明石犬の追跡で俺達は凛の制服泥棒の巧妙に気配を消せて鼻が利く変態でしかも悪鬼の居場所を突き止めたが…。
俺達は時々車を路肩に寄せて止め、真鈴と明石犬が見えなくなりそうになるまで待ってからまた車を進めると言うやり方で凛の制服泥棒の巧妙に気配を消せて鼻が利く変態でしかも悪鬼の追跡を続けた。
明石犬は順調に歩き続け、やがて人里に下りて行った。
インターカムから真鈴の声が聞こえる。
「ねえ、景行、凛の制服泥棒の巧妙に気配を消せて鼻が利く変態でしかも悪鬼の後を追えてる?
奴は車とかなの?
それとも歩き?
ねえ、教えてよ景行…ワンワンじゃ判らないわよ~。」
俺達は明石犬が立ち止まり地面に前足で文字を書いているのを見た。
やがて真鈴の声がインターコムから聞こえた。
「明石犬が地面にチャリと書いたわ。
奴はどうやら自転車で来たようね。」
真鈴の声を聞いてなるほどと俺達は思った。
自転車なら音を立てずに済む。
「なるほど、悪鬼なら自転車に乗ればかなり遠い所からでも『ひだまり』に来れるな…。」
ハイエースのハンドルを握る喜朗おじが呟いた。
「きゃあ!何よ景行!
汚い真似しないでよ~!」
真鈴の悲鳴が突然インターカムに流れた。
「なんだ?真鈴どうした?」
四郎がインターカムに尋ねた。
「明石犬がね、突然立ち止まってその…自分のおちんちんの先を舐めたり嚙んだりしているのよ~!
汚い~!いやだ~!」
真鈴の声を聞いて俺達は苦笑いを浮かべた。
「真鈴、落ち着け、まぁ、今の明石は犬だからな…その…あそこがむず痒かったんだろうな。」
四郎が苦笑交じりの声で言った。
明石は少し恥ずかしかったのか自分の尻尾を追いかけてくるくると回ってワンワンと吠えた後で追跡を再開した。
小一時間追跡を続け、俺達は街道をかなり降りて行き、人家がそこそこある場所まで来た。
そこで真鈴と交代でクラがリードを持つことになった。
「やれやれ、かなり寒くなったとはいえ、二日酔いで歩き回るのは疲れたわ~!」
と言いながら真鈴はスポーツドリンクをごくごくと飲んだ。
クラが代わりにリードを持ち、はなちゃんを入れたバッグを肩に掛けた。
やはり脇にSIGを吊り、腰にナイフを忍ばせている。
「景行さん、よろしくお願いします。
あの凛の制服泥棒の巧妙に気配を消せて鼻が利く変態でしかも悪鬼の居場所を必ず突き止めましょう!」
「ワン!」
「わかりました。
何か欲しい物がありますか?」
「ワン!ワン!」
「景行さん、ワンワンじゃ判りませんよ。
何か言葉で言ってくれないと…。」
ああ、やっぱりクラも明石犬の可愛らしい、圭子さんが笑い転げる程の声を聞きたいんだなと俺達は思った。
あのね…俺達は真剣だよ。
真剣に凛の制服泥棒の巧妙に気配を消せて鼻が利く変態でしかも悪鬼を探し出そうとしているよ。
でもしかし、圭子さんが笑い転げる程の明石犬の声も聞いて見たいんだ。
明石犬はやれやれと言う感じで頭を振り、地面に前足で、ミズ、と書いた。
声を聞こえなかった俺達は多少失望しながらもボウルに水を入れて明石犬に差し出した。
明石犬はがつがつと水を飲み、後ろ足で首を掻いてから追跡を再開した。
そしてかなりの住宅街に入って来たところで明石犬はそわそわと辺りの匂いを嗅ぎ始めた。
「どうしましたか?
景行さん、匂いが途切れましたか?
