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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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ハロウィーンキャンペーン初日は大騒ぎになった…俺も加奈達とチェキ撮りたかったな…浮気じゃないよ。

「ただいま開店です!

 いらっしゃいませ~!」


俺と四郎が個室から店内を見ていると入り口で勢ぞろいしてお客達を迎えている加奈達、ハロウィーン制服の破壊力マシマシのエロ可愛い制服姿に入店してくる男の客たちは皆、オウッフ!と声を上げて少し前かがみになり、女性客達は加奈達の制服を見て可愛い~!と声を上げていた。


さすがハロウィーンと言う事も有り、時折コスプレした客も混じっていた。

ハロウィーンの飾りつけをした店内は華やかでいて和やかな雰囲気になった。

店内の席はすぐに埋まり、幸いにこの季節でも暖かかったのでテラス席と駐車場に設けた席にお客を誘導して個室はまだ使えそうだった。

紅い瞳の加奈達は笑顔を浮かべながらも忙しく立ち回っていた。

とりあえず大成功と言って良いだろう。

俺と四郎は自分でとって来たコーヒーを飲みながら時折店内を見た。

やがて明石がやって来たが、すぐに真鈴がやって来て明石にキッチンを手伝ってほしいと言い、明石は苦笑いを浮かべて顔を振りながらキッチンに入っていった。


「これは俺達の出番もあるかも知れないな。」

「四郎、ハロウィーン期間はあの悪鬼を探る暇が無さそうだよ。

 どうする?」

「う~ん、これでは俺達の動きが取れないな。

 とりあえず夜は交代であの現場に誰かが言って監視するしか無いな。

 誰かが夜に張っていれば殺人自体は食い止めることはできるだろう。

 どうせ殺す時はあの場所なんだからな。

 致し方あるまい。

 ハロウィーン期間中に奴らが行動を起こさない事を願うばかりだな。」


やがて、個室にも客を入れないと収拾がつかないと言う事で、俺と四郎は2階の広間に移った。

リリーがお替わりのコーヒーを持って来てくれた。


「リリー、どうする?

 手が足りないならわれらも手伝うぞ。」


四郎が言うとリリーは淫靡な赤い瞳で笑顔を浮かべた。


「ありがとう、でも大丈夫よ四郎。

 小三郎たちに後で好みの子と一緒にチェキを撮らせてあげると言う条件でキッチンに入ってもらったからね。

 結婚式の料理の準備の応援の予行演習も兼ねて丁度良いかも知れないわ。」


リリーがウィンクをして店に降りて行った。

なるほど、結婚式当日に新郎のクラをキッチンに入れる事は防げそうだった。


「どうやら大丈夫のようだな。

 さて、俺達は穴掘りをするか?」

「そうだね四郎。」


俺達は1階に降りて店内の様子を見ながら『ひだまり』を出た。

隣の中華料理屋の大将とその息子がデレデレした表情で加奈達を見つめテラス席でコーヒーを飲んでいるし、岩井テレサの所の榊まで席に着いていた。

榊は自分の視線を隠すためかサングラスをしていた。

大将とその息子も、榊も俺達を見ると少しはにかみながら手を振った。

お客の中に岩井テレサの騎兵隊と違う悪鬼も何人かいたがどうやら素性が良い無害な悪鬼のようで安心した。

俺と四郎は笑いを堪えながら死霊屋敷に戻り、穴掘りを始めた。


かなり時間を掛けて掘ったが俺と四郎でも数メートル進んだくらいだった。

ここで掘るのを中止して落盤防止の梁を設けて鉄筋入りのコンクリートを流し込まなければならない。


「四郎、これ、結構時間が掛かるよね~!」

「うむ、彩斗、仕方ないな。

 それにある程度掘り進めるたびに方向があっているか調べないといけないしな。」

「う~ん、俺達はやる事山積みだよ~!

 結婚式も近いしね~!」


四郎が廃土を一輪車に乗せながら急に叫んだ。


「おお!忘れていたぞ!

 この前ブーケや飾りつけの花を頼んだ人がな、現地を見たいと言っていたのでこれから迎えに行ってここに連れて来なければならんのだ。

 たまには真鈴のボルボを借りるかな?

 という訳で彩斗、少し留守番を頼むぞ。」


四郎はシャワーを浴びて土の汚れを落としてボルボで出かけた。

俺もシャワーを浴びてすっきりすると少しのんびりしようと思ったが、どうもトレーニング漬けの毎日で体を動かさないと落ち着かない。

そこでガレージ地下で射撃練習をして屋根裏で槍の練習をした。

我ながらかなり射撃の腕は上達したと思うが、悪鬼相手なので致命部にワンホールに収まるように射撃を繰り返さないといけない。

頭か心臓を完全破壊しなければならないので人間相手ならまだしも悪鬼相手ではまだまだ練習を積まなくては。


「彩斗、皆が出払っていて暇じゃの~!」


はなちゃんが屋根裏に上がって来た。

どうやら少しアニメにも飽きたらしい。

はなちゃんは最近自然関係のドキュメンタリーも見始めている。


「はなちゃん、念動力の方はどう?

