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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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プールと明石一家の家と喜朗おじと加奈の家が完成したが、俺達はもう一つ大事な物を作らなければならなかった…まぁ、今日は引っ越しパーティー!

プールが完成した。


俺達はプールに水を入れて給排水のチェックをした。

新しく太陽光発電の機械を取り入れてきちんと温水が出ることも確かめて、俺達は、特に司と忍は狂喜乱舞して喜びを爆発させていた。


勿論その晩はプールサイドにテーブルを並べて夕食を摂った。

明日は明石一家の家も喜朗おじと加奈の家も完成して引き渡しが行われる。


俺達は夕食を摂りながら、多摩山中で殺人を行う5匹の悪鬼の調査の報告を聞いたが、今までよりもよほど用心深い悪鬼は中々尻尾を掴ませなかった。

辛うじておおよその住居を特定できた1匹の悪鬼でさえもここに住んでいると特定する事も難しかった。


やれやれと俺達がため息をついていると明石が新たに敷地の地図を持ち出してきた。


「さぁ、これで一段落と言いたいところだがな。

 あともう一つ、俺達はやらねばならん事が有るんだ。」


新居への引っ越しや結婚式も控えていて、大忙しの俺達なのだが、まだ何か?と言う気持ちになった。


「景行、まだ何かやらなきゃいけない事?」


俺が尋ねると明石がニヤリとして地図を指差した。


「そうだ、彩斗。

 俺達の家も、喜朗おじと加奈の家も地下で繋がっているだろう?」

「そうね、いざと言う時に、万が一襲撃を受けた時に安全に行き来できるように絶対に必要だと景行は言っていたものね。」


真鈴が答えた。


「そうだな真鈴、これで死霊屋敷と俺達の家とガレージは地下で繋がった。

 相互に支援しながら防衛できるようになったと言う訳だが…最後の最後の詰めがもう一つ必要なんだ。」

「景行、其れは何なんだろう?

 最後の詰めってさ。」


真鈴が問うと明石と四郎、喜朗おじが顔を見合わせて頷いた。


「真鈴、皆も聞いて欲しいんだがな。

 もう俺と四郎、喜朗おじとで話し合って矢張り絶対に必要だと言う事になったんだ。

 それはな、いざと言う時に最後の最後にここから安全に逃げ出すための秘密の通路なんだ。」


なるほど、明石の言いたい事が少しわかった気がする。

前に明石はどんな堅城でも難攻不落に思えても必ず落城する可能性があると言っていた。

そしていざここを捨てなければならないと言う時にどの方向に逃げるのか敷地と隣接する土地を歩いた時に岩井テレサの土地に眠る未だに良く正体が判らない大きく力が強い存在が眠る巨石を見つけた。

そこまで逃げ延びるための許可が欲しいと岩井テレサと接触して同盟を組むことになり、俺達は第5騎兵ワイバーンとなったのだった。


「景行、其れはあの岩井テレサの敷地の巨石まで逃げる通路と言う事?」

「さすが、すっかりリア充になった彩斗だな!

 その通りだ。まぁ、これを見てくれ。」


俺達は明石が広げた地図を覗き込んだ。


「屋敷からあの巨石まで避難するのにかなりの距離があるのは判るだろう?

 あの距離をな戦いの混乱の中で、ましてやここを捨てる程の敗勢で俺達が司や忍、怪我をしたメンバーを引き連れてあそこ迄撤退するのは、今の状況では非常に難しいんだ。」


明石の言葉に皆が頷いた。


「そこでだ、ここからここまで…。」


明石の指が死霊屋敷から岩井テレサの敷地まで滑って行った。


「秘密の、俺達最大の秘密の地下道を掘ろうと思う。

 死霊屋敷から岩井テレサの敷地の境界線ぎりぎりまで、そして地下道の出口に小さいが頑丈な小屋を作る。

 こうすれば安全に襲撃してきた奴らに気付かれずに俺達はあの巨石まで辿り着けて、岩井テレサの小屋に置いてある非常用の物資を抱えてとんずら出来ると言う事だ。」


成る程~!と皆が頷いた。

圭子さんが疑問を口にした。


「景行、其れなら業者がいる時に同時に工事を進めたらよかったのに…。

 それなら今頃完成してるじゃないのよ。」

「圭子、初めはそうしようと思ったんだがな。

 だが、これは俺達だけが知っている絶対秘密の通路にしなければならんのだ。

 業者も関係させたくないし、図面も残せないんだ。

 今ここにいる俺達だけの秘密にしなければならないんだよ。

 やっと工事が済んで工事関係者たちが全員引き上げた後でな、俺達だけでこのトンネルを掘る必要が有るんだ。

 秘密がばれる隙を一切出さないためにな。」

「うむ、この通路は今までの物と違って絶対の秘密にしなければならないと、われ達も思ったのでな。

 景行の言う通りだと思うぞ。」


明石と四郎の言葉を聞いて俺達は納得した。

どんなに秘密を守る業者だとしてもそこから情報の漏れが出る可能性は全く無いとは言えない。

喜朗おじが言った。


「それにこれは厳密に言うと違法建築になるがしょうがないんだ。

 法に沿ってこの通路を作るとなると役所などに届け出が必要になるかも知れんからな。

 そうなれば図面なども提出せねばならなくなるんだ。

 だからこれは俺達が業者を一切入れずに工事をする必要があるんだ。」


成る程確かに。


「そうね、そう考えたら私たちだけで掘るしか無いわね~。」


ジンコがため息をついた。


「穴掘りですか~!

