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第八話 二つの手記と奪われたお宝

 遅い動きに目が慣れたレガト達は、巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)の初動の速さに対応が遅れ、まともに砂嵐の渦に呑まれかけた。

 ホープの風の魔法がギリギリ間に合い、仲間達を風の結界で守り、ハープも大地の魔法で砂塵の砂を地へと沈めた。


「十五か六Mはあるね。でかいのに速いよ」


 防御も硬さと衝撃を吸収するような身体になっていた。


「ノーラ達は入り口近くまでいったん退いて、他の魔物を警戒。リモニカ、フォローを頼む」


 ノーラ達の装備は鎧はみんな一緒だが、武器はまだ普通のより品質がいい程度のものだった。魔力を込めれば魔法武器として戦えるけれど、この巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)は、手足を斬ったところでダメージにならないのが辛い。


「ファウダーはハープと。スーリヤはホープと上へ」


 巨大な魔物は魔法生物なためか、疲労感もなく、速く動き続ける。離れた相手には魔法の砂塵の嵐や巨石礫の矢を降らせてくる。悔しそうだけどノーラ達は素直に下がって正解だ。ダンジョンと連動しているせいか、魔力が全く尽きる気配もなかった。


「魔力壁に穴をあけるから狙うといい」


 ハープが大地の盾の重力で巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)の足の動きを止めた隙に、ファウダーが魔物の胸の中心に大きな魔力を乱す穴を作り出した。ホープが頭上で巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)の視線を誘導し、スーリヤが魔力の薄い部分に炎の力をぶち込んだ。


「レガト、追撃を!」


 切り開いた傷に僕が魔力の塊をぶつけ核を弾く。これだけ大きいと壊すのもったいないからね。


「ねぇ、核を奪ったのに止まらないよ」


 胸の部分に風穴が空いているのに、砂人形(ゴーレム)は止まらない。


「頭だ。捻くれてるね」


 動きの緩急といい、急所の変化といい、慣れさせておいて肝心の時に変更するいやらしい意図に、並みの冒険者なら思考を整理する前に潰されたかもしれない。


 レガト達は初手で意表を突かれた時点で疑っていた。そのためすぐに攻撃を切り替えて、頭の核も吹き飛ばした。

 巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)は今度こそ崩れて砂になった。大量の砂。


「リモニカ、ハープ、ホープ、結界を。みんな伏せろ」


 砂粒は砂利ではなく、細やかなサラサラの砂。この量の粉塵が暴発して耐えられるのかどうか分からないが、意図は察して厚くしているはずだ。


 本当に二重にも三重にも罠を張る嫌な相手だ。倒される事を前提に罠を張るやつは性格が歪んでいると、レガトは思うのだ。おかげでダミーの核は回収出来たけれど、頭の分は吹き飛んでしまった。


「みんなの安否が先じゃないか」


 ハープがファウダーを助け起こしながらブゥブゥ文句を言う。


「信頼性の問題だよ。ハープ達ならあれでわかるからね」


 とっさに強化した結界を三人が張り、スーリヤもノーラ達も無事だった。 結界に包まれながら、リモニカ達が集まって来た。

 

「なんだったんだ、これは」


 視界が晴れるのを待って、ノーラが跡形もなくなり、僅かに残る砂の山を見て言う。


「侵入者を利用した、巨大兵器の実験に見えるね。魔力を使うから巨大なものを動かすのにもダンジョンが都合良かったようだね」


 偽神とは別なようだけれど、巨大兵器って、ファウダーも石像使っていたから無関係ではなさそうだった。


「奥に露骨な隠し扉と、入り口の横にも何か見えない扉があるね」


 露骨な方にはわざとらしい宝物庫があった。いや、ここのダンジョンを進んで来れるような者たちが、贋作(フェイク)の宝を手に入れて騙されないとレガトやハープですらそう思った。


「捻くれてるからこの先は逆にこの部屋にあると思う。ただ、先に入り口横の扉を見ておきたい」


 ダンジョンを利用したものは、この先に用がないか、進めなかったかだろう。実験と考えたのなら、この大きな部屋があれば充分だったと思われた。


「ここも通路があるね」


 入って来た時と同じ作りだ。砂人形(ゴーレム)を見てわかったけれど、大きな部屋は元々のダンジョンで、通路は無理矢理広げて、魔力の含まれた砂で固めていたようだ。


 回収した巨大猪人形(ビッグオークゴーレム)の砂は魔力が豊富だった。ダンジョンが中途半端に改造された事で砂人形(ゴーレム)を生むので、ここを利用していた者には都合良かったのだろう。


