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第五話 巨大な亀の街と不吉な思考

 隠れて潜んでいた最後の海賊を情報だけ頂いてを追い出す。


「装備品は普通に軽めの、浮きやすい素材だね。これとか穴だらけの木材を緩衝材にしてる」


 メニーニとカルミアが興奮している。遠見の魔道具も、異界の技術なのか、筒状のものに硝子状のレンズが両端に、中には水のようなものが詰まっていた。


「このスイッチで、拡大範囲を魔力調節するみたいだわ」


 他にも先端の重い三叉の銛や、船体を覆う甲殻類の魔物の鋭い棘の殻の予備があった。


「あの触手、これで傷つくのが嫌で近寄らなかったんだな」


船喰いの触手(テンタクルスグラブ)と呼ばれる魔物の触手は、腕ではなく舌に近く、表皮は柔らかめで粘液で保護されていた。


 粘液は痺れる成分が入っていたのでカルミアが喜んで集めていた。


「あれを防いでくれるのはいいけど、強度はそれほどないよな」


 リグが大剣を持ち出すと、簡単に二つに割れた。


「擬態なんじゃない。この殻の持ち主に似せた。上位捕食者が殻の持ち主なんだよ」


 ホープの着眼点に皆が納得した。生きている殻はもう少し固く、魔力による硬度もあるのだろう。


「蟹や海老のハサミで切られるの嫌なんだろう」


 レガトは海賊船の装甲の分も回収した。船はとくに変わった所はないのでレーナが鹵獲ししまってくれた。


 メニーニとカルミアがその他の魔道具の検証を行っている間に、班を分けて休憩に入る。この海域は大型の魔物が他にもいるようなので、船はゆっくりと進めていた。


 合流しての初戦闘が終わったばかりだというのに、次の戦闘の予感がレガトの感知に届く。危険なのは海だけではない。警戒していたリモニカが上空の違和感を察知した。


「あれは海を覆う影(オーシャンバルチャー)の群れだ。急降下して攫いにくるぞ」


 数が多い。先程の戦闘で漂う臭気を死臭と勘違いしてやって来たようだった。


「高い位置と海のせいでわからなかったけれど、大きいわね」


 レガトの側に来たシャリアーナが、加速して鉤爪を伸ばして自分を捉えようとした禿鷲の魔物を切り裂いた。


「トリアケローより大きいようだね。翼竜くらいあるんじゃないか」


「そうね。的が大きいとはいえ、あのヤムゥリさんは狙撃が上手ね」


 叫び声だけ聞くとヤバい女性なのだが、無駄なく当てている。カルミアの造る道具は彼女が一番扱えている。


「良くも悪くも関わりが深いのだよ」


 それを言うアストリアも大概なのだが、今は飛んだりせずに、魔銃を使って身に迫る魔物を見極め屠っていた。


 海を覆う影(オーシャンバルチャー)は半分以上を飛び道具で片付けると、やって来た方向へ逃げていった。見た目は死肉に群がる禿鷲だったが、統率性は狼のようだ。


「また来襲して来そうだな。警戒時、一人は射撃兵器にて待機させよう」


 禿鷲の群れを喰らうように現れた恐獣化鷲(ビーストイーグル)の巨体を見て、レガトは再び臨戦態勢を取った。


「洗い流した臭いの素に、魔物が仲間意識を持つ匂いがあったのかも。あいつら凄く怯えていたし」


 匂いに敏感なティアマトが、海賊船の匂いから微量な魔力の質の違いに気付いた。


「そうらしいね。それと、逃げたんじゃなく、餌場に気付いたのかもな」


 何事もなければ、生きて辿り着けただろう。しかし、ここは彼らが魔の海域と呼ぶだけはある魔物の頻発する所だ。


 失敗すれば生命を失うということを誰よりも彼らが知っていた。



 大海のダンジョンもありそうな魔の海域を抜けると、眼前に大きな島が見えて来た。


「島というか、亀だよね」


 どデカい亀の魔物の話しは聞いた事はある。リビューア帝国の巨人型ダンジョンの山のように高さはない。


「あれはダイダラスが造ったからイカサマみたいなものよ」


 人造と天然と違いがあのサイズにあるのかどうかわからない。ただ、戦艦五、六隻を丸呑みするのは簡単なくらい頭は大きく見えた。


「匂いのもとは、アレの排世物だ」


 ティアマトは巨大な亀から海賊船と同じ魔力の匂いを感じた。


「魔物避けに、新しい薬を作れそうね。エルミィ、後で回収に行くわよ」


 カルミアの目が輝き、エルミィの目は色を失う。名目上は宮廷術師とその助手なので、嫌でもついていくのがエルミィの真面目な性格をあらわしていた。


「おらも手伝うだよ」


 ノヴェルとブリオネがここぞとばかりにカルミアにしがみついた。


「ハイハイ、どうせ先輩にルーネも来るわね。そういうわけで、わたし達は貴重素材の採取に向かうから、小型の戦艇使うわよ」


 戦力が心もとないので、ヘレナとバステトにバルス、レーナとカルジアが共について行く。


「魔物を刺激しないといいけど」


 リモニカが不吉な事を呟いた。仲間もいるし、亀の口に液体を放り込んだりはしないはずだ。


「レーナの目がカルミアより輝いていたから無理よ」


 アリルが容赦なく断言した。狂った錬生術師(マッドアルケミスト)にとって、貴重素材とは宝だ。用途の為には経緯は無視して突き進む。


「大亀が怒りで震える前に、脱出出来るようにしておこう」


 巨大な亀のいるあたりは魔物にとってはかなり浅瀬なので、動くなら深海のある魔の海域へ向かうはずだ。


 呑み込まれるようだと海中で圧死する可能性もあるので、レガト達は正面を避けて、脇から大亀の島へと近づくことになった。


 亀の背中にはタートラズと言う名の街があった。海賊の街ではあるが、ならず者の街、国を問わず犯罪者の逃げ込む街の一つだ。


 やらかしたものには一見暖かいように見えるが、同じ落ちぶれたものからでも容赦なく絞りしゃぶり尽くすのが、こうした街の人間だとレガト達は知っている。


 戦艇で上陸して来たレガト達の集団を見て、当然ニヤニヤと色めきだったのは言うまでもない。

 別の所から上陸したカルミア達は既に騒ぎを起こしていたので、レガト達も騒動に備え、身構えた。


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