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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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結婚式も近づいた…準備に忙しい俺達に張り込みに行ったはなちゃんは地中にとんでもない存在が居る事を伝えた。

凛の制服盗難事件も解決を見た俺達は迫る結婚式の準備を、秘密の地下道の穴掘り作業と、多摩山中の殺人現場の張り込みを、そして言うまでもないがそれぞれの戦闘トレーニングを続けた。


圭子さんの射撃の腕の上達は素晴らしく、ライフルが持つ機械的な誤差以上の命中率を見せたがそれでも圭子さんは納得せずに喜朗おじに頼んで愛銃SR25のさらなるチューンを頼んでは精度確認の射撃を繰り返した。


加奈は例のエレファントガン『加奈・アゼネトレシュ』の速射の研究をしてかなりの速さで射撃をし、再装填してまた射撃を繰り返した。

装弾数2発のライフルだが、考えられないほどのスピードで撃ち続ける事が出来るようになった。


明石はその後もトレーニングを続け、また、皆に内緒でトレーニングを続ける四郎と共に戦闘力が限りなく向上し、その他のメンバーも加奈や圭子さん、明石と四郎に触発されてそれぞれの戦闘スキルがかなり向上していた。


遊びに来たリリーがワイバーンの人間メンバーの戦闘力はスコルピオの悪鬼メンバーに肩を並べるほど上がっていると呆れた声を上げた。


地下道の穴掘りは順調に進み、方向の間違いがなく、早ければ年明けには開通して出口の頑丈な小屋の建設に取り掛かれる目算が付いた。


そんなある日、制服泥棒の奴、いや、黒田くろだ 郁夫いくおが運転するジャガーに乗ったさととまりあが死霊屋敷にやって来た。


どうやら結婚式の披露宴でコーラスを披露するリハーサルをスコルピオの練習場で行うための打ち合わせに来たらしい。


司と忍は黒田に懐き、敷地の散歩に連れ出した。

黒田は食べ物にさえ困るほど困窮している時と打って変わってすっかりと血色がよくなっていて、俺達は安心した。

しかし、黒田の妹の節子…どうしてそんな名前にしたんだろうか?

黒田の親は火垂るの墓は見ている世代だとは思うが…節子の病状は相変わらずだそうで、それを言う時の黒田の眉が曇った。


さともまりあも黒田をべた褒めしていた。


「黒田はね、最近私達は『郁くん』と呼んでいるけどね、とても誠実で几帳面で大手ホテルのフロント業務をしていただけあっていつも細かい所まで気を配ってくれて凄く助かるわ~!」

「食べ物に困るほど随分とお腹が空いて困っていたのに一切の盗みをしなかったしね、信頼できるわ!

 彩斗君達にお礼を言わなきゃ。」


なるほど、黒田は『ひだまり』に凛の制服を盗みに入った時でも目の前に積んである食材に一切手はつけなかったと言う事を思い出した。

真面目で誠実で几帳面でこの世にただ一人の肉親である妹を大事に思う、とても良い悪鬼だ。

同時に俺はこんな善良な人間を悪鬼にして人生を狂わせた謎の子供を憎く思った。

いつか探し出して討伐するべきだと思う。


そんなこんなで慌ただしく時は過ぎて行き、結婚式まで数日と言う所で、喜朗おじはガレージ地下射撃場をディスコルームに改造し、リリー達がどうせ結婚式当日は朝まで騒ぐか仮眠をとるだろうと大量の折り畳みベッドと枕と厚手の毛布を持ち込んだ。

酔いつぶれた奴ら等は暖炉の間や屋根裏にベッドを並べて放り込み、それでも足りなければ明石一家と喜朗おじと加奈が出て行った空き部屋に収容すれば良いと決めた。

ガレージ地下のディスコルームの壁にはソファをずらりと並べて置いたのでそこで寝かせても良いだろう。


吊り下げたミラーボールの動作確認をしたら司と忍が狂乱状態になる程に飛び跳ねて喜んでいた。


結婚式の前々日の午前にノリッピーが数人を連れてやって来て、暖炉の間に祭壇を設け、屋根裏から出ている狙撃用鐘楼に鐘を吊るした。

紐を屋根裏まで伸ばして司や忍が紐を掴んで何回かタイミングを練習した後で体重を掛けて紐を引っ張ると映画でもおなじみのあの、教会の鐘が高らかに鳴った。


穴掘りの休憩で地上で一休みしていた俺達にも鐘の音が聞こえ、コーヒーを飲みタバコを吸いながら暫しうっとりと平和そのものの音色に聞き惚れた。


司と忍が友達に言って広まったのだろうか、圭子さんに料理の手ほどきを受けていた司と忍の友達の母親たちがぜひ結婚式に参加したいと詰め掛けた。

圭子さんは細やかな内輪の結婚式なのであまり改まった服じゃなくどうぞ普段着で気軽に遊びに来てくださいと、ご祝儀の類は受け付けておりません、どうぞ手ぶらでおいでくださいと念押しした。

