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第十二話 真の勇者のあかし

 レガト達は、サーラズの都サランへ向けて出発した。ヘルハウンドからは皮や魔晶石や牙を、冒険者達からは使える装備を剥ぎ、建物の残骸にまとめて燃やす。


「こういうの、出来ないと思ったよ」


 レガトはノーラ達が淡々と処理する姿を見て意外に思った。冒険者をやめていく理由の一つに凄惨な奪い合いが存在する。ムーリア大陸はマシだと言われているけれど、それでもダンジョンで生命を落とした数より、冒険者同士の諍いや、利権を巡る派閥争いで生命を奪い合った数の方が多いと言われている。


「父上が元冒険者だったからさ、躊躇うくらいなら潰せって言っていたよ。狼藉者相手だけど」


 辺境伯の武勇伝は聞いているものの、娘が絡むとやはりおかしくなるようだ。潰すの意味をどう伝えて、どう捉えていたかは聞かないでおく。


「俺たちはズリッチやマーズク達にずっと覚悟を問われ続けていたからな」


 コノークの言葉に、タンキ達が頷く。こちらは兄達が、口を酸くして心構えを説いていたようだ。胡散臭い宗教観を口にするようなら帰らせようと思っていた。

 何せここからは冒険者や異界の強者達との戦いが続く。仕留められる時に刃を退いた事で、味方が殺られることだってある。

 そのあたりを日頃から街を守る衛士として考えていたんだと思うと、人って成長するものだと改めて感じるのだった。


 アナートはというと、自分に合う鎧やら武器やらを見繕っていたので問題なかった。あの見た目で率先して首を刎ねていたのに、死者への冒涜について語るわけはないだろう。


「そういう心配しながら、あいつら逃がしたのはいいわけ?」


 異界の強者二名を逃がした事に、スーリヤが不満そうだ。


「ああ、あれは巣穴に帰すだけだからいいんだよ。力の根源は浄化してこの世界に返しておいたからね」


 こちらの世界にやって来て、力を得てからわりと好き勝手にやっていたようなので、力を失い好き勝手に出来ない人生を贈ってあげたのだ。

 戻るなり、逃げ出すなり好きにすればいいが、今まで通りの振る舞いすれば結果はお察しというわけだ。


「死んだ方がマシだったんじゃない」


 スーリヤが冷めた様子で逃げて行った二人の方向を見る。サーラズの王都があるのど同じ方向だ。


「仲間を呼ばれるんじゃないかな」


 たぶんハープの予想通りになるとレガトは思った。覚えてろとか、〇〇がいたら、こんなものじゃないぞ、とか叫んでいたからだ。わかりやすいくらいの弱者の遠吠え。異界の強者なのに。


 レガト達はサラスナから王都サランへ進む。異様な戦禍の気配のためなのか、街道を進む間に旅人に会う事はなく、街へ入ってもひっそりとしていて、露店から街の宿屋、ギルドに至るまで扉が閉ざされていた。


「人の気配はするのに、お店全部閉まってるよね」


 先頭を歩くハープが街の異様さに警戒を強めて言う。


「他国へ攻めようって国の内部の街が厳戒態勢を引くって有りうるのか?」


 ノーラが施政者の娘らしい疑問を浮かべた。


「僕たちを警戒、じゃないみたいだね」


 ホープがそう言うと、こちらを覗き見る店の者と目が合った。


「異界の強者達の狼藉は酷いと言うから、彼らの通る街はみんなこうかもしれないね」


 バアルト、それにアナートの話しからサーラズの国民は、異界の強者や勇者の子孫のはずなのに、現代の異界の強者達には同族意識はないのだろう。サラスナの荒れ方を見る限り、残虐性が高い。


「だからってワタシとしては、慈悲を施す気にはなれないワ」


 それはレガトも同じ気持ちだ。可哀相には思うのだけど、もっと酷い目にあった人達の犠牲の上に成立した国なのだ。同じ目に合わせるのが、自国の同胞なのだから因果が巡るというより、勝手にやり合っていればいいとすら思うのだ。


