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第二十三話 魔力消失とメニーの馬鹿力

 ローディス帝国のロドカルスを守る帝国軍騎士アッカドの呼びかけに応じて、五人の将が姿を現した。どこから? 普通に結界内の建物からだ。魔力がやはりおかしいくらい強い。偽神の信徒達のように、一気に魔力を絞り取ると目立つし大地が枯れる。ローディス帝国の術師達は、呪いを用いて自分達の地盤を荒れさせる事なく力を蓄えていた。

 どこから奪うのか、それが人か土地かの違いがあるだけだ。彼らの主がこの世界を奪うために、拠点となる自国を荒らしたくないだけなのが本音だろう。


「ハーピルス、結界師を狙え!」


「リモニカ、迎撃を!」


 「ヤムズ、ゲシュナ、五人組を討て」


「シャリアーナ、リグ任せた!」


 アッカドの指示に対して、レガトは対応出来る仲間を当てていく。指示の合間にもレガトへ魔法の雷槍を撃ち込んで来る。


「アギラト、魔法で蹴散らすのだ!」


「アナート、抑え込めるな?」


 獄炎をノーラ達に放とうとした所へ、アナートが氷塊の飛礫で妨害した。アッカドは忌々しそうにアナートを見る。知り合いなのだろうか。覚えやすい見た目ではあるけれど、本来なら時代が違うはずだ。


「ノーラ!四人と協力して、その蛙人の王女を抑えるんだ。湧いて来る蛙人もだ」


 アッカドの舌打ちに対して、レガトは召喚師の一人をノーラ達に抑えさせる。


「イルミアは、もう一人の召喚師を頼むよ。メニーはカバーだ」


 アナートに気を取られたアッカドに対して主導権を握り、レガトは敵に対して適任者を当てていく。イルミアにはもう一人のメスケネトという名前の召喚師をメニーと当てる。

 ハープにはドゥムジという槍使いの将を、スーリヤにはベリーリスという双剣使いを当てた。


「ホープとファウダーは皆のフォローをしつつ、あのアッカドという指揮官の相手を任せる」


 召喚師がいると手が足りなくなる。レガトもゴブリン戦隊を始め、ラグーンで留守番をさせているアルプ達やヒルテを呼べる。でも、今じゃない。


「そっちが姿を見せないって言うなら暴くまでさ」


 レガトは結界内の敵将は仲間達に任せて、潜んでいる魔力溜まりに剣を振るう。


「――――――――へぇ、よく見抜いたね。アッカドの言葉を信じなかったんだ」


 仲間達の誰一人気づくことない中で、四人もの敵がファウダーの首を落とそうと近づいていた。しかし、レガトの剣が影を切り、四人は姿を現したのだ。


「なるほど、さらに四人がシャリアーナを狙っていたか」


 敵の狙いは簡単だ。護りの要のファウダーと、パーティーの精神的な支柱であるシャリアーナを消す。それだけでノーラ達は動揺するだろうし、後手に回って鈍った所から崩す。やられると腹が立つものだけれど、彼らはレガト達が自分からわざわざ飛び込んで来たことを忘れている。


「何人隠れていようと、ファウダーの結界内では隠れられないんだよ」


 ファウダーと魔力を繋げているのがレガトなのだから、異質な魔力が触れた瞬間わかるのだ。位置がわかるということは対処も可能だという事になる。


 レガトの意図を汲み、イルミアが敵をメニーに任せて雷撃を放つ。レガトにより増幅された一撃は、アッカドの雷槍よりも高威力の稲光と共に影を討つ。


 潜んでいた敵が一斉に姿を現しのた打ち回る。魔法への耐性が高いだけあって、すぐに回復魔法で復帰する。

 悔しげに睨むものと、ダメージはあるのに余裕を崩さないものといた。


「協力していたのが、エリダヌス神の一番の巫女戦師アケルナルか」


 おかしいと思った。いくら偽神(オリン)でも、アナート達を封印するくらいは出来る。しかし、あんなダンジョンまで創り出す力をもたらす程の存在感を、偽神(オリン)はこの世界にもっていない。


 封印の洞窟と、偶然かどうか疑わしい巨人族の男の動き。あちらはリビューア帝国の皇帝が関わっていたようだけど、あの狂った女神をいきなり受け入れはしないだろう。

 ローディス帝国も同様だ。アナートや、バアルト達を裏切ったものの他に、ローディス帝国に根を張るものがいるはず。アッカドを見れば彼らの忠誠が、ローディス帝国にはないのはわかる。


