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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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『陽だまり』から帰るとジンコ先生のプール教室が行われて、四郎先生のお料理教室が始まった…俺も無邪気なガキに戻りたい!

ノリッピーが人差し指で顎を撫でながら考え込んだ。

考える時の癖だと言う事だ。


「確かにうちの者では無さそうだし…考えられるのは対立勢力の者か…後は我々にも関知していない新しいフリーランスが質の悪い別物を討伐しようとしている者か…或いはその別物を自分達の勢力に取り込もうとして接触を図ったのかも知れんな…今の情報量では憶測しか出来んね。

 軽々しく敵とばかりは言えないし、かといって、味方になる存在かもなどと希望を持つ訳にも行かんね、まぁ、ワイバーンには討伐目標と決まったその別物の調査特定を進めながらもその正体不明の別物に注意してもらうとしか…言えないね。」

「ノリッピー、あの横浜の物流倉庫を根城にしている正体不明の集団の一人ではないですか?

 現にあの集団が千葉で質の悪い悪鬼を討伐しているのを真鈴と加奈とはなちゃんが目撃しています。」


俺は言うとノリッピーはまた難しい顔をした。


「ああ、彩斗君、その可能性も無い訳じゃないよね。

 あれから岩井テレサの直属調査班が探って入るんだけど、まぁ、人手不足で奴らの動きを全部把握していると言う訳でも無いしね。

 しかし、問答無用で攻撃をしてきたわけじゃないし向こうも彩斗君達を探った末に戦う事を止めて立ち去ったんだろう?

 今の所話し合いの余地はあると追う事だね。」


今日出会った正体不明のとてつもなく強い悪鬼の正体についての事の結果は出ずじまいだった。

ノリッピーは帰り、リリーはこのあと四郎と結婚式のブーケや飾りつけの花の事で一旦死霊屋敷に戻ってから出かけるとの事だった。

俺達は死霊屋敷に戻った。


「それにしてもスコルピオから調理の応援が来てくれることはありがたいな。

 クラも当日は新郎だから厨房でこき使う訳にいかんからな。」

「そうだね景行、下手にケータリングを頼んでも味にうるさくて大食らいの悪鬼の客が多いからがっかりさせたくないし、悪鬼の味覚を知っているスコルピオの応援はありがたいね。」


俺達が死霊屋敷のガレージに車を停めて玄関に向かうとプールから笛の音が聞こえた。


「はい!時間だよ~!

 みんなプールから出て休憩~!」

「は~い!ジンコ先生~!」


ジンコのきびきびした声を子供達の返事が聞こえた。

俺達は微笑みを浮かべて顔を見合わせた。


キッチンでは圭子さんが数人の母親達に何やら料理を教えていた。


「そうよね。黒い豆を煮込むと一見お汁粉みたいな感じに見えるけど、これは塩味のれっきとした料理だから、口に合うと思うわ…カレーライスの要領でご飯にかけても良いし…新しいお料理のレシピのレギュラーメンバーになると思うわ…あら、本場の先生が戻って来た!

 四郎!

 あのアメリカ南部の黒豆と肉の煮込み料理を作ってるのよ!

 ちょっとコツがあったら教えて~!」


圭子さんが四郎の手を引いて引っ張って行き、母親たちは笑顔で宜しくお願いしま~す!と笑顔で言った。


「ちょちょ!

 われはこれからリリーと花の事で…。」

「良いじゃない四郎、ついでにケイジャンスパイスの調合とかも教えてあげれば?

 あれは色々な料理に使えるわよ。

 私は四郎のお手並み拝見するわ。

 少し行くのが遅れても大丈夫よ。」


リリーが笑顔で腕を組んで壁に寄りかかった。

四郎が仕方ないなと苦笑いを浮かべて腕まくりをして手を洗い始めた。


「さてさて奥様方、本場南部の煮込み料理のコツを伝授うしようと思いますぞ。」


やれやれ大変だと俺達は四郎とリリーをキッチンに残して暖炉の間に戻った。

書斎から外に出る窓からプールが見える。

雨が降った時も濡れずにプールまで行けるように屋根付きの通路が付いている。


スクール水着姿のジンコが頭に水泳帽をかぶり首から笛を下げてプール休憩中の子供達に取り囲まれていた。

書斎の椅子からプールを見ていたはなちゃんが小声で俺達に言った。


「やれやれ、ジンコは先生向きじゃの!

 わらわとジンコでプールで遊ぶ子供達の面倒を見ておるのじゃ!

