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第十話 好ましくない環境

 港湾局へ向かうまでの間に、監視の兵は増えていた。隠れて潜んでいる者をいれると五百人を超える数がいた。


「合流出来たのはいいけど、面白くないわね」


 それだけの兵で抑えられると思われたのが悔しいのか、シャリアーナが守備隊を睨む。冒険者の一団の中に、皇女や女王が混じってやって来る想定などしていないのだから仕方ない。

 ミカラ側もいつもやって来る海賊達の船と違う事や、冒険者らしくない豪華な装いの少女達の姿を確認し、戸惑いを感じていた。


 ミカラの領主は土地の関係上かなり荒い。腕っぷしがなければ海賊達にいいように蹂躙されるわけだから、知識より力が重要だった。

 もし知識の高い領主やその部下がいたのならば、ムーリア大陸のインベンクド帝国の紋章はわかったはずだ。

 アストリアもロブルタの紋章を、新生ロムゥリ王国の紋章を作り直していた。こちらはわからないかもしれないが、ロブルタの紋章に似ていれば気づく範囲だろう。


「交流が殆ど途絶えている弊害だね。冒険者の情報だって、どこまで伝わっているのか怪しいものだよ」


 よその大陸というのもある。魔物や海賊のいる危険な海域を突っ切ってくれば、さほど遠くないムーリア大陸とミドニキア大陸だった。

 しかし比較的に安全な黒の大陸部をゆくと掛かる時間は跳ね上がる。


「喧嘩を買うのはとりあえず情報を得た後だ。アストリア、頼むよ」


「善処するとしよう」


「諦めてないか?」


「無理を言ってるのがわかっているのなら諦めたまえ」


 アストリア達の精神的な支柱はカルミアのため、いなくては困る。ただ、いると面倒事を起こすのがわかっているから厄介なのだ。

 いまもカルミアが目を覚まして同行していたら、臭い玉の一発二発はぶち込んでいたはずだ。


 レガト達は、潮風にさらされ古びた砂レンガ造りの港湾局までやって来た。随分年季が入っている。海賊達も定期的に収奪するために、建物を壊したり焼いたりはしないようだ。


 警戒する管理局員に、持って来ていたガウートの新ギルドの書類を提出する。これにはラグーン、ロドス、インベキア、ロブルタ、ロムゥリなど二大陸の主要都市のギルドのサインが入っている。


 さすがに信用のある都市のギルドの証明書だけあって管理局員も安心したようだ。入港の手続きを済ませると、局員達が守備隊へ知らせに行く。ただの大所帯の冒険者だとわかると、彼らも少しホッとした表情になっていた。


「伝統って、こういう時は助かるわね」


 血の気の多い皇女樣は、剣を抜かずに済んだと笑う。それでもまだ警戒は解かないのは完全に異文化の地であると認識したからだと思う。


「あまり好ましい国ではないのは確かだよ」


 レガトの側に戻って来たリモニカが街の通りを見て嫌そうに言う。首や手首や足首に魔法の錠のかかった(リング)が付けられていた者がいたからだ。


「アプス、この国は使役制や奴隷制があるのか」


 魔法の(リング)はつける場所、色、強制力によって扱いが違うように見てとれた。首は明らかに魔力拘束の強い犯罪者に見える。


「俺達賊徒や傷害罪に問われたものは重犯罪者として、あれをつけられます」


 魔法の強制力と、実際に重そうな黒い色の輪(リング)をつけているのがそれだろう。


「分解して素材にしたら、高そう」


 メニーニが鍛冶師として材質を見極めていた。武器にも使うタングステンとアダマンタイト、魔晶石を配合した重魔鉄になっていた。


 ミカラの町中はそうした隷属された人々が多いためか、辛気臭い。戦えるものはよいが、カルミアやヘケトなど戦闘能力の低いものは、孤立させないように気をつけようとレガトは仲間達に注意した。

 

「拠点はどうするの?」


 人数は多い。宿を借り切る手もある。ただレガト達には魔本に生活空間があるので、見せかけの為に大きな宿を取るのはもったいなかった。


「僕は寝泊まりはどこでも構わないのだが、英雄樣や帝国の皇女覚まして方はどうなのかね」


 冒険者として粗末な寝床も厭わないのはわかっている上で、アストリアは尋ねた。

 シャリアーナやベネーレ、ヤムゥリにネフティス達、アリルなどを粗末な宿に押し込むわけにはいくまい。


 そのへんもアストリアはしっかりしている娘ではあった。


「正直言うとそれほど予算がない。だから郊外に拠点を築く」


 魔法による防御施設を作り出す。変に町中に滞在してトラブルに巻き込まれたり、貴族連中に目をつけられるのをレガトは避けた。


「ボクが飛行偵察を行うよ」


 ホープが自分から請け負ってくれた。メンバーはノーラとエルミィにティアマトとアプスだ。

 ルーネがマンドラゴラ戦隊を呼び、偵察隊に同行させた。


「これに乗るのか」


 レガトと召喚師のカルジアが呼んだのはペガサスの上位種天使の乗馬(ペガサスアンジュ)だ。通常のペガサス達はインベキアやロドスに残して来たためだ。新参のアプスの半分くらいに見えるカルジアは、金級冒険者の威厳もなくオドオドしていた。


「偵察隊が調べている間、冒険者ギルドへ行ってみよう。アストリアの母の事か、ノヴェルの一族の話しが聞ければ儲けものだからね」


 資金確保の為に、ダンジョンの情報も欲しい所だ。ミカラは荒くれものが思ったよりも多い。掃き溜めのような匂いを漂わせる酒場には拠点確保後にしようという事になった。

 

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