あ!」
明石は電柱に片足を上げておしっこをした。
散歩中の犬のごく普通の行動だが、クラの方が慌てておしっこをしている明石犬の身体を自分の体で隠し、明石犬がしたおしっこの跡にペットボトルの水を掛けた。
「…まぁ、犬だからな…。」
俺達は車から明石犬を見て苦笑した。
そのご、やはり散歩する別の犬が明石に近寄り、明石の肛門の匂いを嗅いだ、そして明石もお返しにその犬の肛門の匂いを嗅いだ。
「ま、まあ、犬だからな…。」
俺達は車から明石犬を見て苦笑した。
クラの方が顔を赤くして俯いている。
犬を散歩している若い女がクラに話しかけている。
「大人しくてお利口なワンちゃんですね~!
お名前はなんて言うんですか?」
「あっ僕は蔵前です。」
インターカムから流れるクラの言葉に凛が少し目つきが鋭くなり呟いた。
「バカね、明石犬の名前を聞いているのよ。
まったく、私がいるのに…。」
やはり凛は少し嫉妬しているのだろうか。
インターカムからまた二人の会話が聞こえた。
「…あの~ワンちゃんのお名前は?」
「あ、あの!
えと、明石景…いや、この犬はアカカゲと言います!」
俺達はクラが即興で付けた明石犬の名前に苦笑を浮かべた。
やがて犬を散歩している若い女性が挨拶をして歩き去った。
またクラと明石犬が追跡を再開した。
「景行さん、やっぱり犬でもブスとか美人とか判るんですか?
ちょっと気になったんですけど…教えてください。」
「そり…ワンワン!」
明石犬は地面を前足でひっかき始めた。
危うくクラの誘導尋問に答えそうだったのに…ちっ。
「クラ、明石犬はなんて書いてるの?」
俺は尋ねるとクラが地面を見た答えた。
「…スゲエ ビジン、あの犬はとても美人だそうです…ケイコナイショ…圭子さんには内緒だそうです。」
そして、クラに代わって凛がリードを持ち追跡を再開した。
やがて明石犬が安普請のアパートの前で立ち止まった。
「景行さん、ここなの?」
明石犬はアパートの駐輪場に留めてある自転車の匂いを嗅いで地面に、ココ、と書いたそうだ。
凛と明石犬がハイエースに戻って来た。
ハイエースで人間の姿に戻り服を着た明石がニヤリとした。
「残念だな犬の俺の声を聞けなくて。」
「くそ~かなり残念だったよ。」
俺が答えると明石は満足した笑顔を浮かべた。
「でも景行、自分のおチンチンを舐めたり噛んだりして汚~い!」
「そうですよ!
それにおしっこしたい時は何か言ってからにしてくださいよ~!
こっちがなんか恥ずかしくなりましたよ~!」
「それに他の犬に自分の肛門の匂いを嗅がせたりお返しに嗅いだりされると少しわれも引くな~!」
真鈴とクラと四郎が口々に犬の明石に文句をつけた。
明石がSIGのホルスターを身につけながら言った。
「まあまあ、あの時は犬だから仕方ないじゃないか。
犬の時のちんこがむず痒い時のイライラはお前らには判らん。
小便をするのにいちいち人間に戻ってトイレに行けるか。
肛門を嗅ぎ合うのは犬にとって重要な社交儀礼なんだぞ。
下手に拒絶すると喧嘩になっちまうからな。
握手をする手を払いのけるような、渡された名刺を破り捨てるような失礼な事なんだ。
それにしてもクラのネーミングセンスは何だ?
