第十二話 戦乱の大地
レガト達の人数を見て、倍以上の戦力を用意したにも関わらず、野盗の群れは大敗して逃げて行った。捕えて突き出す義理も意味もないので、カルミアとメニーニが使えそうな装備を回収した後、ノヴェルが穴を掘り、フレミールが灰にしていた。
「郊外を集団で動く者を見たら賊と思えってことだな」
三度目の襲撃を受けると、流石に対処も雑になる。
「眠らせず、弱らせる手かもしれないわね」
欠伸を噛み殺しながら、臨戦態勢を取り続けるシャリアーナが、うんざりしたように言った。
「ワレも処理は飽きたぞ。死の神とやらの思う壺ではないのか」
根はお人好しで優しいフレミールが流石に嫌になったようだ。
「一度隠れて、変装しよう。メニー、装備数はどうだい?」
「全員分あるよ。アリルさんが浄化してくれたから、軽量化と強化をし直すわ」
休む時間がなくなってメニーニには申し訳なかったが、快く引き受けてくれた。
「カルミア、魂の行方は掴めたかい」
装備を剥ぐ以外に、カルミアは招霊君を使って魂の行方を追う役割があった。
「駄目ね。大地に吸収されてるわ」
カルミアの周りには力の大半を奪われた、招霊君でいっぱいらしい。
「偽神と同じ」
ファウダーも力の流れから断定した。パゲディアン大陸のテンベール国が、広大なダンジョンの大陸と化して、魂の力を奪っていたようなことがこのミドニキア大陸でも起きていた。
「でもダンジョンではない。地下かも」
ファウダーは地下を疑っていた。なにか聖杯の時のような装置があるはずだった。
「魔力の流れを追うしかないか。ティアマト、匂いの違いを感じたならみんなに知らせてくれ」
「ん、わかった」
怪しい場所を潰して行くしかない。それにしても殺伐とした大陸だった。死臭の強さは、生者の争いから生まれる血臭ではなくて、亡者のものも強い。
「アリルさん、どう感じる?」
浄化の力を持つ剣聖アリルは、漂う瘴気に顔を顰めていた。
「嫌な気配はずっとあるわよ。ファウダーの読み通り、地下深くにあるとすると、全て潰すのに十数年はかかるわね」
アリルの見立て通りならば、このミドニキア大陸はとっくに死の世界に覆われ尽くされいる。鍵は結局ダンジョンになりそうだった。
「魂はともかく、大地に力がないのはダンジョンのせいなのかしら」
カルミアが大地の枯れ具合を気にした。
「これは、ダンジョンが力を吸ったんじゃないな。シンマのような召喚だろう」
「やっぱり。なら強いのもいるってことね」
掛けられた時間と、枯れ具合をみるとかなりの手練れがいそうだ。
「俺達海賊が都市を占領出来なかったのも、敵の援軍が強力だからだよ」
セレント族も海賊達と出撃し、何度か都市を制圧したことはあったとアプスは言う。ただ援軍に蹴散らされ逃げ帰るばかりで、最近は占領どころか、まともに戦えない状況だったようだ。
有利な海戦でも遅れを取り始めていたので、魔物を使った罠を思いついたらしい。
「争い続けている大地か。食糧や水はどうしているんだろうな」
不死者ではないのなら、補給が必要になる。むしろ、そこを抑えられれば、戦況は優位に進められるはずだった。
この戦禍の絶えない地でやる事は決まった。糧道を断つことと、魂の吸収源を壊すことだ。
レガト達は野営地を移す。不毛な戦いを続けていても敵を利するだけなので、ミカラで得た情報にない場所に拠点をかえて充分に休んだ。
動きを見るために偵察部隊として残ったリモにとミュリオとバステトによると、あれからさらに野盗が三回はやって来たらしい。
物資の不足がかなり深刻になっているあらわれなのかもしれないと、レガトは報告を受けたあと彼女らを労った。
今後の事も考えて、レガト達は内陸より先に、海岸の地域の隙間を狙うことにした。
海路の確保が出来るだけでも戦況は大きく変わる。あとは召喚された異界の勇者達の強さだけが不安の種だ。
セレント族の現状を見ると、制海権を確保するのも骨が折れそうだなとレガトは感じていた。




