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第八話 星船アルゴーと、セレント族の復興

 海底のダンジョンの島の中央には、封印されたままの扉があった。そこにしまわれていたのは巨大亀と同じくらい大きな船。


「星の海を旅する【星船アルゴー】だね。動力は星核カノープスか」


 このダンジョンそのものが、秘宝の隠し場所として築かれた可能性は高い。所々破損しているのを見ると、星の海で戦いかなにかあって、フィルナス世界へやって来たのだと思う。


「これは俺達の先祖の船なのか」


「そうだと思うよ。セレント族の名の元になった、巫女セイレンに導かれてやって来た。君達が魔力を扱うのに長けているのは、魔力の流れそのものに身を委ねて来たからだろうね」


 海賊は海族でもある。魔力の海を渡る一族がいることは、昔から知られていた。彼らは異界を渡る為の船と能力を持っていると言われていた。

 肝心の彼らの方が、故郷を追われて自分達の出自を忘れていたわけだ。


「リヴァラハは、彼らの守護龍リヴァイアサンの生まれ変わりだね」


 どうしてカルミアの錬生に紛れ込んだのかは、わからない。当人は記憶もなく、子供のままだ。聖霊人形(ニューマ・ノイド)に異様な魔力。扱いきれていないだけだったのが、星核を前に急に何か掴んだように見えた。


「あちしの身体、ふわふわする?!」


「封印を解いたからね。本来なら自分自身で分体を生んで、記憶ごと生まれ変わるはずだったんだよ」


 レガトはレーナとの話しで、相討ちとなった魔物かセイレンを弑してセレント族を追いやった者が介入したと結論づけた。


 予測なので記憶を持つ巫女を呼ばない限り、真相まではわからないのがもどかしい。


「真相はともかく、どうするのよこの船と亀」


 広いダンジョン内にも関わらず、巨大な亀と船のせいで狭く感じる。


「この船を、セレント族の本拠地にして、ここで巨大島亀(メガアスピドケロン)に守らせる」


 おぉっ、とセレント族の者から歓声があがる。


「魔力を使えば浅瀬も行けるし、宙空を浮かせることも可能だ。ただ、適性あるものがいないよね」


 島亀もリヴァラハも守護者であって、率いるものではない。カルミアを見ると肩を竦めた。セイレンの魂は黒の大陸にも、この辺りにもいなかったらしい。


「君たちが扱える、その戦闘艦を八隻預ける」


 黒の大陸とミドニキア大陸の中間に、この海族の島亀ダンジョンがある。他にもいくつか大きな島があるようなので、八隻あれば交易もし易いだろう。


「残り四隻には、こちらから出す戦力でここの防衛を任せる」


 星船アルゴーには、セレント族の非戦闘員の身内が残る。多少戦闘の行える者がいても、留守を任せるのは心配だと、レガトは彼らの視線でわかった。


「ミドニキアに巫女の魂の持ち主がいる可能性がある。君等を追い出したくらいの海軍がいるのだろう?」


 大男のヨグルが頷く。


「どのみち食糧や燃料が必要になる。ダンジョンを有効に使うとしよう」


 海底のダンジョンだけれど、畑は魔本で作れる。レガトはレーナとカルジアと協力して、木人族や海人族を呼び出した。


「そんな簡単に錬生召喚されたら、わたしの商売上がったりなんだけど」


 カルミアが拗ねた。アストリアがニヤニヤしている。放っておくと、この娘達はすぐに面倒を起こす。


「カルミア、魔力を預けるから海上の司令官と海底ダンジョンの守護者を君が呼んでくれ」


 あからさまに頼られて得意そうになる。扱いが難しいと、レガトは今更ながら思った。


「鱏人族のフォルネウスは海上で、海人族の戦士達を率いて纏めてもらうわ。ダンジョンには海龍族のアルゴールをつかせる」


 今は人族の姿を取っているが、魔力は高くフォルネウスには、星船アルゴーでの防衛指揮も任せる事になった。

 アルゴールは、リヴァラハの眷属で、海龍化するとリンドブルム並の巨体になる。


「魔力があるから、門番に亀の魔物も呼ぶわ」


 止めるより早く、カルミアは竜亀(ドラゴンタートル)を四体呼び出してぶっ倒れた。


「はぁっ、扱う魔力量が増えれば、制御に使う魔力も増えるって、何度言っても覚えないよね」


 それに耐久性や魔法耐性は高いものの、竜亀は亀だ。動きが鈍く門番として役に立つのか微妙な所だ。


「心配ないわ。この子達は魔法耐性の他に刺激臭にも強くしてあるから」


 寝っ転がって、ヘレナの介抱を受けながらカルミアが説明した。魔物か人か、やって来るのが何者かわからない以上、足止めは命掛けになる。


「竜亀が止めている間に、味方ごとこれで弱らせれば、時間も稼げそうでしょ」


 竜亀達が少し嫌そうなのは目に入っていないようだ。カルミアの戦略は、いつも負ける可能性を考えて組み立てるので、レガトには面白く感じた。


 レガト達がいればそんな作戦必要ないけれど、常に動けるかわからない以上は、現地でやれるものがやれる形を作るのが最上との考え。


「ならこのアビゴル、エリゴルも置いて、星核には一歩足りとも近づかせないようにしよう」


「あっ、信用してないね」


「当たり前だって。ダンジョンの外に出られたら、それ効かないだろう?」


 カルミアの嫌がらせ用の弾丸類は、海中では効果が薄い。


「それは盲点だったわ」


 仕方なく、黒衣の重騎士達を受け入れてくれた。彼らは星核と農園の入った魔本を守る。


「ヨグル達の交易と、分捕り、作物の育成や交易路や補給路が完成すれば生活は保てるようになるはずだ」


 その時は、今まで使っていた商船を出して訪れる客と取引をすればいいだろう。


 恐ろしい番人を残されたものの、レガト達は不安定だった島亀を手懐け、彼らに新たな道を開いてくれた。


「知らぬ事とは言え無礼を働いたのにも関わらず、ここまでしてくれることに感謝する」


 海族が全員ひれ伏した。


「あっただじゃないよ。交易での取り分をしばらくこちらに有利にしてもらうからさ」


 アミュラがやって来た時に、粘りつつ引き下げに応じるように頼んだ。実際に彼らがやってくれるかどうかは賭けだ。


「魔王様も優しい事するものなのね」


 余計な一言を言ったカルミアの頭に、彼女にわすがに残された魔力のたらいが二つ落ち気絶した。


 魔力切れと、頭部のダメージで倒れたカルミアを、アストリアが嬉しそうに魔本の寝室へと運んで行った。

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