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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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え…ユキもブーケ争奪戦に参加するの?…多少不穏な空気を感じつつも、結婚式が始まる…。

ユキは結婚式用の服を紙袋に入れて俺を待っていた。

俺を出迎えたユキは何だか異様に笑顔になっていて、動作の一つ一つが何と言うか…浮かれていた。


結婚式と言うものはここまで女性をヒートアップされる物なのか…。


「彩斗、やっぱりブーケトスってするんでしょ?」


死霊屋敷に向かう車の中でユキがニコニコ顔で尋ねた。


「ああそうだよ、ついさっき四郎がお気に入りの花屋さんからブーケが3つ届いたんだ。

 俺が今まで見た事も無い素晴らしい出来だったね~!」

「そうなんだ~!

 じゃあ、私も頑張らないとね!」


ユキが笑顔でガッツポーズをした。


やれやれ、ユキもブーケ争奪戦に参戦する気満々だった。

しかし、真鈴やジンコ、加奈、そしてスコルピオ女性メンバーも参戦するブーケ争奪戦にユキも参戦する事に俺は危険を感じた。


普段から信じられないほどの訓練を受け、悪鬼並みの体力敏捷性を持つ彼女達の手加減抜きの殺気溢れる争いになんの訓練も積んでいないユキが参戦して果たして無事でいられるのだろうか…?

下手をしたらユキの腕の2~3本、いや5~6本はへし折れるか千切れ飛ぶかもしれない…。


「ユキ…あんまり…無理しないでね…。

 結構真剣な人もいるようだから…。」

「なによ~!

 彩斗!

 あたし頑張っちゃうわよ~!」


…なんだか心配だ。


死霊屋敷に着くと『ひだまり』を早めに閉めたらしく、加奈と凛も戻って来ていた。

皆明日の準備に忙しく立ち歩きながらユキを見ると笑顔で手を振って挨拶してくれていた。


ユキの荷物を俺の部屋に入れてダイニングに行くと、真鈴とジンコ、加奈、そして司と忍まで肩を組んで円陣を組み何やら気合を入れていた。


…まじか。


ユキが何をやっているか尋ねた。


「みんな何か気合が入っているけど…なに?」


真鈴がユキを見た。


「ああ!ユキ!

 良い所に来たわ!

 私達、ブーケ争奪戦の作戦会議をしていたのよ!

 今回共同戦線を敷いてね、私達のチームでブーケを獲得したらみんなの戦果と言う事でね、作戦会議をしているのよ。」


そして加奈が。


「どうやら、スコルピオ女性メンバーも何やら作戦を立てているようなので絶対に負けられないのですぅ~!

 ユキも私達のチームに参加して、ブーケを獲得するですぅ~!」


そしてジンコが。


「ユキ、今最適なフォーメーションを研究している所なのよ!

 ユキも参加して!

 このあと、庭で練習するんだけどね!」


司まで。


「ユキ!皆でブーケを勝ち取ろうよ!」


忍まで。


「ユキも一緒に戦おうよ!」


…まじか。


その後、どこから持って来たのかラグビーボールを持って動きやすい服装に着替えた真鈴達はユキも交えて庭でブーケ争奪の練習をしていた。


圭子さんからブーケを空高く投げるとの情報を得た真鈴達はラグビーのスローインのようないキャッチする選手を持ち上げるリフト、万が一取りこぼした後に他の選手が落下点にダッシュ、そしてブーケを持った者を効果的に敵の争奪から守るフォーメーションを組んで見事タッチダウンラインまで突っ走る練習を日暮れまでしていた。


