふと思い浮かんだ言葉の羅列。
朗読などにご利用ください。
人とはさながらバッテリーだ。
体力・気力などを蓄えている。人それぞれの容量があって、人それぞれの充電方法があって、満タンにしたら使って、使い切ったら再度充電。
けれども私は劣化してる。経年劣化ゆえに常に漏電していて。いつまで経っても満充電にならず、不良品もいいところだ。
バッテリーなら電気だが、私が貯めるのは一体なんだろう。
答えはきっと分かっている。自分の中に溜めている。
私は劣化したバッテリー。どうかこの私を満たして。
誰でもいいから言の葉を。些細で在り来りな言の葉を。
私は劣化したバッテリー。誰かこの私を拾ってください。
得になることはないけれど。むしろ損かもしれないけど。
人がバッテリーと言うならば人は何に使われるだろう。
例えばそれはお金のために。例えばそれは社会のために。
色んな人間性があるから、適材適所に使っていこう。
けれども私は役立たず。なにせ何も貯めてないから。
学校・会社・家族、誰にも使われないそんな私
私は劣化したバッテリー。だから自らを偽装する。
「国産」、「保証付き」、「大容量」。そんな言葉でみんなからの視線を集める。
私は劣化したバッテリー。だから人は離れていく。
「思ったものとは違ったから」、「詐欺もいいところ」。連なっていく不評レビュー。
足らないものは分かりきってる。「電力」に変わる充たしたいものを。
父性愛、母性愛、兄弟愛、友愛、性愛、親愛、情愛、恩愛、自愛。
どんな形でもいいからこの私に愛をください。
但しこの商品は劣化により満充電になることはありません。
私は劣化したバッテリー。あなたは今でも正常に溜められますか?
私のようにはならないでね。生き地獄と同じようなものだから。
私は劣化したバッテリー。というより壊れて使えないバッテリー。
誰にも必要とされない。だから一人で佇んでる。