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吸血鬼ですが、何か? 第9部 深淵編  作者: とみなが けい
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結婚式やらハロウィーンやら悪鬼討伐やらで大忙しな俺達…俺は感じた違和感をはなちゃんに相談する事にした。

「やれやれ、質の悪い悪鬼はまた田舎のへき地かぁ~!

 きっと泥だらけ落ち葉だらけになりそうだねぇ~!」


ハロウィーンの準備やら結婚式の準備やらで暖炉の間のテーブルに夥しい書類を並べて色々と整理に忙殺されている女性陣の中で真鈴がため息をついた。


はなちゃんを交えた女性陣がテーブルに集まって色々と忙しそうにしているが、結婚式を始めとするイベントは女が仕切るからと言われて、俺達男性メンバーは別のテーブルでコーヒーを飲みながらその様子を眺めていた。

結婚式とかが絡んだ時の女のエネルギーが凄いなと思いながら俺達はコーヒーを飲んでいた。

俺と明石と四郎、喜朗おじとクラは互いに苦笑いを浮かべて目配せした。


「大学の方も勉強は一段落落ち着いたと思ったら、まだまだやる事が山積みなのよね~!」


真鈴が続けてぼやき、一緒に書類の整理をしている加奈やジンコや凛、圭子さんがため息をついた。

圭子さんが結婚式の招待する者のリストをテーブルに置いてナッツバーを齧った。


「まあまあ、結婚式は内輪でやるからそんなに色々と誰を呼ぶかとか考えなくて良いから助かったじゃないのよ。」


圭子さんがそう答えると真鈴は横に置いていた柿の種の袋を引き寄せて手を突っ込みひとつかみ口に放り込んでぼりぼりと齧り、ジンコも頷きながらナッツバーを齧っている。

やれやれ、悪鬼になった圭子さんはまだ判るけれど、真鈴とジンコの食欲は物凄いものがある。

あれでぶくぶく太らないのが不思議だ。

ジンコが口の中のナッツバーを飲み込んで言った。


「まあ、3組とも親族とかはいないから単純に考えれば良いからね~!

 リリーの方でもスコルピオが全員参加と言う事と岩井テレサ位だしね、後な練馬のさととまりあでしょ。

 後は凛が施設で働いていた人を何人かくらい…まあまあ、『ひだまり』の店内に入りきらないお客さんたちもテラス席にテーブルで広げて寒さの対策の大型テントで覆って何とか全員収用出来るしね。」


加奈が何かのパンフレットを手に取った。


「あの~、その前にハロウィーンが有りますぅ~!

 私達あの制服も素敵だと思うのですがぁ~やっぱりメイクとかもお洒落な感じで皆統一したいですぅ~!

 みんな、これを見て欲しいですぅ~!」


加奈がテーブルにパンフレットを置き、嬌声を上げていた。

ちらりと今はやりの地雷メイクの女性の写真が見えた。

まあ、あのハロウィーン制服なら似合うかも知れない。


「ハロウィーン企画だからね~!

 たまにはこんな感じも悪くないかもね~!」


圭子さんが満更でも無い声を上げた時、凛が思い出したように言った。


「そうだ、私はリリーがハロウィーンの制服を試着した時に私に言ったんだけど。

 私達悪鬼はコントロール次第で瞳の色を変えられるって言われて、リリーが紅いルビーのような瞳をして見せてくれたんですよ~。

 ハロウィーンの時、リリーとお揃いのルビーの瞳にしようかな~!」


おおお!俺の目の前に瞳を赤く怪しげに光らせたリリーのハロウィーン制服姿が見えた。

その怪しげで淫靡な顔であの制服!

ううううう!

俺は少し身を屈めて股間が爆裂マンモス状態になったのを隠した。


「おや?彩斗、腹の具合でも悪いのか?」


四郎が俺を見て少し心配そうに言った。


「い、いや、大丈夫だよ。」

「そうかそうか。」


四郎はそう答えて手持ちぶたさを紛らす為に読み始めたコミックに目を落とした。

流石に悪鬼の四郎でもあの怪しいリリーの姿は凛の思念から読み取ったとは思うのだが一切の動揺が無い。

ちきしょう!

100回越えの野郎は余裕があるなと俺は少し悲しくなった。

これでは俺はまるで中学生じゃないか。


「え~!

 どんな感じ?

 凛、やって見せてよ~!」

「うん、見たい見たいですぅ~!」

「私も見てみたいわ!

 どんな感じになるんだろう?」

「凛、私も見たいわぁ~!

 それって私も悪鬼だから瞳の色変えられるって事よね~!」

「わらわも見てみたいじゃの~!」


真鈴達が口々に凛に言い、しばし目を閉じて目を開けた凛が瞳をルビー色に変えて見せた。

紅いルビーの瞳。

それはやや儚げな凛の顔立ちに淫靡な雰囲気を漂わせて確かに見ごたえがあった。

凛はクラの奥さんだが俺でも少し見惚れてしまった。


手持ちぶたさにテーブルでコーヒーを飲んでいた男性陣も凛の顔を見て歓声を上げた。

四郎もコミックから顔を上げて凛を見た。


「おお!

