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第六話 ロズク村

 冒険者を引退したガウツおじいちゃんがサーラズにやって来たのは、女神様にもらった素材を手に入れるために適していたのがグローデン山脈の麓だったからだそうだ。フィルナス世界を創ったとされる自由神は男神なはずなので、運命神なのだろうか。


 母さんは何か知っているようだけど「話すと色々と、ね?」 そう言って誤魔化された。大体おじいちゃんは女神様をどうこう話した事がなかったはずだよ。そんな話しを今まで聞いてないし。


 まあ、母さんは何か考えがあるのだろうから任せる。それより僕らはロズク村まで徒歩で向かっていた。


「ずいぶん山道が続くんだね」


「景色がずっと変わらないせいか疲れが早い気がするよ」


 ハープとホープが、山道の薄い空気で息を乱しながらボヤいた。実際ラグーンよりも田舎道で、舗装はもちろん手入れすらされていない。昔と違って人がまったくと言っていいほど使われていないのだろう。


「ヒソヒソ話しをしていたの、この為なのね」


 ノーラも息が乱れ、疲労が感じられる。サロンの冒険者ギルドからロズク村へ行くのなら生存確認をして来て欲しいと言われた。もちろん報酬は出る。

 ベルク商会がいた頃都違い、ロズク村へ行く用のあるものはなく、税金も殆ど取れない貧しい村のために、役所も放置していたようだ。


 生存確認というくらいなので役人に壊滅している可能性を尋ねると、あり得る、とだけ小さく答えてくれた。


 それにしてもコノーク達は意外とタフだ。たまたま訓練が厳しく、山道に慣れ鍛えられていたようだった。


「最近の訓練、鉱山まで歩いて大荷物を運んでばかりだったから」


 収納のある【星竜の翼】 と違い、山のような食糧を運び、倍以上重い鉱石を積んで帰って来ていたせいか逞しいんだよね。


「うちも取り入れようか。足腰が強いと、踏ん張りが違うからね」


「うぅ、今更無理だって」


「風を使うホープはともかく、ハープは必須にした方がいいわ」


 双子はどちらも盾使いだ。ただハープは大盾を使い、大地の魔法を操るのに対して、ホープは小盾に風の魔法で宙を舞う。踏ん張りが必要なのはハープの戦い方になる。スーリヤが、次からは鍛錬を取り入れる事に賛成した。泣きを入れてるけれど、ハープ達も充分体力あるんだよね。


 僕らがロズク村へ向かうのにはダンジョンの調査を名目にするために必要なのと、おじいちゃんの残した山小屋の跡地を調べたかったからだ。


 今になって考えてみると、色々と腑に落ちない事がある。ガウツおじいちゃんが知らなかったのか隠していたのか、母さんも気にしていた。自分でいずれ調べたかったかもしれないけれど、ここは僕に任せてもらいたい。



 サーラズ王国の大地の力は落ちているものの、ロズク村の辺りはグローデン山脈の魔力のおかげで緑が濃かった。使われなくなった村への道は、雑草や樹木から伸びた枝に覆われている。


 レガト達は、トロール駐屯地を開拓していった時のような気分を思い出す。 あの頃に比べると身体は大きくなったものだ。装備も良くなり、魔法まで扱える。繁みの中を進むのもひと苦労だったものだ。


「昔より楽に進めるけれど、手間は手間だね」


 ハープは先頭を歩き、大地の盾の力で押し分けるように進む。スーリヤが残った枝を払い後に続く。エメロとヤメネがファウダーを挟むように歩き、コノークとタンキがノーラを挟むように並んで進む。殿はレガト、リモニカそれにホープだ。リモニカはいつでも矢を放てるように弓を手にしていた。


 整地の必要はないから、歩く道を確保するだけにして片付けは放置だ。途中休憩を挟み、村へ入る前に野営を行う。


「帝国に比べると、町や村が全くないんだね」


 魔物が多くいるわけでもない。この辺りはまだ開拓すればグローデン山脈の恩恵を得られる。切り開いて農村の一つ二つ作れば、ロズク村より収穫が期待出来そうな土地だ。


「サーラズは、今ある土地をずっと守り続けて変えない。そのわりに侵略は企むんだよね」


 自国領を資源資産と見なして保有し、他国領から奪うのはあり得る話しだ。しかしこの辺りは集落があれば何かと利便性が高いはずだ。北西のサラスナに向かう道まで草木に塞がれていて、交易も絶えている。


 ベルク商会が使っていた頃は、馬車で三日もあれば辿り着けた道が荒れ果て使いものにならなくなっていた。


「領主同士のいざこざもあるのかもしれないな。昔から、サラスナはサーラズの中でも異質な街だったようだから」


 バアルト達を見ていると、何らかの民の生き残りが築いたのかもしれないと思う。滅ぼすまでに至らないのは巨人の国やノルデン王国などとの緩衝地帯だからだろう。ナルジク川の恵みを考えると、余計にそう思う。 


