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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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ワイバーンは快くユキを受け入れてくれた…そしてユキは俺の恥ずかしい事を、あの未だに知られていない2個と2分の1の事以外全てを知ってしまった。



俺はクラから『ひだまり』の制服セットが入った紙袋を持って心の中でドドスケドドスケドドスケベ~!と歌いながらランドクルーザーの後部席に紙袋を置いて運転席に乗り込んだ。


「あら?彩斗、その紙袋は何?」


ユキが尋ねたが俺は適当にいや、頼まれ物だよ~!と胡麻化した。

うひひ、サプライズサプライズ、今晩はユキにドスケベサプライズだぁ!


俺とユキが死霊屋敷に着くと何故か皆が、学校から帰って来た司や忍、大学から帰って来た真鈴とジンコと真鈴の腕に抱かれたはなちゃんが総出で玄関に並んでいた。


皆は、全然女子にモテない、女子に縁が無い息子が初めて女子の友達を家に連れてくる家族の様なニタニタ笑いを顔に浮かべて並んでいた。

司や忍までが…。


「わぁ、なんか皆勢ぞろいね。」


ユキが無邪気な笑顔で言った。


「う、うん、そうだね。」


ユキは全員に挨拶をされて暖炉の間に通された。

何か良い匂いが暖炉の間にまで漂って来ている。


「今日はね、ユキちゃんが遊びに来るからごちそうを作ろうと思ってね!

 私も景行も四郎も張り切っているのよ!

 どうぞゆっくりして行ってね!

 自分の家のように寛いで。

 私、お鍋の様子を見なきゃ、ほほほ。」


圭子さんがはち切れそうな笑顔でキッチンに行った。


「はい、あの…ありがとうございます。」


ユキが圭子さんに言った。

暖炉の間に残された俺とユキは先ほどのニタニタ笑顔で四郎達に見つめられて少し落ち着かなかった。


「あ、これを部屋に持って行くから

、ユキは皆と話していてね。

 すぐに戻るよ。」


俺は紙袋を持って2階の自分の部屋に行った。

紙袋を置いて部屋を出ると目の前にジンコが立っていた。


「わ!なんだよジンコ、びっくりするじゃないか。」

「彩斗に聞いておきたい事が有ってね、彩斗はどの辺りまでユキちゃんに話したの?」


ジンコはそう言ってじっと俺を見つめた。


「え?いや、四郎を復活させてから今までの事を…ワイバーンとして活動を始めたりとか…。」

「バカねぇ~!

 そんな事は判っているわよ。

 私が聞きたいのは彩斗がユキちゃんと付き合うまで32にもなって2回と4分の1野郎でメンバーから罵られたり、嘲笑われたり、鯨女顔面鷲掴みキス拒否られ事件で数日間ひょっとこ顔になったり、ぴょん吉のブーツを真鈴のブーツと間違えて鼻を突っ込んで匂いを嗅いでモテない男が良くやるような変な事したり、おでことお尻とあそこに変な落書きされてアナルに花火を差し込まれて火を点けられて泣き叫んでおしっこ漏らしながら校庭を走り回って金玉が2個とも焼け落ちたりとか…。」


ああああ!やっぱりやっぱりやっぱり!ジンコの俺の悲惨な経験の記憶もなんか面白くて悲惨な方向に変質しているよ!

金玉が焼け落ちたってどういう事だよ!

また生えて来たとでも言うかよ!


「いや、ジンコ、その方面の事は言ってない。」


俺はぴしゃりと言って暖炉の間に戻った。

ユキはソファのクッションを胸に抱えてじっと四郎や景行の顔を見つめていた。


「彩斗…凄いね…明石さんも四郎さんも本当に…悪鬼…なんだ。」


ははあ、景行と四郎がユキに悪鬼顔を見せたんだな。


「ユキ、びっくりした?

