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1999年9月14日(火):ターンエー
雨上がりの曇天。この日、西岡に放課後は無かった。西岡は高校に行かず、療養名目で通わされていた悪徳医院で、不登校児を迎えに行く手伝いをしていた。西岡は中学の頃、親の教育方針と反りが合わず、進路を見直された事があった。しかし西岡は、変更後の進路である、中卒で塗装工見習いになるという選択を拒み、進路の変更を前提に習得を許されていた武道を続けながらも、中高一貫校の学籍と、自身の選ぶ自由な生活を守り、仮初の高校生活を過ごしている。
翌日の敬老の日の事など何も考えなくて良い立場の西岡は、この日も個室ビデオ店に行った。西岡が借りたビデオは、白いラベルに「アニメ」という文字と2桁の数字が手書きされたVHSビデオテープで、その内容はテレビで放送中のアニメ番組の録画だった。
アニメのオープニング・テーマに、西岡の在籍する高校で西岡と同じクラスの女の子と似た顔立ちのキャラクターが映った。その女生徒は後年、大阪で一流企業の営業部に勤務し、それが原因となり、その当時の彼女の住居である大阪市内の団地で西岡と偶然再会するのだが、その件は別の機会に話そう。