まぁ、結婚式と披露宴くらいまでは俺達の事を知らない人間でも出席して大丈夫だろう。


夕方になり、穴掘りを終えて俺達はシャワーを浴びてすっきりした。

多摩の悪鬼の張り込みは今日まで、明日と結婚式当日と翌日は張り込みを休む事に決めた。

俺と明石とはなちゃんが遭遇した明石が冷や汗でびっしょりに成る程強い正体不明の悪鬼はその後姿を現さなかった。

唯一の手掛かりである多摩山中で殺人を犯す5人組の悪鬼の1人はあの日、あの家から逃亡してからまだ戻っていない、どこに姿を消したのか…。


今日の夜は明石と四郎とはなちゃんで多摩山中の張り込みに出かける。

ユキが『みーちゃん』から休みをもらい式前日の夜から死霊屋敷に泊まりに来ることが決まり、俺の胸が高まった。

また、式前日に四郎が手配した花々が届くとの事だった。

特別な細工が施してあると言うウエディングドレスが届き、さととまりあが当日早くに来て花嫁たちのヘアメイクをするとの事だった。

喜朗おじは『ひだまり』営業中の合間を縫って巨大なウエディングケーキを作ったが、巨大すぎて天井につかえてキッチンから出せなくなり、泣く泣く少し小さく作り直し、削った分を貰って食べたとクラと凛が笑いながら俺達に教えてくれた。


そして俺達は結婚式前日を迎えた。

朝のトレーニングを終わらせた俺達の所に一晩中張り込みをしていた明石と四郎、はなちゃんが戻って来た。

何やら深刻そうな顔をしていた。


「彩斗、どうやらとんでもない奴がな…地下にいるらしいとはなちゃんが言ってたんだ。」


四郎が難しい顔で言った。

はなちゃんが手を上げて語った。


「今まで気が付かなかったのじゃの。

 どうやら何か巨大なものがの、あの殺人現場の地下をな、通り過ぎて行ったじゃの。

 今まで気が付かなかったのはの、どうやらあの辺りのもっと深い所をな、魚の様に回遊しているようじゃの。」


俺達は唖然としてはなちゃんの顔を見つめた。

ジンコがはなちゃんに尋ねた。


「はなちゃん…それは…悪鬼なの?」

「…わからんの…わらわにも判らん…強いて言えば、岩井テレサの敷地の巨石の下でまどろむあの存在に近い物かも知れぬ…掴み所は無いじゃの。

 これと言った思念を感じないのじゃの。

 人間や悪鬼と違い、何と言うか論理的な思考をせぬものかも知れぬの。」

「…。」

「…。」

「…。」

「ともかく昨日の夜は地下の浅い所まで上がって来てやっとその存在に感づいたじゃの。」

「多摩山中で殺人を犯す悪鬼はな…まぁ、これは俺が考えた憶測に過ぎんが…その地中の存在に生贄を捧げている…とかな…。」

「景行、それは充分合理的に考えられることだと思うわ。」


真鈴が言い、俺達も頷いた。


「はなちゃん、そいつは…どれくらい大きいのですかぁ~?

 加奈のアゼネトレシュで始末できますか~?」


加奈が問うとはなちゃんは首を傾げた。


「う~ん…まずは…無理じゃと思うの…この屋敷よりもずっとずっと大きいの。

 もしかしたらわらわがカタストヒーを使っても…まあ、物理的な実体があるのかも怪しいじゃの。

 生きている事は確かじゃが…謎の存在じゃの。」


俺達ははなちゃんの答えに沈黙した。

もしもそんな巨大な化け物が出現したら…もしもそんな奴が攻撃してきたら…俺達ではとても手に負えない…もはやウルトラマンかウルトラセブンか宇宙戦艦ヤマトとかガンダムかジオングにでも頼むしか無いな…。


「まぁ、あまり切羽詰まった感じはせなんだじゃの。

 もしも生贄を欲しているとすれば、餌が欲しいと思ったらもっとこう、アクティブな思考だと思うじゃの。

 まだ日にちの余裕があるじゃろうの。」


俺達は何とか気を取り直し明日の結婚式の事を考えることにした。

皆はちょっとわざとらしく忙しい忙しいと言いながら結婚式の準備に取り掛かった。






続く





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