 驚かせたかい、怖くない?」


俺はユキの隣に座りながら尋ねた。


「ううん、びっくりしたけど大丈夫よ。」

「そうか、良かった。」


四郎が笑顔でコーヒーを飲みながら言った。


「いやあ、ユキちゃんに本当の姿を見せておかないとなと思ったんだ。」


明石がやはり笑顔でユキを見ていた。


「それにしてもユキちゃんは度胸があるな。

 俺も初めは驚いて逃げだしたりしないか少し不安だったんだが。」

「いえ、明石さん、確かにびっくりしたけど大丈夫です。

 だって彩斗の仲間なんでしょ?」

「その通りだユキちゃん。

 そしてな、俺達は圭子やはなちゃんを以外、皆、下の名前を呼び捨てで読んでいるんだ。

 ユキちゃんもそうして良いぞ。」

「そうなんだよユキ、俺達はその辺りは緩い感じなんだよ。

 戦闘の時なんかその方が面倒くさくないからね。」

「そうなんだ、判りました。

 え…景行さん。」

「景行と呼んで良いぞユキちゃん。」


それから少し雰囲気が柔らかくなったようでユキは色々と俺達に質問した。

明石が戦国武将の明石全登の息子で440年も生きていて、現代までに日本が経験した殆どの戦争に従軍したりとか、岩井テレサの施設のカフェテリアで出会ったポールが四郎と別れて四郎が一人棺に入った話とか、あの子供殺しの外道の事、廃ボーリング場の事、富士樹海地下での創始者と名乗る物が率いるアレクニドとの戦闘の事、そして今は『ひだまり』で働いている凛が元々は俺達の討伐の標的になっていたが、加奈が命を助けて、その後クラと共にワイバーンメンバーになり、裁判所で俺とジンコの命を救ったりした事など、その他さまざまな悪鬼との戦いや岩井テレサと同盟を組んだり四郎とリリーが160年ぶりの再会をしたりした事など色々と細かく話した。

ユキは興味津々で話を聞いていた。

俺達もユキに話しながら色々な事を潜り抜けて来たんだなと感慨にふけった。


「やれやれ、これで。わらわもユキにロボットじゃと噓をつかんで済んだじゃの。

 めでたしめでたしじゃの。」


はなちゃんが手を上げて言った。

真鈴がはなちゃんの頭を撫でた。


「そうねはなちゃん。

 良かったわね。」

「あの…はなちゃんは本当に1026歳なんですか?」

「そうよユキちゃん、はなちゃんはメンバーの中で一番年をとっているわ。」

「あいや、ユキ、わらわは1026歳と同時に6歳じゃからの。

 何も遠慮する事は無いじゃの。」

「あ、はい。」


ユキが感心したため息をついていた。

四郎が腕時計を見た。


「おお、そろそろ夕食の準備に仕上げをしなければならんな。

 真鈴達も今のうちにナイフトレーニングをしておけばどうだ。

 喜朗おじ達は『ひだまり』で夜の賄を済ますと言っていたからな。」


俺と真鈴とジンコ、そしてキッチンの圭子さんが明石と四郎と交代して屋根裏でナイフトレーニングと槍の練習を行った。

俺達の動きの素早さと休みなく動き続ける体力にユキは驚いていた。

トレーニングが一通り終わった。


「今晩のトレーニングは終了だよ。

 ユキ、どうだった?」


俺が汗を拭きながら尋ねるとユキは驚いた口調で答えた。


「凄いも何も…凄すぎるわよ。

 私、オリンピック選手のトレーニングとか実際に見たことあるけど…それと比べても別の次元だわ…。」


真鈴もジンコも汗を拭きながらユキに微笑んだ。


「うふふ、ユキちゃん、加奈はもっと凄いのよ。

 私たちでも今でも5回に1回勝てるかどうかってほど速いわよ。

 凛も最近は凄く敏捷になって来てね。

 動きだけ見たらもしかしたら加奈よりも早くなっているかも。」


ユキはさらに驚いて沈黙した。


「うふ、ジンコも最初は凄く驚いていたわよね~!」


真鈴がジンコに笑いかけた。


「真鈴そうね、最初は私も凄く驚いたわ。」


ユキがため息をついた。


「でもジンコさんが結局ワイバーンに参加したのは凄いと思うわ。

 私も彩斗達の活動は凄いし人類を守る為にと言うのは判るけど…私にはとても無理だもの…なんか情けない…。」

「ユキちゃん、いや、ユキ、もうね、さん付けしなくて良いわよ。

 私の事はジンコと呼んでね。

 それに、恥ずかしがることは無いわ。

 普通の人間だったらそう思うのが本当だと思う。

 私はただ好奇心が強すぎただけだと思うわ。」


ジンコがユキの肩に手を置いて慰めた。

俺は少しほっとしていた。

ユキまでワイバーンに参加したいと言われたらどうしようかと心配していたのだ。

実際にユキが悪鬼討伐に参加したら俺の心は酷く動揺して討伐にも支障が出るかも知れないからだ。


圭子さんが微笑んだ。


「そうよ、ユキは心の面で彩斗を支えてあげて。

 それで充分なのよ、気にしないでね。

 さて、お風呂入りましょうよ。

 お風呂上りにはごちそうが待っているわよ~!

 1階にジャグジー付きの大きなお風呂が有るのよ。

 ユキはこの前来た時にジャグジー風呂に入らなかったでしょ?