…まじか。


大方結婚式の準備を終えた四郎と明石がコーヒー片手に庭に出て来て真鈴達の練習を見ながら苦笑いを浮かべてタバコに火を点けた。


「やれやれ、あんなにブーケが欲しい物なのか?」


四郎が言うと明石がにやにやした。


「四郎、昔はバーゲンセールと言うものがあってな、まぁ、今も有るけどな、その頃の女性たちの商品の奪い合いは凄かったぞ。

 当時流行ったプロレス並みの迫力だったんだ。

 彩斗、ユキは戦闘経験も無く訓練も積んでいないど素人だ。

 熱くなって怪我をしない様に言って置けよ。」

「うん、そうするよ。」


俺はユキが真鈴やジンコや加奈にリフトされて地上4メートル以上まで体を持ち上げられて

ラグビーボールをキャッチする練習をするのを見ながら答えた。


「しかし、このままではブーケトスは情け無用ルール無視の血を血で洗う惨たらしい戦いになりそうだな。

 何か対策を練ろうではないか。」


四郎がそう言って俺と明石は頷き、キッチンに入った。


そして『ひだまり』で翌日の披露宴に出す料理の仕込みをしていた喜朗おじとクラが戻って来て皆でダイニングで夕食を食べた。


クラと凛は明日の準備があるので喜朗と加奈の家に泊まる事になった。

真鈴達はユキも交えてメモにペンで色々とフォーメーションを書きながら額を寄せ合って何やら相談していた。

そして深夜遅くにリリーもやって来た。

これで新婦も新郎もすべて死霊屋敷に集まった。


流石に翌朝のトレーニングは中止となったが、どうやら朝早くから忙しくなりそうだ。


結婚式当日。


午前10時30分から式を執り行うのだが、もう朝8時にはぞろぞろとお客がやって来ていた。

急遽プールサイドや外に出した椅子に座って待ってもらい、忙しい中、スコルピオの連中に飲み物と軽食を出して式を待ってもらった。


岩井テレサと榊、そしてポールがやって来た。

ポールは四郎のベストマンを務めるのでキッチンでノリッピー達と式の段取りを打ち合わせをしている。


やはり俺達ベストマンはモーニング姿、メイドオブオナーの真鈴達は白いワンピースのドレス姿に着替えた。


圭子さんのママ友たちも来ていた。

普段着でどうぞ、ご祝儀などは不要と言っていたのがママ友たちは綺麗に着飾っていて、ご祝儀の代わりにお菓子を沢山作って持って来てくれた。

そして、花嫁の長いスカートを裾を持つ役目に司と忍、そして司と忍の友達数人が頭に花飾りをつけてやはり白いワンピースのドレスを着て頬を赤く染めてかしこまっていた。やはり緊張しているのだろうか。


そして、スコルピオの連中が儀礼用の凛々しい紺色の略章とスコルピオのワッペンが縫い付けられた制服姿で来ていて、コーヒー片手に敷地を散策していて圭子さんのママ友たちが嬌声を上げて顔を赤らめて一緒に写真を撮って欲しいと頼んでご満悦だった。

やっぱ、かっこ良い制服ってモテるよね。

俺達ワイバーンももしかしたら岩井テレサの式典とかに参加する可能性もあるかな?作って置こうかなと思った。


屋敷の庭のベンチで座っていた俺の所にやはりモーニング姿の喜朗おじがやって来た。


「彩斗、今ダイニングは立ち入り禁止だ。

 圭子さん達新郎がな、さととまりあにヘアメイクなどをしてもらっている。

 四郎達はプールで待って居るがどうもかなり緊張しているようだな。

 明石などは左腕と左足、右手と右足が同時に出て歩いているぞ。」


明石がそんなに緊張しているのか…俺はこれは見逃せないと喜朗おじとくすくす笑いを浮かべながら様子を見に行った。


やはり四郎達はロボットのような動作をしてかなり緊張しているようだ。


「なんだだらしない。

 お前達はノリッピーに誓いますと言って指輪を新婦にはめてベールを上げてキスするだけだろうが。」


喜朗おじが言うとクラがギギギと音を立てそうに顔をこちらに向けた。


「そう言うけどみんな見ている所で…こんな姿をして…緊張しますよ。」


成る程、花婿も緊張するんだな…。


やがて遠くからカラカラと音が聞こえて来た。

3台のでかいアメ車のオープンカーが車の後ろに缶を引きづりながらゲートをくぐって入って来た。


式の後、四郎達が後席に乗り込み披露宴会場の『ひだまり』に向かう車だった。

皆が車に群がり、車好きな連中があれやこれや言いながら中を覗き込んでスマホで写真を撮っていた。

何やら60年代の珍しいヴィンテージカーらしい。


そうこうしているうちに式が近づき、俺達は祭壇が設けられた暖炉の間とそこに続く書斎、更に椅子が並べられた玄関ホールに入った。


どうやら客は全員入りきったようで安心した。

オルガンが穏やかな音楽を奏で始めた。

祭壇には司祭の姿のノリッピーがいる。

傍らにはスコルピオのコーラス隊が控えている。

讃美歌を歌う要員だ。

俺達は四郎達新郎と一緒に立ち、花嫁たちの入場を待った。

やはり付き添いのベストマンでも緊張する。

俺は何度もクラに渡す指輪を確認した。


やがてオルガンが止み、コーラス隊が賛美歌を歌い始めた。

会場の和やかな雰囲気が、今度は少し荘厳な雰囲気に変わった。


そして圭子さんを先頭に、リリー、凛がウエディングドレス姿で加奈達メイドオブオナーと裾を持つ司や忍達を引き連れて入場してきた。

かなり前の方に座っていたユキは花嫁を見ただけで感動して涙ぐんでいた。

花嫁たちの美しさに会場がどよめいた。

確かに美しかった。

俺は花嫁の美しさに震えているのか、ただ式の進行に手違いを起さないかと緊張して震えているのか判らなかった。







続く



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