 細かくコントロールできるようになった?」


俺が尋ねるとはなちゃんが手を上げた。


「なんじゃ彩斗、かなり練習したからな。

 前とは大違いじゃの!」

「それじゃ、これを浮かせて動かせる?」


俺が天井から吊るしてあるゴルフボールを手に取った。

槍の練習を重ねてかなりの確率でゴルフボールの中心を突ける様になった俺はもう少し高度に複雑に動く物を突く練習をしたかった。


「お手のものじゃの!」


はなちゃんはゴルフボールを浮かせると複雑に動かせ始めた。


「ああ!そんな感じだよはなちゃん!」


俺ははなちゃんが浮かせたゴルフボールを相手に槍の練習をした。

これは真鈴達、他のメンバーの練習にも使えると実感した。

小一時間ほど良い汗を流してはなちゃんにお礼を言ってから俺はまたシャワーを浴びた。


シャワー上がりの俺はプールサイドのチェアに寝そべって空を見上げた。

月が青空に浮かんでいた。


もしかしたらジンコはあそこに行くのか…岩井テレサの組織も月に注目しているし、もしかしたら月には本当にいろいろな疑問の答えが隠されているかも知れない。

真実の探求に力を入れているジンコなら当然月に行けるとなれば志願するだろうなと思った。


地球の成り立ちから人類の成り立ち、いや、人類と悪鬼との関係など…。

俺はあの外道の化け物に精神を取り込まれたはなちゃんが見た光景を思い浮かべた。

あの、様々な時代の身分の民族の子供達を引き連れて草原の丘に昇った、あの、男か女か、子供である事さえ判らない美しい存在が月を、今まではなちゃんが見た事の無い姿の月を指し示して『君達が選べるんだよ』と言った事を。

そして、圭子さんがもしも神のような存在が地球を人類に任せた今の世界を見たら絶対に不合格だと言った事も…。


人生に絶望だけしか持たず、しがないブラック企業の社畜としてほぼ惰性だけで生きて来た俺だったが、その時の俺には絶対に想像できないありとあらゆる疑問を今の俺は心に抱えている。


様々な疑問、希望、恐れ、やるべきことは何だろうと考える事…そして自分が生きている意味とは…。

これがあらかじめ定められている事だったら…昔からは考えられない何か得体の知れない大きな流れに流され始めている俺なのかも知れない。


空に浮かぶ月を見つめながら俺はそら恐ろしくなった。


やがて司と忍が帰って来た。

俺は圭子さんに頼まれていたのでおやつを出してやり、何か面白い事がしたいと言う司と忍の為に屋根裏ではなちゃんにゴルフボールを浮かせてもらい。長めの紙の棒で司や忍にボールを叩いてごらんと言った。

始めは顔を見合わせて戸惑っていた司と忍だったが、やがて夢中になってゴルフボールを追いかけて紙の棒で叩こうと奮戦した。


成る程、子供は夢中になるからこういう練習も身が入るのだろうなと思った。

加奈も6歳の頃から、練習を始めて人間離れした強さを身につけていた。

殺された家族の復讐の意味もあるが、やはり子供ならではの呑み込みの速さと言う物も集中力もあるのだろう。


司と忍の紙の棒の扱いの上達具合は凄い物があった。


午後遅く、『ひだまり』が一段落落ち着いたので明石と圭子さん、ジンコと真鈴が帰って来た。

どうやら、希望者は店員が少し手の空いた時間なら一緒にチェキを撮れると言う企画で客達が大盛り上がりをしたそうで圭子さん達は忙しい間を縫って客達と一緒にチェキを撮り、交流したそうだ。


「まったく、アイドルってああ言う感じかしら~!

 結構重労働よね~!

 隣の中華料理屋の大将と息子さんが加奈達と顔を赤くしてチェキを撮っていたけど、家庭不和にならないだろうね~?

 私も大将からお願いされて一緒に撮ったけどね。

 まぁ、結構面白かったけど、あれを毎日何年もなんて御免だわ~!」


圭子さんが自分の肩を叩きながらぼやいて、真鈴もジンコもため息をついて頷いた。

スコルピオからの応援もあるので圭子さん、真鈴もジンコも交代で休めるとの事で安心した。


四郎がボルボで小太りの花屋の店員を連れて死霊屋敷に帰って来た。

店員は久保さんと言う人で、死霊屋敷の内部を感嘆としたため息をつきながら、結婚式を執り行う暖炉の間やそこに続くはなちゃんの書斎や玄関ホール、プールなどを写真に収め、また四郎と共にボルボに乗って披露宴を行う『ひだまり』に出掛けて行った。


そうなのだ、ハロウィーンキャンペーンが終わって2週間で今度は結婚式を行うのだ。

う~ん、俺達は忙しい。

そして俺は明石と共にまた穴掘りを再開した。

あとから真鈴とジンコも廃土を運んだりと手伝ってくれた。







続く



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