 これは凄いエッチっぽくて素敵だな!

 なるほど、リリーもそんな感じだったのか!

 見たかったぞ!」


俺は四郎の反応に違和感を感じた。

あれ?凛の思念読んだんじゃないの?

俺は少し不思議に思った。


「私も少し練習が必要だったけど、こんな感じなら良いかな~、て思ったんだけど…。」


紅い瞳の凛が微笑むと真鈴達が熱狂した。


「ずるい!

 ずるいよ、凛!

 あたしもそんな瞳になりたいですぅ~!」

「私もよ!

 あのハロウィーン制服でその瞳ならすっごく素敵だと思うわ~!」

「確かに!

 これは最早アートの世界並みの美しさになれるかも!」


真鈴達が口々に羨望の声を上げていた。

圭子さんが手を上げて叫んだ。


「はい!は~い!

 凛、悪鬼だとそう言う瞳になれるのね?」

「ええ、圭子さん、練習次第でなれますよ。」

「ちょっと試してみるわ!

 どうすれば良いの?」


凛がくすくすと笑った。


「簡単ですよ、目を閉じてイメージすれば良いだけです。

 イメージをきちんと頭の中で思い浮かべる練習をすれば良いですよ。」

「ちょっとやって見るわ!」


圭子さんがそう言って目を閉じた。


「彩斗、圭子が凛のような瞳になったら俺は夜に燃え上がってしまうかもな。」


明石が俺の耳元で囁いた。

うん、確かに。

俺だってユキがあんな瞳で迫ってきたら簡単に一晩10回くらいは…。


圭子さんが目を開けた。


その場にいて圭子さんに注目していた皆が固まり、そして悲鳴を上げた。


「圭子さん!怖いよ!」

「ああ!怖い怖いわ!」

「悪霊じゃの!

 悪霊退散じゃの!」

「圭子さん!もっと練習が必要ですよ!

 怖いです怖いです!」


はなちゃんでさえ白目を剥いて痙攣するほどの怖さだった。

圭子さんは瞳だけでなく目全体が何と言うか、どす紅くなり黒い瞳が際立ちとても恐ろしい顔になった。


「なによ、皆酷いじゃないのよ~!」


圭子さんが憮然とした表情で俺達に文句を言った。

怖さが10パーセント増し位になった。


「圭子!鏡!とにかく鏡で自分の顔を見て来い!

 司と忍にその顔を見せるな!

 絶対にひき付け起こすぞ!

 痙攣して泡吹いて倒れてしまうぞ!」

「何よ景行!

 失礼しちゃうわね~!

 そんなに変?

 鏡見てくるわ。」


圭子さんが立ち上がりトイレに鏡を見に行った。


「ふぅ~!

 圭子さんはもう少し練習が必要かも知れないですね~!」


凛が苦笑いを浮かべた。

ルビー色の瞳でその苦笑いの表情さえもとても淫靡な雰囲気があった。


あ!クラが!クラがとても凄い想像してる!

チキショウ!自分の妻だから文句は言えないけど!俺が鼻血が噴き出そうなあんな事やこんな事を!


やがてトイレから圭子さんの凄い悲鳴と鏡をぶち壊す音が聞こえて来て、ああやっぱりね、と俺たちは苦笑いを浮かべた。


「彩斗、お前鼻血が出てるぞ?

 そんなに怖かったのか?」


四郎が不思議そうに尋ねた。


やがて圭子さんが普通の目の色になって右手に血が付いた状態で暖炉の間に戻って来た。


「やれやれ自分の顔の怖さに思わず鏡をぶち割ってしまったわ~!」


圭子さんがティシュで手についた血を拭きとった。

勿論、悪鬼なので傷は既に塞がっていた。


ジンコがため息をついた。


「やれやれ、圭子さんは練習すれば凛のようになれるから良いけど、私達はカラコンとかするしか無いわねぇ~。」


そして、色々な催しの打ち合わせと多摩山奥に集う悪鬼の討伐の打ち合わせが終わり、俺達はそれぞれの部屋に引き上げることになった。


クラがやたらに凛を急かして『ひだまり』の2階に帰ろうとしていた。

ちきしょう、きっとクラは凛にあの赤い瞳になってくれるように頼んであれやこれやするつもりなんだろうな。

なんて羨ましいんだ!

だが、今の俺はそれどころでない心配事があった。

さっきの四郎のいささか鈍感な反応と練馬でさととまりあに言われた事が俺の心に引っ掛かっていた。


「あ、真鈴、ちょっとはなちゃんと話した事が有ってさ。

 ちょっと良いかな?」


俺は今日は真鈴の部屋に眠るはなちゃんを抱いた真鈴に声を掛けた。


「あら?

 まあ、別に良いけどさ。

 はなちゃんも良いよね?」

「わらわも構わんぞ。

 彩斗、話が終わったら真鈴の部屋に連れて行けよ。」

「うん、判った。」


俺ははなちゃんと暖炉の間に二人きりになった。


「ところで彩斗、何やら相談したい事が有るんじゃろう?

 まぁ、大体さっき分かったじゃがの。」









続く



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