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第一話 浮遊城塞農園 アガルタ

 第二章 大地の娘の慟哭編がスタートです。

 ロブルタ王都の東、アガルタ山に【星竜の翼】の一同がやって来た。ローディス帝国との戦いや、ロブルタ王妃の反乱に備えて撤退したため、アガルタ山の保養所や農園には何も残されていなかった。


『田園の魔本』(エデンの書)はそのままにして、ロブルタや旧ローディスの一部を賄う為の農園を再開発しよう」


 レガトは、荒れ地の再生チームに、作物の種を渡す。『田園の魔本』(エデンの書)にない作物もあるので、いったんここでヒュエギアに任せて育てて見ることになった。


「母さん、準備は出来た?」


 レガトは母レーナに声をかけた。レーナはレガトの魔力を使い、アガルタ山全体を浮揚状態化をしていた。


 すでに【星竜の翼】の都市が、浮遊城塞(フロートキャッスル)都市化している事は誰も知らない。知ればその魔力の膨大さに驚かされ、恐怖に怯える可能性があった。


「あなた達親子が揃うと途方もないバカ魔力になるわよね」


 アリルが呆れたように呟いた。魔力操作に長けたレーナが、レガトの膨大な魔力を好きに使えばこうなるという見本のようだ。


「これでも手狭なのよね。あの娘が温泉施設は外せないってうるさいから」


 あの娘とは言われなくても二人の会話を聞いていたものはみんなわかる。この地の持ち主で、開発者の狂った錬生術師(マッドアルケミスト)のカルミアだ。レーナにとって娘のような孫娘のような子で、母体になったかルジア同様に気に入っているようだった。


 当人はというと、連日の魔力錬成作業で魔力切れになって目を回して眠っていた。ロブルタから加わったメンバーは、このカルミアとアストリアがいないと大人しい。


 アストリアはと言うと、ティアマトとメネス、ルーネとバステトそれにハープとスーリヤを連れて、ロブルタ王都の冒険者ギルドに専用馬車の王族専用馬車(ロイヤル・アスト号)で出向いていた。

 馬車と言いつつ、牽くのはバルスという猫族の魔物だ。それに浮揚式自走式なのに、未だに馬車と名付けるのはカルミアのセンスが残念だからなのだろう。


「メネスという娘がここの管理者、つまり【星竜の翼】のアガルタ支部の支部長になるのね」


 ぼへ〜っと寝そべるレガト。レーナから緊張を緩めろと言われたようだ。ファウダーやヘケトにラナが真似をして寝転がる。カルミア達がいないので、ノヴェルやブリオネも寄って来て本を読み出した。


「シェリハという娘と、エイヴァンというエルフの金級冒険者を補佐に残す。あとは望むならコノーク達を防衛官として就任させるつもりだよ。それに農園の管理も兼ねているヒュエギアにバステトの眷属達がいるからね」


 新しい種と『田園の魔本』(エデンの書)にあるものと、アガルタの農園に植えたことで、以前より収穫量や種類が増える事になりそうだ。

 コノーク達は修羅場をくぐり抜けた事で逞しくなった。レガトはアガルタかロムゥリ、どちらかに残して守りの指揮を任せようとしていた。



「アリルさん、もう一回……」


 憧れていた異国の剣聖は化物だと知りながら、ヘレナは火竜の兎武装(ドラゴンバニースーツ)を脱いだ生身の身体で挑む。ヘレナはダメージを受けるほど強くなる呪いを持っていただけ耐えられた。


 息一つ乱さずに雑談するアリルの足元には、ノーラにメジェドにネフティスがヘタっていた。ネフティスは何故かついて来ていた。そして何故かしごかれていた。


「いい根性ね――――でも今日はここまでよ」


 訓練で本当に動けなくなると、万一何か起きた際に困るからだ。今はそういう状況を脱した。しかしアリルは用心深かった。


「うぅ、でも」


「同じギルドメンバーになったのだから、稽古はいつでも受けるわよ。それにスーリヤやシャリアーナを越えたければ、私よりレーナやレガトが適任よ」


 スーリヤは邪竜神との戦いでも、怯む事なかった。剣閃一振りで邪竜神の首を切り裂いたように見えた。

 カルミアやフレミールのおかげで自分達は戦えている。そう思っていたけれど、違ったようだ。


「オルティナ達を見て判断したのね。あの娘達は剣より他の武器が得意なのに聞かないのよ」


 連携は凄いのに、ぎこちなさに矛盾を感じた。けれどもヘレナには彼女達の気持ちがわかる気がした。


 剣聖アリルに褒められるのは嬉しいのだ。だからヘレナは勇気を出して、レガトやレーナに挑もうと思った。


「ノーラ、貴女はシャリアーナと一緒にラグーンに戻るはずだったわよね」


 ぶっ倒れて息の荒いノーラに、アリルがレガトのかわりに尋ねた。途中から乱入して来たので、取り敢えず相手をしただけだった。


「……気が済むまでついて行くって決めた。見合いなんか嫌だもん」


 アリルはため息をついて頭を抱えた。辺境伯が怒り狂ってそうだ。


「いいの、レガト」


 怒られるのはレガトなのだけど、当人は気にしてなさそうだ。


「放った時点で辺境伯の負けだよ。だいたい僕のせいではないし」


 最終的にはシャリアーナに泣きつけばいいやと、レガトは開き直っていた。


「本当にあなた達は」


 そういうアリルも、面倒な事はシャリアーナに投げる気でいた。彼女の怒りがまた爆発しそうだったものの、身内なので文句を言えないとレガトやアリルは読んでいた。


 カルミアの作った美声君とやらのせいで、レガト達はシャリアーナの怒声を半日近く聞かされる事になった。



 翌日、カルミアの回復を待って、遠征メンバーの選出が行われる事になった。


 目的は三つある。一つは黒の大陸を去ったドヴェルガー達の足取りを追うことだ。ノヴェルほどの才覚がなくても集団魔法によるダンジョン化を持つのがわかった以上、姿のない死の神に囚われている可能性があった。


 悪しきものの残滓が及んでいたとしたのなら、別の大陸で厄介事が生じていてもおかしくなかった。


 もう一つ、こちらも行方知れずとなったロブルタ王妃を追う事だった。


「母上にはきっちり責任を取っていただく」


 アストリアはハッキリと、滅ぼす事を断言した。施政者としての責任というよりも、母娘として教えを忠実に守る事でけじめをつけるのだそうだ。


「散々荒らして回って楽しんでおいて、勝ち逃げみたいにトンズラなんてありえないわ」


 アストリアというよりも、カルミアの発案らしい。


「敬愛する君の先輩(アストリア)に母親殺しをさせに行くことになるんだけど、いいのかい」


 一応、レガトは聞いてみた。道理は間違っていないが、情を考えてやることも出来たからだ。


「いいんですよ。わたし達に殺し合いまでさせて、自分は子供を置いて助かろうなんて甘いって教えてやらないと」


「そう言う事だ。検討してくれたまえ」


 二人の気持ちが同じ意見に固まっているのなら、ロブルタのメンバーも異論は挟まない。


「それじゃあ決まりだ。それでアストリアの新型は出来たのかい」


 カルミアとノヴェルについて行く以上はアストリアの代理が必要になる。


 目に隈を作りながらカルミアが錬生していた複数の聖霊人形(ニューマ・ノイド)の中に、最新型の先輩型(アスト)聖霊人形(ニューマ・ノイド)があったのだ。


 お読みいただきありがとうございます。


 なろうラジオ大賞5用にいくつかの短編も投稿してますので、興味ある方は、お楽しみ下さい。

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