 皆で入ろうか?」


結局、圭子さんと真鈴とジンコ、そしてユキも一緒に1階のジャグジー風呂に入る事にした。

…くぅううう!俺がユキと一緒に入りたかったのに!

この前ユキが泊まりに来た時はジャグジー風呂どころでなく俺はてんぱっていてそそくさと2階のお風呂で済ませてしまったのだった。

ユキとの初ジャグジーは圭子さん達に奪われてしまった。


俺は寂しく一人で2階の風呂に入った。


風呂上がり、暖炉の間に背の高いテーブルが置かれてごちそうが並んでいた。

司と忍がごちそうを前にはしゃいでいた。

皆で楽しく夕食を頂いた。

ユキもすっかりリラックスしたようだった。

皆がユキを受け入れてくれて俺は凄くほっとした。

食事も終わり、俺がトイレに立った。

トイレから出ると目の前に真鈴が立っていた。


「うわ!びっくりした!

 真鈴、どうしたの?」

「どうしたの?じゃないわよ彩斗。

 ユキちゃんにどこまで話したの?」

「どうって…ワイバーンの事や岩井テレサの事やスコルピオの事だとか…。」

「きぃいいい!

 そんなこと聞いてないわよ!

 彩斗が32歳になってユキちゃんと付き合うまで2回と4分の…。」

「ああ!真鈴!その辺りの事は一切言ってないよ!

 言う訳無いじゃん!」

「…本当に?

 彩斗が経験した恥ずかしい事、ぴょん吉のブーツに鼻を突っ込んでクンカクンカしながら1人エッチ事件とか鯨女顔面鷲掴みキス拒否られ数日間ひょっとこ顔事件でその時運転免許の更新があって免許の写真が凄い事になったりした事とか、ケツ花火事件で危うくジェット噴射うんこで吹き飛ばした花火が校舎に燃え移って町内全員避難事件とか…。」

「そんなんじゃないそんなんじゃない!

 真鈴、お前達、なんか俺の悲惨な話を面白可笑しく歪んで記憶してないか?

 そんなとんでもない事じゃ無かったよ!」

「…そうだっけ?」

「そうだよ!」

「…本当にそうだっけ?」

「本当にそうだよ!」

「ふ~ん、まあ、体験した本人が言うなら本当かもね。

 でも、彩斗がそういう事をユキちゃんに言わなくて良かったわよ。

 もしも私の彼にそんな過去が有ったらドン引きしちゃうと思うしね~もっとも腹を抱えて大笑いすると思うけど…。

 まあ、女性メンバーには言わないでおくように伝えるわ。

 そんなこと知られたら彩斗が可哀想だからね~。」

「大丈夫だよ真鈴。

 心配してくれてありがとう。

 ジンコと圭子さんにはもう言って有るんだ。

 後は加奈に言って置いてくれれば大丈夫…。」


 その時、暖炉の間から尋常でないけたたましい笑い声が聞こえて来た。

 物凄い笑い声がトイレまで聞こえて来た。


「あ!ああああ!寄りに寄って一番おしゃべりの奴の事を忘れていたぁあああああ!」


俺は暖炉の間に走った。


皆が笑っていて…ユキが…ユキが椅子から転がり落ちて腹を抱えて一番大笑いしていた…。

そして俺の顔を指差してうひ~!顔面鷲掴みでひょっとこ~!と言いながら涙を流し顔を真っ赤にして笑っていた。






オワタ…










いいや!終わってない!

こんな事で俺の恋愛を終わらせるわけにはいかない!

畜生!はな!はなぁああああ!


「はなちゃん!話したな!話したな!ユキに俺の過去を!

 しかもかなり大げさに話しを歪めて話したな~!」


俺は憤怒の形相で血の涙を流しながらはなちゃんを睨みつけた。


はなちゃんが俺を見ると白目を剥いて顔をかくかくさせてジンコの陰に隠れようとした。


「あいや!許せ彩斗!

 わらわはもう千切った男女に秘密は無いと!

 もう彩斗が話したのかと思っていたじゃの~!

 ゆるせゆるせ!

 ひぃいいいい!彩斗の顔が怖いじゃの~!」

「彩斗!ご免なさい!

 私も圭子さんもはなちゃんが話すのを止められなかった!」

「うぉおおおお!許さん!は~な~!」


俺はもうブチ切れてはなちゃんを捕まえてその首を引き千切ってやろうと思った。


「待って彩斗!

 私!大丈夫だよ!

 そんな事で彩斗の事嫌いになったりしないから!

 大丈夫だよ!

 彩斗がケツ花火で街を全焼させたとか!