「今後サーラズからの侵略に悩まされない為にも、僕らで異界の強者、勇者狩りをついでに行うとしよう」


 二人の異界人を逃したのは、サーラズの主力を釣るためだ。報告を受ければ彼らは始末されるだろう。こちらとしては、叩くべき戦力を叩くため、釣れたものは全て叩くつもりだ。


「俺たち、いくら何でも無理だぞ」


 コノークとタンキが、真面目な顔でぼやくように呟いた。自分達の戦闘能力に不安があるのはわかるよ。


「今更何を言ってるのよ。貴方たちの役目はノーラを守る事。ここがサーラズだろうと、ラグーンだろうとね」


 スーリヤが格好いい言葉で発破をかけていた。どこに来ようとやることは変わらないと言っている。コノーク達の顔色は明るくなるけれど、根本的な問題は変わってない事をレガトは黙っておいた。ノーラ達には、レガトの持つ腕環と同じものを持たせてある。


 レーナから持たされたので、性能に関してはお墨付きだ。緊張感を無くされても困るので、彼らに装備をさせた時には特に説明していなかった。


 サランの都の手前の街で、異界の強者や勇者達による防衛線が敷かれていた。


「サランを囲う街の防衛線をそのまま利用したんだね」


 急造感がない。昔からの街並みが非常時には防塞がわりになるように築かれていた。東にインベンクド帝国、海峡を挟んだ西にはローディス帝国がある。堅固な都市造りが必要だったのだろう。


「裏で中央貴族や大貴族達が繋がっていたんじゃ、御立派な防塞も張りぼてで十分だったろうにね」


 レガトは無駄に頑丈な防塞から浮かぶ影に目をやる。防塞壁の上から弓隊と魔法使いからの一斉砲火を浴びせられる。


 速度のある矢の雨と強力な火球により、レガト達は炎の海に呑まれる。先制の攻撃で倒れるようなら異界の強者達は負けない。第二波は先制の間に長い詠唱を済ませて放つ、溶岩弾の地獄だった。

 異界の達は詠唱をしなくても、強力な魔法を放てるのだが、輪唱する事で強力な魔法がさらに狂悪な威力に変わるのだ。


 レガト達のいた防塞壁前の広場が炎をあげる溶岩の渦になって沈み込む。トドメの毒の霧まで撃ち込まれて、生きていられるはずはないくらいの地獄と化していた。


 防塞壁上の異界の強者達には熱気も毒も伝わらない。街の防塞壁は結界が張られ守られているためだ。結界のない地面が炎獄の熱で溶けていく様を見て、彼らは侵入者の最後を確信した。


「ファウダーの結界って、信徒達では破れないってわけじゃないんだよね」


 大地の魔法で足場の維持をし続けるハープが呑気な質問をした。熱と大地の焼ける煙が立ち込めるため、外からの目視では、レガト達の姿は見えない。


「異界の強者は魔力的に無理。異界の勇者も、この世界に根ざした超強力能力(スキル)しか使えないから、根源のズレで通じなくなるだけ」


 簡単にいうものの、膨大な魔力の渦を前にして冷静に対処するのは難しいし、能力を活かすために弓隊による直接照射している所をみると、無効化されないように対策を考えて攻撃をしているのはわかった。


「結局、異界の強者達を百名集めてもファウダーの魔力一人分に届かないのが現状なのかもな」


 だから必殺の炎獄の中でも、レガト達は生き延びていた。驚く異界の強者達に、リモニカが魔法の矢で反撃をする。異界の強者でもないリモニカの矢は、防衛結界を打ち破り、狙撃手の一人を撃ち倒した。


「さあ、本命が来るぞ」


 レガトは異界の強者達には荷が重いとわかった勇者達が出て来たのを確認した。かつて対峙した異界の勇者達は全盛期を過ぎたおっさんおばさん達だったけれど、サーラズにいた勇者達は全員若かった。

 彼らの必殺の能力とやらは通じないにしても、まともにやりあえば強いのは確かだ。


「十二名、それにさらに三名が“紋様”持ち、か」


 レガトは、三名の額や手の甲に奇妙な紋様があるのを見てニヤリと笑った。


「あれは、【真の勇者の証】」


 ファウダーは顔を青ざめて、異界の勇者達の紋様を見つめ、小さく呟いた。

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