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暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~  作者: イワシロとマリモ
暗黒街制覇への道

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十四番街の殺人鬼

「一体どうなってるんだ?」




 マルコ=テッサリアは十四番街で発生している無差別殺人に頭を悩ませていた。ここシェルドハーフェンで殺人は日常茶飯事であり、トチ狂った狂人による無差別大量殺人も珍しくはない。ただしその手の人間は短絡的な者が多く、報復や反撃で早々に葬られるのが関の山である。しかし、事件は既に一週間に渡って継続しているのだ。

 毎晩毎夜少なくない人数が犠牲になり、しかも全て何らかの組織に属しているマフィアであることが各組織の疑心暗鬼を呼び、一気に情勢が不安定化しているのだ。




「マルコ、この騒ぎは何だ!うちの奴も殺されてるんだぞ!それも十人だ!リガ・ファミリーの仕業か!?」



 先ず激怒したのはトライデント・ファミリーのボス、ドン・ベネットである。荒事を全てマルコに任せ、他の幹部と一緒に豪遊していた彼は組織の人間に多数の死人が出たことを聞き、慌ててマルコを呼び出したのだ。




「いや、違う。どうやらリガ・ファミリーの連中も殺られているらしい。それだけじゃない、他の組織の奴まで殺られてる。お陰で十四番街は火薬庫みたいになっちまった」

「ふざけるな!リガ・ファミリー相手なら確実に、楽に勝てると聞いてたから許可を出したんだぞ!死んだ奴等の補償に幾ら掛かると思ってるんだ!」




 十四番街のマフィアには、死んだ構成員に家族が居た場合、遺族の面倒を組織が見ると言う不文律がある。

 だが、マルコとしては身体を張らずにマルコ達が金で豪遊する幹部達の浪費のほうが気になっている。




「そんなもん、他の幹部連中が真面目に働けば直ぐに取り戻せるだろ。新参が体張ってるのに、古参が遊び呆けてちゃ不満が溜まる。いや、もう溜まってるんだ。

 ボス、原因は今調べてる。だからボスにはこれを機に組織の引き締めを頼みたい」

「引き締めだぁ?うちもそれなりに名前が売れてきたからな。相応の体裁って奴が必要なんだよ」

「それは理解できるが、体裁のために金を浪費してちゃ意味がないだろ!しかも古参連中は何もしてねぇ!

 新参と古参の間に溝が出来てるんだ!このままじゃ組織がダメになる!ボス、目ぇ醒ましてくれ!俺達はこれからなんだぞ!今の状態に満足しねぇでくれ!」




 マルコの必死の説得は、ドン・ベネットに届くことはなかった。




「身体張るのが新参の役目だろうが!とにかく、直ぐにどうにかしろ!それと補償金はお前の一派が出せ!お前の責任なんだからな!マルコ!」

「ボス!」




「どうだった?マルコ」




 部屋を後にしたマルコへ声をかけたのは古参幹部の中でただ一人の理解者、チアノである。




「叔父貴、ダメだ。ボスからは大目玉を食らったよ」

「お前のせいじゃ無いんだけどなぁ」

「仕方無ぇさ。死んだ奴等の補償まで押し付けられたよ」

「お前にか!?」




 チアノが驚くのも無理はない。それは本来ボスであるドン・ベネットの責任なのだから。




「急に大金が手に入って有頂天になってるのさ。そこに今回の件だ」

「それでお前に八つ当たりか?そりゃないぜ」

「全くだ。ボスも早く目を覚ましてくれれば良いんだが……」




 悩むマルコに対して、チアノは声量を落として囁く。




「お前がトライデント・ファミリーを率いるって考えもあるが?」

「俺がか?あり得ねぇな。ボスには拾って貰った恩があるし、何より親殺しはご法度だ。そんな特大の不義理をやったら信用を失う。長い目で見たら組織は終わりだ」




 義理人情など存在しない裏社会だからこそ、通さねばならない筋が存在する。何より、そんな裏社会では信用ほど得難い大切なものなのだ。そして信用を失った組織は闇に葬られる。




「そりゃ残念だ。お前がやる気なら俺も加勢したんだがな」

「伯父貴には悪いが、今はそれどころじゃ無ぇさ。余計な茶々を入れてくる奴をどうにかして、リガ・ファミリーを潰す。そして組織の内側を固めて他の中堅組織を潰す。それで十四番街の制覇が成る。まだまだ忙しいぞ」

「問題は派手に暴れ回ってる奴の正体だな。心当たりは?」

「さっぱりだ。だが、もしかしたら……」

「なんだ?」

「……ライの奴が戻らねぇんだ」

「十五番街へ行かせた奴か……おいまさか」

「ああ、間違いであって欲しいな。だがもし俺達の予想通りなら、かなり面倒なことになる。ライの奴がしくじるとは思えねぇが」




 その日の夜、警戒を強めつつあるマフィア達を嘲笑うかのように聖奈による無差別殺戮は継続されていた。

 この日はリガ・ファミリーの幹部の一人が狙われた。もちろんトライデント・ファミリーと抗争中であり、毎晩行われる無差別殺人を警戒して護衛をいつもより多く引き連れている。

 いくら抗争中と言えど、シノギをしなければ組織は存続できない。いや、抗争中だからこそより多くの資金が必要になるのでシノギにも力が入る。



 リガ・ファミリーが経営する喫茶店のひとつ。店内はまさに血の海と化していた。七人居た護衛は全て一刀の元に斬殺され、カウンターには店主の首が転がる。そして幹部は。




「ごぼぼっ!!?」




 壁際に力なく座り込み、首を深く斬られて自らの溢れる血で溺れる男が下手人である少女を見上げる。栗色の髪をポニーテールに結い、帝国では見慣れない返り血で染まった黒いセーラー服を纏った少女は興味無さげに視線を外して刀を鞘へ納めた。そして入り口に佇む隻眼の青年へ顔を向ける。




「終わったよ、ダンバート」

「随分と派手にやったねぇ、妹様。お嬢様が見たら嫌な顔しそうだよ」

「お姉ちゃんが見る価値もないと思うけどね。死体は、どうしよっか。片付けてくれる?」

「人間は不味いから、正直あんまり食べたくないんだよなぁ」




 人間に化けたグリフィンのダンバートは肩を竦めながら苦笑いを浮かべる。判明している以外にも死者は大勢居るが、行方不明の者は全てダンバートが丸呑みしたのだ。




「そっか、ならこのままにしとくよ」

「そいつ、トドメをささないのかい?」




 ダンバートはまだ自らの血に溺れてもがく幹部を指差すが、聖奈は首を横に振る。




「良いよ、放っておけば勝手に死ぬし。お姉ちゃんの世界にマフィアなんて要らないしね」

「まあ、それもそっか」

「次の獲物は?」

「近くに別のマフィア達が居るよ。いやぁ、探すのが楽で良いね」




 十四番街のマフィア達は所属を示すために組織のシンボルを付けている。装飾品であったり入れ墨であったりと多岐に渡るが、マフィア組織の人間であることは直ぐに分かる。




「今夜は大量だね。あんまり留守にしたらお姉ちゃんも寂しいだろうし、後数日斬り回ったら帰ろうかな」




 まるで遠足に行くような気軽さで聖奈は今夜も報復の殺戮を繰り広げる。幹部の一人を失ったリガ・ファミリーによる報復が迫るが、それは同時に彼等の劣勢を更に加速させることとなる?

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