 男でも女でもなく関係なくブーツの臭いを嗅いで興奮して1人エッチしたりとか!

 …それはちょっとだけ凄く凄く嫌だけど!

 でも!でも!今でも彩斗の事を大好きだよ!」


俺の動きは止まった。

そしてユキをじっと見つめた。


「…本当?ユキ?」

「本当よ!彩斗がひょっとこ…プッ…彩斗がシロナガスクジラ女に顔面鷲掴みにされてキス拒否られて…ププッ!…ひょっとこ顔になっても…それでも私は彩斗の事…プッ!プププッ!…ちょっと待って!」


ユキは真っ赤な顔を両手で押さえてゼイゼイと荒い呼吸を整えた。

やがてユキは顔を上げた。


「それでも私は彩斗の事…大好きよ!愛してるわ!」

「ユキ~!」


俺は思わずユキに駆け寄って、ユキの身体を抱きしめた。


皆が拍手してくれた。


「おお!ユキの彩斗に対する愛情は本物だぞ!」

「彩斗!良かったわね!ユキを大事にしてあげなよ!」

「彩斗、こんなに優しい女の子はいないわよ!

 私だったら笑い死にする危険が有るから絶対付き合わないもん!」

「感動じゃの!

 これが真に愛し合う男女の姿じゃの!」


俺はユキを抱きしめて立ち上がり椅子に座らせた。

司と忍はもう2階に上がっていてこの場に居ないので安心した。

そして俺はユキの空よりも広く海よりも深い俺への愛情を実感して安心した。

もう、ユキにはあのワイバーンメンバーにも言っていない最大破壊力があるもっと恥ずかしい2つと2分の1の事以外に隠すものは何もなかった。


その後、『ひだまり』を終わらせた喜朗おじと加奈、クラと凛も死霊屋敷にやって来てさらに賑やかになった。

真鈴とジンコと圭子さんとはなちゃんが加奈をキッチンに呼んで、もう俺に関する恥ずかしい事はユキは知っているからねと伝えた。

それを聞いた加奈は少し残念そうな微妙な表情をしていたとの事だった。


まぁ、その事はもう済んだ事だ。

俺達はユキを屋敷の中やガレージ、完成間近のプールや、明石一家の家や喜朗おじと加奈の家などを案内して、軽くお酒を飲んで解散した。

俺とユキは俺の部屋に入った。


「あの…彩斗。」

「え?何?ユキ…。」


ユキが顔を赤らめて俯いた。


「彩斗が靴の臭いを嗅いで興奮するなら…内緒で私の靴の臭い…嗅いでも良いよ…。」


…うううう!なんて優しい女の子なんだろうかぁ!

やっぱりユキと付き合って良かったと俺は思いながらそんなに重症の臭いフェチじゃないので丁寧にお礼を言って辞退した。


「それよりもユキ…。」

「なあに、彩斗?」

「これ…ユキの体に合うサイズだよ…これを…。」


俺は紙袋をユキに差し出した。

紙袋を覗いた雪の顔が赤くなった。


「ええ!これ、あの『ひだまり』の制服じゃないの!

 しかもなんかハロウィーンぽいのも入っているわよ!」

「うん、喜朗おじにも断って拝借したんで大丈夫だよ。

 一晩貸してくれるってさ…良かったら…着てみない?」

「…ええ?良いの?本当に良いの?」

「うん、大丈夫だよ。」

「…彩斗、ちょっと向こうを向いていて…ちょっと恥ずかしいわ。」


俺はベッドに座って壁の方を向いて、ドキドキしながらユキが着替える衣擦れの音を聞いた。


「彩斗…こっち見て良いよ…。」


俺が見るとユキがあの制服に持を包んで顔を赤らめた少し俯いて立っていた。


「…似合うよユキ…可愛いよ凄く…。」


俺はからからに乾いた喉で言った。

ユキは姿見に自分を映してまた顔を赤らめた。

そして俺の方を向いて少しスカートのすそを摘まんで心持持ち上げながら膝を曲げて挨拶した。


「彩斗ご主人様…こんな感じですか…。」


俺は生まれてからこんなに興奮した事は無かった。

俺はユキをベッドに押し倒して…そしてハロウィーン用の制服に着替えて更に、激しく、優しく、じっくりと明け方まで愛し合った。

凛のように赤い瞳のカラコンが無いのは残念だったけど、紅い瞳のユキと愛し合ったら俺の心臓が持たなかっただろう。

そして俺はもう…もう、あの回数を数えるのは止めた。

俺はユキをとても愛している。

ユキもそうだと思う。

もう、あの回数なんてなんの関係も無いんだ。

あれはもう卒業だ。









続く

 


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