第十四話 死を宿すものを釣る
不毛の地に人が近づかない理由は明白だった。新たに築いた拠点に蠢くなにかが大挙して訪れた。
「なんか凄い大群が来たよ!」
─────竜の骸骨にまとわりつく毒状の粘体毒髑髏竜が腐界竜を中心に複数の塊となってやって来た。
レーナが引いた魔法の網に釣られ、死の影を宿す魔物達が次々とやって来たのだ。
「まだ人員も揃ってないのに。どっちがこんな頭のおかしな真似を考えたのよ」
シャリアーナが激怒しながら迎撃に向かう。
「こんな広い大陸の地下を探し続けてられないだろう」
「探すより呼んだ方が早いもの」
似たもの同士、最悪の親子だと、シャリアーナ以外の仲間も思っただろう。
「わかりやすくて良い。バステトいくぞ」
「ニャッハー、バルス。ごちそうたらふく食べるねィ」
ティアマトとバステトとバルスが北の門へ陣取る。
「ならワタシもそちらへ援護に回るワ」
アナートが物怖じしない二人と一体に加わる。
「エルミィとヤムゥリ、アプス、ミアラ、ボグル。君たちはこれを持って三人のフォローへ回ってくれ」
レガトは浮揚式重装陸戦車からさらに改良を加えた小型星戦艦と複数の浮揚式鉢植君を取り出した。
「艦長はヤムゥリ、君に任せる。この浮揚式生命装置には、ヘケトとラナの多産生命力を使い、ルーネとブリオネに力による生命樹が育っている」
アリルとファウダーによる浄化が加わり、生命樹の実の一粒一粒が死を宿すもの達からは生命力に溢れた生き物のように見えることだろう。
レーナの蘇生の環は魂の復元や肉体の補修には役に立つが、彼らの好みの魔力ではないようだった。
「この実は餌であると同時に浄化の罠になる。どんどん喰らわせてやってくれ」
テラリウム内にも浄化装置が設置されて、死の眷属が喰らえばダメージになる。レガトの説明にヤムゥリがニコッと笑う。新生バスティラ王国の女王樣の狙撃能力の高さは、リモニカ、エルミィに次ぐ。カルミアのせいか、若干歪んだ精神が頼もしい少女に北側の指揮を任せた。
「小型星戦艦の操艦はアプスに任せる。ゴブリン戦隊とネレイド隊と吸血魔戦隊を呼んだ。闇に呑まれかけたら皆の収容を頼む」
「闇……?」
アプスにはまだレガトの言っている意味が伝わらなかった。
「ダンジョン────というより異界だね。あちらの領域である冥界に引きずり込まれる可能性が高い。魔物を一層したあたりで視界が溶けるようなら注意するんだ」
レガトは不安そうなアプスを見て、もう一つ保険をかけておく。
「ブロドール、君はヤムゥリ達の保護を頼むよ」
レーナが留守をしているユグドールから成分を絞り出し、フレミールの成分と混ぜてカルミアに造らせた聖霊人形竜龍型がブロドールだ。竜型と龍型どちらにも成れる。
「承知した。ではティアマト殿、我を騎竜に共に征かん」
フレミール似の美しい金髪の美女ブロドールは、竜型になるとティアマトへ乗るように促した。アナートは魔獣化出来るので騎乗の必要はなかった。
「性格までは把握してなかったけれど、大丈夫か……な?」
実力は問題ないので、レガトは後の事はヤムゥリに任せようと思った。
「南はこのまま私達が向かうわよ」
シャリアーナ、リグ、イルミアの三人が南門を引き受けてくれた。
「ボクとメニー、ノーラでフォローに行くよ」
ホープがヤムゥリ達と同じセットを受け取り、支援を請け負う。気の知れたメンバーだけに安定感はあるが、ヤムゥリ達同様、火力が欲しい。
「リモニカも加わってくれるか」
シャリアーナが熱くなり過ぎてもリモニカとホープなら冷静に対処してくれる。レガトの中ではいまだアリル信者は脳筋だと認識されていた。
「母さんとアリルさんはカルジアとミュリオ、ティティル、リヴァラハを連れて海側の警戒を」
大地と大海では生まれ持った摂理が異なるためか、地上の不死者は海中へ入りたがらない。はじめから海のものも同様だ。別理が働くのか、レガトも詳しくはわからなかったが、警戒網は築いておきたかった。
「我々はこのまま西の城壁を守れば良いのかね」
アストリアが飛翔用の武装に切り替えてやって来た。
「ああ。君とカルミアと、ヘレナ、ノヴェル、ルーネ、ブリオネ、フレミール、アマテルはここを任せる」
西の門はない。不毛の地にわざわざ入口を設けて突破されてはたまらないからだ。今回も魔物達は、強固な壁に阻まれて南北に分かれた。敵の主力を分断する上でも、火力のある彼女達はうってつけだった。
「そういうことなら任せたまえ」
アストリアが快く受け入れてくれた。カルミアがいればレガトの加えた戦力以外にも、聖霊人形による戦力補充が出来る。またノヴェルの魔本にはヒュエギアやノエムや魔獣達が待機していたので、孤立しても凌ぐことの出来る戦力があった。
レガトはと言うとファウダーとヘケト、ラナンキュラ、ネフティスと遊軍として動く。
レガトは疫影竜が大陸中から集まれば、死を司るものも動くと考えていた。カルミアとメニーニ、エルミィにルーネなどには負担がかかるが、根こそぎ借り尽くすまで頑張ってもらうしかなかった。




