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第十一話 理想を押し付けるより、必要性をなくす事が大事

 ミカラの港湾要塞都市は、いわば戦奴の町だった。このミドニキア大陸は、他の大陸に比べて人の価値が安い。海に比べて過酷な魔境がないせいか、それとも死を司る何者かのせいなのか、レガト達には死臭が漂うくらい陰鬱な町に思えた。 


「実際に漂ってるのは、魚の腐敗臭のようね。何かしら、新しい臭さだわ」


 面倒を起こしそうなカルミアが目を覚ました。アストリアとノヴェルが、騒がないようにベッタリとカルミアにくっつく。


「君は相変わらず見ている世界がおかしいのだな」


「そういう先輩こそ、レガト達に毒されて随分まともになられたようですね」


 相変わらず仲の良い二人は、他国の認識が自分達の常識と違っていようとも、気にする様子はなかった。


「憎たらしいくらい、うまいわねあの二人」


 シャリアーナは少し羨ましく思った。アストリアとカルミアはよくわかってああして仲間たちに安心を与えているからだ。他国の制度に口を出すものではないけれど、ヘレナやエルミィ達の真面目で優しい娘達は気にする。


「むしろ、うちが図太すぎるんだよ」


 レガトはリモニカやシャリアーナを見て、肝が座り過ぎとも言えるなと思った。三人娘のオルティナ達はもっと酷い目に合いかけていた。リモニカ達も、ラグーンにいなければどうなっていたかわからなかった。


「だからと言って放置するわけでもないのよね」


 いつの間にかレガトの見解を聞くために、アストリアとカルミアが近づいていた。


「セレント族のようにはいかないさ。たとえ死を司るものがいたとしても、慣習や風習なんて、そう簡単に拭えないからね」


 レガトは屋台の粗末な食べ物を見させた。根本的な原因が解決されない限り、改革は簡単ではないと思えた。


「そうね。招霊くんから聞く限り、この大陸は気候の割に見入りが悪いそうだもの」


 力を奪われたものがこの地にも多く漂っているようだ。カルミアはひっきりなしに訴える招霊君達に少しうんざりしていた。


 この地の招霊君は怨嗟の声が激しいようで、カルミアはよく耐えているとレガトも感心していた。レガトやファウダーなども声は聞こえるけれど、カルミアほど聞く耳を持たない。


「頭がおかしいんじゃなくて、頭をおかしくさせているんだね」


 膨大な数の恨み辛みを顔色一つ変えずに聞いているカルミアだったが、今回はさすがに数が違い過ぎて面倒そうだった。


「あれって母さんが偽神のかわりをさせた影響もあるんじゃない?」


「ないとは言い切れないわね。存在の格としては、すでにオリンより断然上だもの」


 彼女自身がそれを望んだ以上は、避けて通れないのだとか。


「気を失っている間は休めるようね。あの娘が時折締めるのはさりげない気づかいなのよ」


 レーナの推察は正しい。ただ仲良くベタベタしているわけでもないようでレガトはうまく出来ているなと感心した。


 ミカラの町はろくなものが買えそうにないのがわかった。偵察部隊が戻って来た後、レガト達は町から離れた森に野営地を築く。


 届けは出してある。森林を全焼させるような暴挙をしない限り、領内の滞在はある程度自由だそうだ。


 選んだ森は薪を拾ったり、冬の前に木の実を集めたりする程度の場所だ。街道外れにあるので殆ど町のものは用がない森だった。


「枯れた大地って感じだね。食える動植物が異様に少ない」


 駆除ではなく根こそぎ取り尽くしてしまうのだろう。


「ふむ、ロブルタなどに比べても農園の数もないようだ」


 ミカラの町はまだ海洋資源がある。だから食べ物があるだけマシで、内陸がどうなっているのか、先が思いやられそうだった。


 野営地の設営は簡単だ。レーナが戦艇を三隻出して囲いを作り、ノヴェルがレガトと一緒に土を固めた上にカルミア達の戦車を置いた。空いた一箇所は誘い口でもあるので、見張りを立てる。


「だいたいズルイのよ魔女さんは。レガトの魔力使い放題でやりたい放題なんだもの」


 三隻の空中戦艦を簡単に運用するだけで、ミカラを攻め滅ぼすことが出来そうだ。相手を喜ばせるだけなので、戦いは避けているだけで、レガトかレーナが切れた場合はその五倍は船があると言われカルミアが不貞腐れた。


「バカだねカルミアは。あんたももう一員だから使えばいいのに」


 同じ生産職のメニーニがそう言うと、カルミアは首を振った。


「借りるのは嫌なの」


 自分で出来なければ意味がないことをカルミアは理解している。魔女さんこと、レーナの指輪も今は魔力を鍛えるためのものだけを普段はつけていた。どうやって作るのか謎だけど、魔力制御を細やかに扱うためのものだ。


「ぬっふっふ〜、これが出来ればお返しも出来るからね」


 相手の魔力で散々やりたい放題なレーナにも仕返しをしようとしているらしい。


「それを堂々口にするか、しごかれるんじゃないかな」


 メニーニが言葉を発するより早く、カルミアのおでこが軽く弾けた。



 野営地で寛ぐレガト達を、山賊の集団が取り囲むのは夜が更けてからだった。町の噂を聞きつけたは良いが、戦力までは把握していなかったらしい。


 レガトが見張りがわりに置いた吸魔族の夜闇の探索者(ナイトシーカー)とゴブリンスターク戦隊の遠距離攻撃隊により、半数以上撃退した。


 他者から奪うという倫理観を、覆すのは容易ではないなと、レガトは思った。





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