俺は仮面の忍者じゃ無いぞ。」
「仮面の忍者…何ですかそれ?」
クラが首を傾げた。
俺も仮面の忍者とは何だか判らない。
アカカゲという言葉がキーワードなのか…。
「まぁ、後でググれよ。
結構面白い番組だったな。
とにかくあいつの居場所は突き止めたぞ。
あのアパートのどこかにいるのは間違い無いな。
後ははなちゃんが細かい所を探ってくれよ。」
「さっさと討伐しましょう、そして凛の制服一式を取り返さなければ。」
気が急いているクラはもう戦闘服に着替え始めた。
「わらわも今探っているが…やつは寝てるのかも知れぬな…やはり気配が薄いがあのアパートの2階のどこかの部屋じゃの。」
「やれやれ、部屋を特定できないと襲撃も出来ないぞ。
奴が起きるまで待つか。」
「景行、バックに何がいるか判らないからもう少し様子を探るべきだと思うよ。」
「そうだな、われも彩斗に賛成だ。
ここで襲撃せずにしばらく奴の行動を探るのも有りかもな。」
そこで俺達は奴のアパートの周りに車を停めて包囲体制を整え、奴が起きるのを待った。
「はなちゃん、奴は強そう?」
真鈴が尋ねた。
「気配が薄いのでよくは判らんが大して強くないと思うじゃの。
気配を消して姿を晦ませて不意打ちするタイプかも知れんじゃの。
真正面からの戦いではきっと弱いじゃの。
悪鬼になってからせいぜい数年と言う所かの…お!奴が起きたじゃの!
明石達に気配を消せと伝えるじゃの!」
アパートの2階の一室の窓が開いた。
貧弱な、やせっぽちの若い男が姿を現した。
なるほど、はなちゃんは言う通りあまり強くは見えなかった。
「皆、暫く待機、奴の行動を探る。
まだ手を出すな。
奴は若いから灰にはならないぞ。
ここでは死体の処理に困る。」
俺はインターカムでそれぞれに指示を出し、岩井テレサの組織に連絡を取り、処理班の待機を要請した。
奴はどこかの工場の作業服らしい姿で部屋を出て階段を降り、自転車にまたがった。
手に持っている紙袋にはどうやら凛の制服一式が入っているようだ。
「みんな、まだ手を出すな。
奴を尾行するぞ。
くれぐれも感づかれるな。」
俺はまた指示を出し、注意深く距離を取りながら奴の自転車を尾行した。
どうやら奴は備考に感づいていないようだ、大してスピードも出さず、奴の自転車は走って行き、やがて花屋に入り、暫くして一束300円くらいの花束を買った。
「どうやら奴にとってなけなしの300円のようじゃの。
奴はその金を使ったおかげで今夜の食事を諦めたようじゃの。」
はなちゃんが言った。
「何それ?
はなちゃん、なんで花束買ったか判る?」
真鈴が尋ねるとはなちゃんは頭を振った。
「どうも普段から自分の心を覗かれるのを警戒している奴のようじゃの。
かなり注意深く身を隠して生きてきた奴じゃの。」
「そんな注意深い奴がどうして『ひだまり』に侵入して凛の制服を盗み出すなんて大胆な事を…リリーのように鋭い悪鬼がいる事も判っていたはずだよね?」
「彩斗、わらわにも良く判らんじゃの…。
女性の服にそこまで執着した行動を何故奴が…。」
「ともかく後をつけましょうよ。」
真鈴がそう言って奴の追跡を再開した。
奴は暫く走り、大きな総合病院に自転車を停めて入っていった。
俺達も病院に入ろうと思ったが、何か不測の事態が起きた時に病院を戦場にする事は避けたい。
しかし、病院の中では様々な意識が飛び交って中々奴を探し出せないとはなちゃんがため息をついた。
「やれやれ、病院と言う所は凄いじゃの!
まあ、色々と苦しんでいる者や悩んでいる者が大勢入っているから仕方ないのじゃが。」
そこで四郎がカラスに変化して窓から病院内を探る事にした。
ハイエースから飛び立ったカラスの四郎がやがて戻って来た。
「奴は病室で若い女性に面会して花束と紙袋を渡したぞ。
すぐまた様子を見に行く。
待ってろ。」
カラスの四郎がまた飛び立っていった。
俺達は念のために戦闘服に着替え装備を身につけて四郎を待った。
続く