 大変そうだけど生き残るためには仕方ないですね~。

 『ひだまり』からここまでトンネルも掘って欲しいくらいですけどぉ~。」


加奈が頬杖を突いて呟いた。


「加奈、そうしたいのはやまやまだがな、しかしそれは物理的に無理な相談なんだ。

 まあ、とりあえずこの秘密の通路を作ればいざと言う時にもここは万全な要塞となる。」


明石がそう言って煙草に火をつけた。


「もっとも、映画で銀行強盗が銀行の地下まで掘る様なちゃちなトンネルにする気は無いぞ。

 やる以上はどんな大きく重い物が乗っても穴が崩れないように頑丈な造りにしないといけないしな。

 とても時間が掛かるが、これは絶対に必要だ。」


俺達は家の引き渡しなどが済み、工事関係者が全部引き上げた後に早速工事に取り掛かる事に決めた。

やれやれ、忙しい事には拍車が掛かったな。

だけどこれは俺達が生き延びるための事でしょうがない。


翌日、明石一家の家と喜朗おじと加奈の家が完成して引き渡しも完了した。


俺達は新居を見て廻り、一見開放的で快適な造りだが随所に防御のために工夫が施されて実は見た目と違う小要塞である造りに満足した。

早速引っ越しで大騒ぎになった。

『ひだまり』も定休日で、真鈴もジンコも大学を休んでワイバーン総出で引っ越しをした。

その時始めて『ひだまり』2階の喜朗おじの部屋に入ったが…初めて見た喜朗おじの部屋は物凄いヲタクパラダイスだった。

何故か長髪のズラを被ってバンダナを巻いた喜朗おじは俺達にあまりじろじろ見るなよ~!とか、これは凄くレアなものだから扱いにとても気を付けろなどうるさかった事にいささか閉口した。

しかし、長髪のズラを被りバンダナを巻いた喜朗おじは『ひだまり』に巣くうスケベヲタク死霊軍団の一つのリーダーの暗黒の才蔵にそっくりで俺達は笑いを堪えるのが大変だった。

喜朗おじが拙者は!なんて言ったら膝から崩れ落ちて笑い転げてしまうだろう。

クラも同じようで軽い物を持って運んでいても顔が真っ赤になって必死に口を引き締めていた。

クラと凛が時々、これで夜二人きりだねと小声で囁き合って微笑んでいた。

クラと凛は新婚夫婦だから仕方ないと思いながらも、ちきしょう、俺も死霊屋敷のそばに別宅を作ってユキと住みたいと思ってしまった。


昼ご飯を作る暇が無かったので『ひだまり』の隣の中華料理屋に出前を頼んだ。

大口の注文にホクホク顔の大将が息子夫婦と共に料理を運んできてくれた。

今まで一度も死霊屋敷を見ていなかった大将に軽く屋敷近辺を案内すると大将は驚きの声を上げていた。


「こりゃあ、最高の場所だな~!

 プール迄あるのか!

 あんた達凄いんだな~!

 あんた達のお陰でうちもかなり繁盛してきたから感謝感謝だよ!

 俺もいつかこんな家を作りたいぜ!」


大将の言葉に息子夫婦も目を輝かせてうんうんと頷いていた。

別に見せびらかした訳じゃ無いが、俺達も気分が良かった。

だが実は開放的に作られている家だが知恵を絞って難攻不落の要塞になっているのだが…。


引っ越しは順調に進み、午後遅くには完了して俺達はプールサイドでコーヒーとおやつを楽しんだ。

司と忍は早速水着に着替えてプールではしゃいでいた。


温室の様な天井と壁に囲まれたプールはいささか肌寒くなって来たこの季節でも暖かく快適だった。


明日、司と忍は友達を連れて来てプールに入りたいとせがみ、圭子さんが苦笑いを浮かべながら良いわよと言うと司と忍の笑顔がはじけた。


そして俺達、明石と四郎と喜朗おじとクラは死霊屋敷の旧ボイラー室に入り、どの場所から穴を掘り進めるか協議した。


トンネルは幅高さをともに2・5メートルとして一直線に岩井テレサの敷地に向かって掘るのではなく、多少ジグザグに、追っ手の追撃を所々で食止められえる造りにしなければならない。

喜朗おじがトンネル掘削用の機材を幾つか見積もって持ち込むことにした。

トンネルを掘った廃土なども運び出さなければならないし落盤防止のために強化しながら掘り進めなければならないので大変な作業になりそうだ。


プールに戻ってくると、司や忍の他の女性陣が皆、水着を着てプールに入りはしゃいでいた。

加奈もこのメンバーなら体の傷を見られても大丈夫だ。

皆で弾けるような笑顔を上げて、はなちゃんも服を脱いで小さな浮き輪に乗ってプールにぷかぷか浮かびながら喜んでいた。

俺がその光景を見ていつか近いうちにユキを連れてきたいと思い、深夜のプールであれこれ楽しむ想像をし始めた途端に四郎が俺を肘でつつき、明石がゴホンと咳払いをして、喜朗おじがニタニタと笑みを浮かべた。


「彩斗、俺達もプールに入ろうと思ってるんだ。

 今はそれを止めろ。

 俺達の下半身がとんでもない事になるかも知れんからな。

 水泳パンツだと一発でばれてしまうじゃないか。

 女性メンバー達や、ましてや司や忍にはとても見せられんぞ。」


四郎が小声で俺に囁き、俺は何とかエロスケベ思念を抑え込んだ。


それから俺達も水着に着替えてそのままプールサイドで引っ越し完了パーティーになった。


「ああ、ここにリリーがいればな~。」


四郎がプールサイドの椅子に座って呟いた。

俺も全く同意見だった。

ここにユキが居ればな~。


俺と四郎は同時にため息をついてソルティドッグを飲んだ。








続く




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