 もっともわらわの事がばれたらいけぬのであまり大声は出せんじゃの!」


成る程ジンコがいてはなちゃんがバックアップすれば子供が溺れるなど事故は起きないだろう。

子供たちがプールサイドのテーブルに並べられたお菓子を食べたり飲み物を飲んだりしながらジンコの周りではしゃいでいた。

うん、確かにジンコは子供に人気があるな。


確かに先生の素質があるかも知れない。

真鈴はガサツな所があって怖がる子供がいるかも知れないし直ぐムキになるからつまらない事で子供と本気でけんかを始めるかも知れないし、加奈はその恐ろしい身体能力で子供の体力レベル以上の事を笑顔でさせかねないし、凛は一見気弱そうに見えるから子供に舐められるかも知れない。

ジンコが笑顔を俺達に向けた。


「あら、彩斗達帰ったんだ!」


そしてジンコは防水性腕時計を見た。


「はい!休憩時間終わり!

 気分が悪い子はいないわね?

 もう一回遊んで良いわよ!」

「はい!ジンコ先生!」


子供たちは口々に答えながら再びプールに入って遊び始めた。

ジンコはプールから目を離さずに尋ねた。


「それで今日、彩斗達は打ち合わせは順調?

 さっきはなちゃんから正体不明の凄く強い悪鬼と出会ったと聞いたけど…。」

「うん、その事なんだけど、今日の夜にみんな集まってから話そうと思うよ。

 それにしてもジンコは本当に先生に向いているかもね~!」

「ええ、そうかな~!

 まあ、大学の講義で結構殺伐とした事を勉強しているから良い気分転換かもね~!」 

「ジンコ先生も早く~!」

「一緒に遊ぼうよ~!」


子供たちが口々にジンコを呼んだ。


「やれやれ、少し相手をしてくるわ。

 彩斗、外は少し寒いからプールを終わったら子供達とお母さん達を車で家まで送ってあげてね。

 風邪でも引いたら大変だからね。」


ジンコはそう言ってプールに入り、子供たちが飢えたピラニアのようにジンコに殺到した。

子供は無邪気で良いな~と思いながら見ていた俺だが、スクール水着のジンコに抱きついてはしゃげるのが羨ましく思った。

俺は今はユキと言う恋人がいるからある程度余裕をもって見れるが、最初にジンコを見た時は凄い気にはなった。

だが…あの地獄のような凄い寝顔と寝言…男に恵まれないジンコを可哀想にも思った。


ああ!あのガキ!どさくさに紛れてジンコのお尻に触ってる!

あああああ!あのガキもどさくさに紛れてジンコの胸を鷲掴みに!

ひぃいいいい!ジンコが無邪気を装ったガキどもに集団痴漢行為をされてる!

ああああ!

なんて羨ましいんだ!

チキショウ!俺も子供に戻ってジンコ先生のオッパイやオケツに!

思い切り~!

ジンコ!何故笑顔なんだよ!

何故笑顔で次々と伸びてくる卑猥な手に無抵抗に触らせているんだぁ!

ジンコは集団で弄ばれるのが好きなのかぁ!

ジンコは淫らでスケベな女の子!

この!この!いやらしい女の子がぁ!

俺も仲間に!

俺も仲間にぃ!

ジンコ先生~!


「やれやれ、彩斗の頭の中には脳みその代わりに金玉が詰まっているじゃの~。」


はなちゃんが呆れたように呟き、明石が必死に笑いを堪えていた。

俺はもっといろいろな本を読んで思念が零れ出ないようにしようと思った。


その後、子供達のプールも終わり、お母さん達も料理をしっかり習ったようで俺達はそれぞれ車で家まで送り届けた。

ランドクルーザーに乗った俺とジンコは先ほどジンコの胸を鷲掴みにしたガキとそのお母さんを載せて家まで送り届けた。

お母さんは四郎と圭子さんから習った煮混み料理の鍋を持ってニコニコ顔だった。


「ねぇ~、ジンコ先生って彼氏がいるの~?」


後席のガキがとんでもない事を言い、俺はハンドルを握った手に力が入った。


「こ~ら、失礼な事聞いちゃ駄目でしょ。」


お母さんが苦笑いを浮かべてガキをたしなめた。


「いいえ、大丈夫ですよお母さん。

 私は今彼氏はいないわよ~!」


ジンコが笑顔で答えると、ガキは顔を真っ赤にしてしばらく沈黙した。


「それじゃ、ジンコ先生!

 俺のお嫁さんにしてあげるよ!」


ガキがとんでもない事を言い、ハンドルを握った俺の手が震え、少しランドクルーザーが揺れた。


お母さんが鍋の蓋を必死に抑えたので零れずに済んだ。


ジンコもお母さんもガキの無邪気なプロポーズに大笑いしていた。


「そうね~!

 それじゃあなたが大きくなってジンコがまだ一人だったらお嫁さんにしてもらおうかな~!」


ジンコが笑いながら答え、ガキの笑顔がはじけた。


「うん、良いよ!

 ジンコ先生をお嫁さんにしてあげる~!

 浮気しちゃ駄目だよ~!」


…無邪気なガキの破壊力…きぃいいいいい!

何故かユキと言う素敵な恋人がいる俺だが少し羨ましかった。








続く




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