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第十七話 【星竜の翼】の行く末とカルミアの日誌

 協議が終わると、あたりはすっかり暗くなっていた。レガトはシャリアーナ達とロドスからガウートまで魔本を使って移動した。


 「魔本の扉はロドスとインベキアにも置くことにするよ。ただ、使えるのは【星竜の翼】のメンバーだけだけどね」


 レーナクラスの魔力干渉でも、勝手に魔本は使えないようにレガトは設定した。あくまで魔力量の問題だ。レーナに関しては、設定が外されても彼女自身の持ち前の魔力操作能力で、あっさり抜け道を探してしまうので簡単に弾けないだろう。


「あくまで私達の移動用に、緊急時の戦力補給用なんでしょう」


 レガトが警戒しているのは、東の龍帝国、北の巨人の里、それに解放されたミドニキア大陸の戦馬鹿達だろう。


 遊びに行って帰って来たら全て灰になっていたなんて事を、レガトは嫌がる。シャリアーナに言わせると国の興亡なんて、そんなものだという認識はある。他ならぬレガト自身がそうした現存の国の興亡に関わっているわけだから。


「それは否定出来ないけどさ」


 次に行く地こそ冒険者に徹して、探索を楽しもうとレガトだって思っている。やらかすのはメンバー達の方で彼自身はいつだって大人しくしているつもりだ。


 歩く厄介事引受人のカルミアがいる限り、何事もなく収まるなんて奇跡より難しいだろうとレガトもシャリアーナも認識している。


 レガトが久しぶりにガウートへ戻ると、さっそくヒルテとミラとニーシャに捕まった。急遽ラクトスがサーラズへ向かう事になって、仕事量が上がったためだ。


 トドメは新帝国ふたつの女帝がガウートの【星竜の翼】に所属している事実だろう。元インベンクド帝国ではシャリアーナの武勇伝は知らぬものはいない。新都が再びインベキアに戻り彼女が皇帝の座に座る事になっても、冒険者である事は変わらない。


 そのシャリアーナがガウートの冒険者ギルドに席を置いていても経緯を考えれば自然の事だ。


 しかしロムゥリの新帝となったアストリアは別な話しになる。彼女の英雄譚は冒険者ギルドなどを通じて近隣の大陸にも知れ渡った。そして何故かガウートの冒険者ギルドに籍を置き、シャリアーナと肩を並べている。


 ガウートには剣聖アリルも在籍していて、いまやガウートの冒険者ギルド【星竜の翼】は五大陸一の冒険者ギルドと呼ばれるようになっていたのだ。交通機関の整備で他国からも人が多く集まるようになって、ミラ達だけでは処理も追いつかなくなっていた。


「確かにまずい状況だね。仕方ない、戻すか」


 レガトは有能だけど触れたくなくて放置していた人材を呼び出した。何故か裸で滑って興奮していた気味の悪いソレは、呼ばれた場所がガウートと知りすぐに状況を把握した。


 変態なのだが、都市国家群をまとめあげる商業ギルドマスターをしていただけに優秀な女商人のリエラが開口一番叫んだのはレーナへの呪詛だ。ねっとりしていたのは船喰いの触手(テンタクルスクラブ)の粘液らしい。


 二へらぁと口角をあげてレガトを見るリエラ。普通に気持ちの悪い痴女にしか見えないのだが、曲者揃いの都市国家群の商人達をまとめ上げた実力は確かだ。


「ギルドスタッフの補充は、リエラに一任する。警備に関してはラグーン共々ミドニキア大陸から母さんが信用出来そうな強者を送るそうだ」


 ミドニキア大陸にいる戦闘狂は、ならずものばかりではない。海運、河川輸送に関してはエルフやケルピー達やネレイド、セレント族が加わったため、護衛力はかなり強化された。


 リビューア帝国のモロク帝から親書が届き、ムーリア、ロムゥリの新帝国に合わせてモロクも皇帝の座を降り、娘のモナクに引き継ぐことになった。そのために一度、娘のモナクを【星竜の翼】へ加えてもらいたいとの事だった。


「新帝国連合の一員として加えて欲しいようね。アマテルに関しては触れてないわ」


 新帝国連合の張本人のシャリアーナは、自分の負担が減るので賛成した。アマテルを女帝の座に据えられるよりマシである判断と言えた。のほほんとしておひとよしのアマテルは、優しい主君になるだろう。


 ただ君臨するより象徴的に置いておく方が無難だった。ヘケト達か、ロムゥリに置いて行くつもりだったのに、次の冒険にも一緒に行くつもりなのでシャリアーナがため息をついていた。


「農耕の知識と、薬師としての才能もあるから大丈夫だろう」


 ヘケト達と違い戦いたがらないだけで、戦闘能力はあるのでカルミアの護衛と思えば良かった。



 ガウートでハープ達の帰還を待ちながら、遠征の準備と人数を絞ってゆく。リエラのおかげでギルドは持ち直した。リエラにギルマスの座を譲りミラが冒険について行こうとしたのだか、ヒルテが先に抜け駆けしていて揉めていたくらいだ。


 優秀なギルド職員か残念メイドのどちらかは付いてくる。出来ればどちらもガウートに残ってほしいとレガトは思った。


 レーナからの援軍の他に、ロムゥリからは吸魔族、エドラからは蠍人族、ムルクルから馬人族の一団がやって来た。またアストリアやカルミア達と一緒にドワーフ族もやって来たので、ガウートも多種多様な者たちの集まる都市へと変わった。




 ハープやスーリヤ達が戻り、休息を経た後、いよいよ新たな冒険の旅に出発する。メンバーは皆、ネレイド隊やセレント族の扱う船に乗り込む新人冒険者を装う。カルミアが開発した若返りの薬で見た目も五つ若くなっていた。


「冒険者は舐められたらおしまいだって言うのに、自分から舐められに行くのだから魔王様の頭ってどうかしてるわよね」


 合流したカルミアが文句を言いながらも、薬の効果がしっかり出て満足気だった。相変わらず真っ先にアストリアで試し死にかけたようだが。



 アストリアに首を絞められ気を失うカルミア。レガトは眠る彼女の部屋の書棚からひとつの日誌を見つける。



 ────本を開くと、カルミアの書いた文字でこう書かれていた。




 『魔王さまの殺し方について』


 


 ────日誌を読み終えて、眠るカルミアの変わらぬ様子を見てレガトはただ優しくにっこりと微笑みを浮かべていた────。


 

 


 

 最後までお読みいただきありがとうございました。


 逃げた神々と迎撃魔王シリーズ三作目これで完結となります。


 シリーズ外伝としてリドルカを主役とした物語を別掲載で予定しております。


※ 2024年6月より検索除外にしました。錬生術師の物語は加筆再掲載の形で、錬生術師、星を造るへ移行中です。

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