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窮鼠、蛇を噛む

 


『シィィィィッ!!!』



 私の牙はアオアミヘビの頭から背中へ一直線に傷痕をつける結果となった。私の攻撃が、正真正銘ヤツにとっての有効打に成り得たってことだ。どれくらい削ることが出来たのか、私はすぐにアオアミヘビのステータスを確認する。



─────

[種族]〈アオアミヘビ〉

[ランク]F+

[状態]憤怒

[LV] 9/25

[体力]15/27

──────



 ...減りとしては悪くない、悪くないんだけど何処か惜しい。いくら全身全霊の一撃だったとはいえ、Fランクのレベル1がF+の9レベルに与えられるダメージはたかが知れていた。寧ろネズミの身体で、蛇の身体によく二桁のダメージを与えられたものだ。結果は仕方ねえ、囲いからも離れられたしさっさと逃げるに限る。




 つーわけで、じゃあな!!!私はその場から脱兎のごとく逃げ出した。ネズミだけどな!



『ゴアシャァァァァァ!!!!』



 私の真後ろでアオアミヘビが未だかつてない咆哮を上げた。ですねええええええ!!そりゃ怒ってますよねええええ!!ただの餌だと思ってた(ネズミ)から馬鹿にならない反撃貰ったら怒りますよねお前ならなぁぁぁ!!このストーカーには諦めという言葉がねえのか執念深いったらありゃしねえ。



『シャァァァァァァァァァァァァ!!』



 アオアミヘビが全速力で飛びかかってくる。その速度は何故か、素早さで勝ってる筈の私より速かった。危険を感じてビュッと横にそれた私の隣を、ヤツが一直線に通り抜けていく。




 おかしい、私とこいつの素早さはそれなりに差があった筈だぞ。なにかあるとすれば、恐らくヤツの状態異常、憤怒が関係しているのだろうが。



[憤怒]

 《怒りを感じている状態。普段抑えているリミッターが外れ、攻撃力、攻撃速度、素早さが跳ね上がる。一部常に憤怒状態の魔物がいるが、基本的に気分を害する外敵が消滅すればこの状態は治まる。》



 それって外敵(わたし)が消滅するまで治んねえってことじゃねえか!!しつこく追うだけ追ってきて反撃貰ったら怒ってくるとか幾らなんでも当て付けだ!自然界って理不尽極まりねえなまじで!!



 とにかく、直線で逃げちゃダメだ。相手は所詮短絡的で、自制の効かないクソヘビだ。

 スピード勝負だったさっきとはうってかわって、今度は障害物を生かし無理矢理なカーブを押し付けるルートで逃げる。ハイジャンプで岩に飛び乗り、凹凸の地形を活かした勘だけが頼りの逃走ルート。ヤツが飛びかかってくる先々に岩や川を置くようにして、ぶつけさせて被弾させる数を増やしていく。今の私では、こうすることでしか体力を削ることが出来ない。



─────

[種族]〈アオアミヘビ〉

[ランク]F+

[状態]憤怒

[LV] 9/25

[体力]12/27

──────



 くっ....にしても中々減らないな。結構な勢いで岩とかにぶつかってきてる筈なのに。私なら岩に叩きつけられた瞬間絶命する可能性あんだからな。




『ゴアシャァァァァァ!!!!』




 クソッ、クソッ!このクソヘビがしつけぇ!!うるせえ!うあ、また横掠めてきた怖ぇ!ひいいいいいっ!!!



 アオアミヘビは一心不乱ならぬ一心狂乱に飛びかかり、噛みつきが何度も空を切る。めっちゃご乱心だわ、まじ狂乱してるわなんだよ私に親でも殺されたのかってくらいの暴れッぷりだわまじなんなんこいつ。ワタシ、ココ、キタバカリ。ユー、サキ、アタック。オーケー?ワタシ、ナニモワルクナイ!




 アーユーオーケー?