 アナートの話しぶりから、敵側のヘケト王女だけはよくわからない。一回に十万の蛙戦士を召喚出来そうな魔力はあるが、なんだか頭良くないように見える。

 良くないというか、深く考えていない。今もノーラ達と対峙しながらボヘーッとしている。ノーラもどうしたら良いのか対応に困っていた。蛙人が皆そうなのか、ヘケトだけがそうなのかわからない。騙され利用されてるかもしれないが、アケルナルと共にいるラナという蛙人は至ってまともなので、ヘケトだけがおかしいのだ。


 ロブルタの女王が保護した牛人の巫女も、そんな感じだそうなので出来れば気絶させ、保護したい。


「あのレーナという娘の子供か。まったく、あいつの血筋は揃いも揃って腹ただしい」


 エリダヌス神は、いわばフィルナス世界の構築に力を貸した一柱の神だ。伝承には記述など殆ど残っておらず、謎多き影の神とされていた。


 その神に仕える巫女の筆頭がアケルナルという巫女の戦士だ。巫女戦師と敬称されているが、エリダヌス神が人に宿る姿がアケルナルとも言われている。


 正体の知れた所でアケルナルが余裕の態度を崩さないのは、絶対的な優位の為だろう。レガトの仲間達は、アッカド率いる将の相手で手一杯だ。レガトは一人で新たな敵の八人をしている状況だった。


「殺せ」


 道化じみた表情を一転させ、アケルナルは攻撃の合図をする。アケルナル自身が蛙人のラナと器械人のザウラクと共にレガトへ向かい、水妖族のナフルとゲーテルがシャリアーナに、ベイド、キード、アザーの三人が最初の目標通りファウダーへと向かった。

 レガトと同じく彼らは全員紋様を持つ戦士だ。召喚された異界の勇者と違い、エリダヌス神の加護を得て紋様の力を覚醒している()()だ。


「アッカド達のように衛士の紋様と違い、多彩なようだね。それでも僕には勝てないよ」


 アケルナルの頬に苛立ちの皺が浮かぶ。余裕の態度は強者にこそ相応しいのに、レガトという青年は今なお笑っていた。


「勝ち目がないとわかりハッタリか。つまらぬ男だ」


 アケルナルが挑発した。レガトの余裕は気に食わない。ただ得体の知れないのは確かで、念には念を入れて引き付け、他の二人を確実に仕留める手段を優先させた。


「わからないかい。紋様って一つじゃないんだよ」


 【双炎の魔女】レーナは、最強の魔法使いの証、『魔王紋』を両手にそれぞれ持つ。魔力量はもちろん、魔力操作も極めて正確な天才魔法使いだ。


「それがどうした。紋様がいくつあろうと、現実に力が振るえなければ無いのと同じだろう」


 アケルナルはどうして魔法が発動しないのか訝しむ。とっくにシャリアーナとファウダーの首を刎ねてレガトは消し炭になっているはずだった。


「痛い所を突くよね。確かに振るえなければ無力だよ。でも使える相手の力を封じる分には役に立つもんなんだよ」


 単純な馬鹿魔力での支配権をレガトは発生させた。ファウダーの結界により、どれだけ魔力が高かろうが紋様があろうが魔法を完全に封じられる。レガトの魔力に抑えこまれて、召喚出来ずにヘケトは呆けるしかなかった。同様に召喚師のメスケネトも困惑していた。


 アッカド達や、エリダヌス神の戦士達も同じだ。いま、この戦いはレガト達もファウダーの結界以外使えない。ファウダーの防護結界によって、レガト達は守りに関して優勢になっていた。


「なんなのだ、その魔法は!」


「見ての通りだよ。魔法がない戦い、肉弾戦さ」


 レガトは剣を一閃しザウラクを袈裟斬りにして倒す。強化魔法もなく、筋力と技量と速度と体力の戦い。


「魔法で片付けてもいいけどさ、ためにならないからね」


 普通に斬り合うだけならコノーク達も戦える。人数の差は大して変わらない。


「まあ、こっちは回復出来る分、有利だけど決着は早くつくかな」


 魔法がなくてもスーリヤは化け物みたいに速く強い。リモニカも速度と正確性は突出している。何よりアナートとメニーニの筋力馬鹿コンビがやばい。リグも力があるけれど霞むくらい強い力だった。


「メニーのやつ、やっぱ地力なんだ」


 特製のメニーニ専用武器で相手の鎧がひしゃげた。運悪く戦鎚に当たってドゥムジが吹き飛んで結界の壁で潰れた。

 似たサブタイトル続くと分かりづらいので、「裏切りの幇助」→「魔力消失とメニーの馬鹿力」に変更しました。

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