 水量が豊富で川幅が広くて大きな船も外海から入りやすいから、交易都市として繁栄している。国を担うなら、サラスナを始め、ナルジク川流域は自由都市に近い形で放置するのはもったいないのだ。


 見張りを順番に立てて、夜を過ごした。放置されていたわりに、魔物の気配は少ない。グローデン山脈に近づくと沢山いるのに、サーラズ王国内に入ると極端に減るのは、やはり魔力を奪う何かがあって、本能的に嫌うのかもしれない。


「魔物の地を突っついて刺激すれば別だけど、怖いのはどっちかと言うと人の方だね」


 サーラズは極端な人族主義の国でもある。成立が信徒達で召喚者が存続を担うから、フィルナス世界においては異端の差別主義に染まるのだろう。


 なにせこの世界は様々な種族が集まり、暮らしている。ゴブリンだって、魔物として戦う事もあるけれど、レガトのように召喚して、家人としたり使役したりする事もある。

 エルフ達のように大陸一つを制覇していても、実際は商人、冒険者、遊芸の徒など入り込んでいる。


 排他的になって強制排除をした時代もあったようだ。しかし心理的外敵がいなくなると、結局身内の醜い争いが始まる。勢力としては衰退し、異民族の襲撃に足並みを乱し、一致団結して挑む事が出来ずに敗れたという。


「ロズク村の老人達は、排除された一族なのかもしれないな」


 流刑地に近い。まさか新たに住人が住み着くなんて、追いやった側も想定していなかったのだろう。ベルク商会は帝国で力を持つ集団。サーラズにとって、目障りだったはずだ。ダンジョン探索に託つけて、初めから潰すのが狙いだとも考えられた。


 帝国の内乱への介入は豊かなロズベクト地方の土地を奪い、生贄としたかったんだと推測出来る。やはり嫌な国だなと、レガトは改めてサーラズ王国から出て良かったと思った。



 ロズク村が見えて来ると、流石に枝は切り払われていた。陰鬱な空気は変わらない。古い建物はレガトの父達がいた頃にいくつか直させていたけれど、それから二十年くらい軽く経つはず。

 小高い丘のような所から眺めると寂れ具合は激しい。


 ここは言わば排除された異界人の墓場だ。召喚者の失敗例の集まりと言ってもいい。異界の召喚者は強さに段階があり、強者や勇者や英雄と能力によって扱いも変わる。でも、彼らは違う。失敗した理由はわからないけれども、期待された能力もなく、役に立たないと排除された者達だ。


「前に会った異界の勇者達のように、能力があればわがままだろうと、傲慢だろうと、受け入れて利用されたんだろうね」


 レガトはロズク村の人間の最悪な本性を知っている。傲慢、怠惰、臆病。どういう状態で呼ばれたのか、それによっては同情出来なくはないが、レーナの話しによれば、冒険者パーティーがいた頃は、自前の畑仕事すら手伝わせていたそうだ。


「どうするレガト。寄るの?」


 陰鬱な空気に嫌な気持ちになったのかスーリヤが手に持つ炎と浄化の剣で焼き払おうとしている。


 村の様子は見て取れた。荒れ果て朽ちかけた粗末な小屋でも村人が暮らしている。税金の免除は一応サーラズにもまともな思考の管理官がいたのかもしれないと、優遇措置に今更レガトは納得した。


「後にしよう。始末した所で力をサーラズの何者かに持っていかれるだけだろうから」


 レガトはファウダーを見る。コクリと彼女が頷くので間違いないようだ。


「迂回して山へ向かう」


 遠回りになるけれど、村へ入りたくない。何がレガト自身の怒りを誘うかわからないので自重した。健康かどうかはともかく昔のまま生活は続けているのがわかったので報告は入れられる。

 

 森林を抜けて山を登る。痕跡をおまり残さないように、ここからは無闇やたらに枝は払わずに移動する。

 ロズク村から外は魔物も出るため、ここまでの道中よりも、動きは慎重になった。


 時間をかけたおかげで、ロズク村の生活圏外から山小屋の跡地までやってこれた。砦のような山小屋の跡地は焼失し、黒焦げの灰になったはずだ。

 レガト達の目の前には、その灰のような色の大きな岩が、山小屋の跡地にドンッと生えていた。



「ここにレガトの住んでいた山小屋があったんでしょ」


 僕はホープとタンキを連れて、小盾を構えながら岩の周りを確認して回る。他の仲間は水場が生きてるので、休憩の場所を確保する。元の山小屋跡地は塀の外周だけで百M以上はあるはずだ。


「ここなのは確かだよ。こんな大きな岩はなかったんだけどね」


 大岩に魔力の反応はない。誰がこんな事をやったのか、母さん以外に心当たりがないんだけど、これが目立つおかげで本命の場所は余計に放っておかれそうだ。


 僕らは大岩の調査を終えて皆と合流して休息を取る。確定しているダンジョン探索に行くのならグローデン山脈へ向かえばあると思うんだ。

 でも、それは後回しにする。いま調べたいのは、おじいちゃんか、母さん以外におじいちゃんに関わる人物が隠したと思われる場所だからね。

 

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