『ゴァァァァァァ!!』




 ノオオオオオオオオ!因みに私もノーだ!!死にたくない!死にたくな─────い!!!



『シャア!!!』



 ちっ、こんな草原で追い回されててもこっちが不利なだけだわ。安全...とまでは言えなくとも何処かで迎えうつくらいの勢いじゃないと勝てないぞ。さっきは運良く相手の虚を突いて一撃食らわせることが出来たんだ。



 なにか...なにか無いのか!?逆転の一手ってやつが!!



 周りを見渡して見てもあるのは木、木。草。石。後方にはまだ大きな岩があるが、あそこまで引き返すには減速しないといけない。そんなことしてる時間はないし木で時間稼ぐしかないか。

 っても木の根っこに脚を取られたら終わりだ。これもまた、減速しかねない。高さが少しあるとはいえ、蛇ならスルスルと移動できてしまうだろう。

 ならもう、そこらに落ちてる石でもぶん投げるしかないか?生憎投げるのには向いてない体つきなんでな!どうしよう!!ホント!投げて当たっても大したダメージにはならないだろうし!



 考えろ、私がアイツに勝っているのは今や考える力だけ。得意のすばしっこく逃げられる素早さすら憤怒でリミッターが外れているアオアミヘビには勝てねえんだ。





 考え....あれ?





 ふと、木の根っこ周辺を見渡すとその太い木の根の隙間(?)が穴のようになっていた。よく見る冬眠とかするときのための穴蔵って言えば分かりやすいか。もしかしたらあそこに逃げられるかもしれない、と私は一心不乱で駆ける。



 半ばスライディング風に顔から地面へダイブし、その木の根の穴へと飛びついた。



『ァァァァァ!』




 すぐ真後ろバキッという音を立てて、硬い木の根に顔をぶつけるアオアミヘビ。その全身は入らなそうだったが、口を閉じてしまえば顔だけでも入ってしまいそうだった。そういえば頭、小さいほうだったもんな。



『ゴァァァァァァ!!』


 ひっ....!!!



 こちらを睨み大きく口を開けるアオアミヘビ。私はどうやら、自分から袋のネズミになってしまったようだ。




 しかしながら私はそれを後悔していない。アオアミヘビだってここではとぐろを巻くことは出来ないし、攻撃できる方角も入口一方向しかない。

 それを知らずかアオアミヘビは私の目の前で口を開き、舌を大きく露出させる。威嚇か、恐怖を煽っているつもりなのか。この状況が自分有利だと思い込んでるなら愚かなものよ。





 ガブッ!!!!!!


 私はそのアオアミヘビの舌に、思いっきり噛みついた。



『ゴギャアァァァァァ!』




 窮鼠、猫を噛むならぬ蛇舌を噛む。舌なんてそうそう噛まれることはないはずだし、良いダメージにはなったはずなのだが。




─────

[種族]〈アオアミヘビ〉

[ランク]F+

[状態]憤怒.出血(弱)

[LV] 9/25

[体力]7/27

──────



 クソッ!!足りねえ!!ダメージ的に後2回噛まないと倒せない計算だ。無理だ。



『ァァァァァ!ゴァァァァァァ!!ギャアァァァァァ!』




 アオアミヘビは少し後ろに引いて大きく叫ぶ。殺意を増したその咆哮は今の私に生命の危険を感じさせまくっていた。





 こんな...こんなところで終わるのかよ?ネズミ生を踏み出したかと思えばこんなところで??




 それは嫌だ。




 嫌ならどうする?考えろ。考えろ!考えろ!力を入れろ!




 私のスキルは、ステータスは、魔力は!何のためにある!!




『ガァァァァァ!!!』




 アオアミヘビが木の根穴に頭を入れ、飛びかかってくる。死ぬ瞬間なんて見てられねえ、私は最後まで、抗う!!!





 バァン!!




 刹那、私の視界が爆発と共に煙で覆われ見えなくなった。

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