 暗がりに明かりを再点灯して進むと、研究室があった。ダンジョン内なので、どれだけ放置されていたのかわからない。時間の感覚も狂っている気がしたが、気がついているのがリモニカとファウダーだけなので黙っておいた。


 机には古びた紙の束があった。もう一つは新しい紙の束がある。古びた束は、この研究室を作り実験したものの手記のようだ。目立つ所にわざわざ置いてあるという事は、訪れた者たち読ませたいのだろう。


 レガトは部屋に残る目ぼしい資料や品物探しをハープとスーリヤに任せて手記を読んだ。



「この手記を手に取る者がいたのなら、すでに私はこの地を去ったか亡くなっている事だろう。ここに残された研究の結果は、すでに体験済であるだろうから私が語るまでもない。実験は成功し、私は偉大な力を手に入れるに至った。もしかすると君達は偉大な存在へと至り、王となった私に命じられこの地の痕跡を回収しに来たのかもしれないが、それならばここの危険性も知らされているな。大部屋の奥には近づくな、と。得たものだけで、満足する事を知るものである事を祈るのみだ······ ――――――――――ダイダラス」



 古びた手記には、それだけしか書いてなかった。名前以外は詳細もなく、結局何をしていたのかわからない。警告なのか、大部屋の先については触れていた。スーリヤや、ノーラ達が気にするのでもう一つの新しい手記を見てみる。



「ヌッフッフ〜、残念でしたわね。お宝はわたし達がいただきました。文句があるなら、横暴な魔女さんに言って頂戴。あっ、ハゲ親父はもう成敗したから安心していいわよ。一緒に残しておいたメモ書きにある、あいつが何をしたのか知りたければエトラかロムゥリにいる女王様に聞くといいわ。たいてい留守だけどね。あと、奥へと行かない方がいいのは本当よ」



 レガトは思わず手記を破り捨てそうになった。非常に腹ただしい事に、先にここを見つけ、お宝を回収して、ダンジョンをいやらしく改造して帰った者たちがいた。どおりで冒険者の習性を知る動きをし、最後の粉塵も爆発に加えて、揮発性の辛味やら臭気やまで混じっていた。


 宝を奪われたうえに、殺意以上におちょくる感じというのは腹ただしいものだ。


「レガト、魔女さんて······」


 リモニカが察して、レガトを見る。彼としては自分の母親が何らかの企みに関わっていると確定して、頭が痛い。早いところ、この娘と話しをする必要があると改めて思うのだった。


 行くなと口を揃えたのは、行けという振りだとレガトは感じた。レーナがせっかく舞台を用意して、手を付けずに残してくれたので、レガトが行かない理由はなかった。


「普通は行かないと思うよ」


 リモニカが、何か言った気がするがレガトは気のせいだと思うことにした。奥へと進むとなると、ノーラ達の装備が不安なので、メニーニのから預かっていた武装をノーラ達に合わせて渡す。


「魔法の素養が見受けられたノーラとコノークとヤメネには魔法の力を強化する武器に換えてもらう。タンキとエメロは逆に魔法の力のあるものを使うといい」


 ハープの持つ盾も、大地の魔法が込められたものだ。そこまでの魔力はなくても、補助的に使えるかどうかで戦闘には大きく差が出る。


「ほぅ、これはいいな」


 ノーラは水や氷に適性があったので、スーリヤと対を成す氷剣にした。コノークとヤメネは槍だ。それぞれ風と炎なので攻撃に厚みが出る。タンキとエメロには弓と盾をもたせた。リモニカの支援に合わせるのと、ノーラとファウダーのカバーだ。


「敵がわからないからね。この先は守りを固めて、無理は禁物だ」


 偽の宝物庫まで来ると、レガト達は通路を探し出して進んでいった。ダンジョンの元の姿はただの岩山の洞窟、そして暗く不気味な声が響き渡る。足元は水で濡れていて緑の苔が生えていた。注意しないと、足を滑らせ転ぶ。


 先頭を歩くハープは接地する足を大地の力で纏いながら器用に進む。ホープは逆に風の力で浮く感じだ。他のメンバーにはファウダーが支援魔法を掛けて、大地の魔法と風の魔法の好きな方を選ばせた。

 

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