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暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~  作者: イワシロとマリモ
暗黒街制覇への道

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後方を支える者達

 シャーリィ率いる暁戦闘団が黄昏西方で激突している頃、黄昏中心部にある領主の館の会議室にカテリナ、マーサ、ラメルの三人が集まっていた。ラメル同様情報を司るマナミアはシャーリィからの密命を受けてマリアの監視に従事しているのでこの場には居ない。




「それで、何か分かりましたか?」

「ボスが仕入れてきた情報の裏付けは出来た。確かに八番街とワイアット公爵家の取引は存在しているな。と言うか、連中あまり隠すつもりは無さそうなんだよな」

「隠すつもりがない?」

「そうよ、カテリナ。行商団に紛れ込ませているけれど、運ぶ量が多いから陸路だと隠すのが難しいのよ。むしろ、開き直っているわね。堂々と輸送してるし」

「鉱山の採掘権は確かにワイアット公爵家が握ってるが、帝国に納めなきゃいけねぇ分も八番街へ流してるって話だ。それどころか、嫌な話も聞いた」

「嫌な話とは?」

「人身売買よ。シェルドハーフェンで売られてる奴等をワイアット公爵家が買ってるの」



 マーサの言葉にカテリナが眉を潜めた。




「奴隷として扱うつもりなのですか?貴族様が?」

「足りなくなっているから、よ」

「足りなくなっているとは?」

「今南部閥の領内じゃ大規模な人狩りが行われているんだよ、シスター。ちょっとした軽犯罪や税を納められねぇ領民を片っ端から駆り集めて、老若男女問わずに鉱山へ送り込んでいるらしい」




 南部閥領内には様々な鉱山が存在し、帝国で産出される鉱物資源の大半は南部閥が握っている。それでもこれまでは日和見主義で荒波を立てずに採掘量も制限されていたが。





「最近は採掘量が増えているのよ。多分、内戦で他の大貴族が文句を言えない状態だからでしょうね。しかも需要はうなぎ登り。金儲けに走ったってことよ」

「で、その労働のために領民を駆り立てて、足りなくなったから奴隷を仕入れていると」

「ああ。しかも鉱山の仕事はかなり過酷らしい。ボスと違って働いている奴を大切にしようって考えは貴族様には無い。潰れたら新しい奴隷を入れればそれで良いと考えていやがるからな」




 ラメルの報告を受けて、カテリナはうっすらと笑みを浮かべる。




「それはそれは。さぞや死人がたくさん出て領民に恨まれているでしょうね」

「恨まれているわよ。しかも報酬はほとんど支払われないし、払われたとしても銅貨一枚くらいよ」

「暴動が起きないのが不思議ですね」

「搾取に次ぐ搾取でそんな元気も無いんだろうさ。だが、火種は山のようにある。で、極め付けはバカ息子だな」

「シャーリィから聞きましたが、流石に偽装ではありませんか?仮にも公爵家の長男坊なのでしょう?」




 カテリナの疑問は最もであるが、現実は非情である。




「残念ながら本当なのよ、カテリナ。考え無しにやりたい放題やってるわ」

「それはまた……余程自信があるのでしょうね」

「考え無しのバカなだけさ。で、ボスはこの長男坊を上手く利用するように策を巡らせてる。なにせ婚約者は東部閥の有力貴族、フロウベル侯爵家の一人娘だからな」

「フロウベル侯爵家の一人娘……ああ、聖女マリアですか」

「その通り。ボス曰く、何をしても胸が痛まないから楽しいとさ」

「全く気楽なものですね、あの娘は。敵が増える一方なのに楽しいときましたか」




 三人が現状の確認を済ませつつあったその時、ノックと同時にエルフが一人部屋へ足を踏み入れた。




「失礼します。前線部隊より信号を確認しました。赤三つ、我々の勝利です!」




 彼女の言葉を聞き、部屋の片隅で静かに紅茶を飲んでいた女性が安堵の息を漏らした。




「ご苦労でした、下がりなさい」

「はい!失礼します!」




 エルフを下がらせると、カテリナも視線を女性、ヴィーラへ向けた。




「そんなに心配ならば一緒に行けば良かったのではありませんか?」

「こんな身体じゃ足手まといになるだけよ。娘の足を引っ張るくらいならおとなしく留守番してるわ」




 ヴィーラは姉妹を見送った後、執務室にて静かに紅茶を飲みながら待っていたのである。もちろん娘達が心配だったのは言うまでもない。




「素直ではありませんね、シャーリィならば邪険にしないでしょう」

「貴女もそうでしょうが、シスター」

「……ふん」




 カテリナもまた手の自由が利かなくなってからは一線を退いて留守に徹している。日常生活に支障は無いものの、銃を振り回すことには不自由するためである。

 勝利の報告を受けて安堵したマーサも、此れからなされるであろう被害報告を思い頭を抱えた。



「勝ったのは良いけど、被害と消費した弾薬について考えると頭が痛くなるわねぇ」

「相手は工業王だ。財力が根本的に違うから、マトモに相手をしていたら磨り潰されるぞ」

「だからこそ、情報部の働きに期待しているのですよ」

「へいへい、分かってるよ。じゃ、ボスによろしくな。連中に与えた被害や今後の動きを探らねぇといけねぇからな」




 ラメルは静かに立ち上がり、部屋を後にする。彼やマナミアが黄昏に居ることは滅多に無いのだ。




「マーサ、貴女も今回の被害額を調べてください。私は医療班に準備を指示してきますので」

「市街地の被害は少ないわよ。幸い砲弾が落ちた場所は建設中の区画で無人だったからね。位置から建て直す費用を考えると頭が痛いけど」

「何とかしなさい。相応に稼いでいるのでしょう?」

「まあね。シャーリィが西部閥、マルテラ商会との伝手を作ってくれたのは本当に助かってるわよ。お陰でこの辺りの西部関連の商売をほとんど独占できているから」

「その稼いだ資金でシャーリィに楽をさせるように」

「無理じゃない?あの娘、どんどん要求がエスカレートしていくのよ。満足なんてしないんじゃないかしら?」

「シャーリィが満足するのは黒幕が死んだその時だけですよ」

「頑張るわ」




 マーサもまた部屋を出る。そしてカテリナがドアへ手を掛けた瞬間ヴィーラもまた立ち上がった。




「じゃ、私も娘達を出迎えにいくわ。多分凄惨な戦いになっただろうしね」

「真正面からの激突です。被害は少なくないでしょう。シャーリィを慰めるのをお任せしても?」

「任せなさい。ただし、貴女もやるのよ。シャーリィは貴女のことも頼りにしているのだから」

「暇が出来たら考えておきますよ」




 どうせ礼拝堂で待っているんだろうな。そう思って笑みを浮かべつつ、ヴィーラは娘達を出迎えるために屋敷を後にするのだった。

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