追憶~二人の出会い~その3
お待たせいたしました、ようやく書き上がりました。ただ私自身が恵まれた青春を送っていないので、内容に些か違和感があるかと思います。こればかりは知識しか持ち得ない私自身の限界であり、お目こぼし頂けれ幸いです
今まさにルイスの光が奪われようとしていたその時、倉庫内に女性の声が響いた。
「なんだぁ?」
その視線の先には、エルフの民族衣装を身に纏ったマーサが立っていた。
彼女は鋭い視線を盗人に向ける。
「セコい盗人の分際で、うちの子を随分と可愛がってくれたみたいじゃない?」
「なんだ?姉ちゃん……エルフか?」
「ええ、ターラン商会』のマーサよ。あなた、覚悟はできてるんでしょうね?」
「これはこれは、大物がご登場だ」
「あっ……姐さん……!」
「ルイス、良く頑張ったわね。ただちょっと詰めが甘いわ。それは後でお説教よ」
「おいおい、もう解決したつもりか?たった一人で何が出来るんだ?ん?」
「私が一人で来るわけ無いじゃない。まあ貴方なんて一人で充分なんだけど、私以外にも怒らせたのが貴方の失敗よ」
肩を竦めて見せるマーサ。その後ろから現れた女性を見て盗人は目を見開く。
腰まで流れる美しい銀髪、そして修道服の上からでも分かる抜群のプロポーション。エルフであるマーサに引けを取らない美女の名は。
「まっ、まさか……シスターカテリナ!?」
「私を知っていると言うことは、それなりにこの街で長生きしているみたいですね。それも今日までですが」
感情を感じさせない無表情のままカテリナは語りかける。
「何であんたが!?あんたには手を出してない筈だ!」
「知らなかったのですか?貴方が盗みに入った農園は、私の家でもあるのですよ。つまり貴方は私の家に土足で入って盗みを働いた」
「ーっ!待ってくれ!これは返す!知らなかったんだ!アンタとやり合うつもりなんて無いんだ!助けてくれ!」
盗人はケープマントを差し出しながら地面に頭を擦り付け命乞いをする。そこに先程までの威勢の良さは見られなかった。
「盗んだものは返してもらう。それは大前提です」
カテリナは懇願する盗人に近寄ってケープマントを回収する。
「ほら、しっかりしなさい。頑張ったわね、ルイス」
その間にマーサはルイスを抱き起こして、簡単な処置を施す。
「ですが、それだけではね?」
カテリナが盗人を見下ろす。
「へいっ!これまで集めた金も全部差し上げます!何ならこれからのアガリだって!だから、助けてくだせぇ!」
必死に懇願する盗人。
「分かりました」
カテリナのその言葉に安堵する盗人。
「あー、でもやっぱダメだわ。シャーリィ泣かせたんだった。てめえ殺すわ」
「は?」
いきなり口調を変えたカテリナを恐る恐る見上げると、カテリナがリボルバーの銃口を自分に向けていることに気付く。
「死ね」
「まっ!」
ズドンッッっと銃声が響き、盗人の眉間に大きな風穴が開いて彼はそのまま人生の幕を閉じる。
「ふん、弾丸の無駄でした。マーサ、そちらは?」
「怪我が酷いわね。でも、良く頑張ったわ」
マーサに介抱されているルイスは、最後まで口を割ることはなかった。
「姐さん……ごめん。滅茶苦茶痛かった……情けねぇ。結局助けられちまった」
怪我を負いながらも幼い顔を悔しげに歪めるルイス。
「大した根性ですね。ボコボコにされて、手を刺されて、更に眼を抉られようとしてもバラさなかった。それも無償で、シャーリィのために頑張ったと」
カテリナがそう声をかけると、ルイスは恥ずかしそうに視線を背けた。
「だって、あんな暗い感じのアイツなんて見たくねぇし」
「ふふっ、男の子ね。どうかしら?カテリナ」
「無謀なところがあるので、まだまだ認められませんね」
「もう、厳しいわね」
「ですが、今回はその根性に免じて評価してあげましょう。ほら、立てますか?」
「ああ……いっ!」
マーサに介抱されながら立ち上がったルイスは痛みに顔を歪める。
「当たり前よね、怪我も酷いし」
「でも立てた。それは評価すべきことですよ。ほらこれを」
カテリナは奪い返したケープマントを差し出す。
「でも俺は……」
「シャーリィはあなたのことを心配していました。あの娘が、他人の心配をするほど余裕を取り戻せたのです。それだけでも凄いのに、シャーリィのためだけに危ない橋を渡った。まだまだ未熟ではありますが、その心意気は評価に値します。受け取りなさい、そしてこれをシャーリィに届けてあの娘を安心させてあげなさい」
「……わかった」
ルイスはしっかりとケープマントを受け取る。
「手間をかけたわね、カテリナ」
「貸しですよ、マーサ」
「構わないわ。ほら、ルイス。馬車を用意してるわ。農園へ行くわよ」
二人はルイスの手当てを行い手配していた馬車に乗り込み農園へと向かうのだった。
シャーリィです。
ルイスがルミのケープマントを取り戻すために一人で動いて行方不明になったと聞いた翌日、無事にシスター達に保護されたと連絡が来ました。農園へ向かっているとも。
無事で本当に良かった。そして、ルミの形見を奪い返してくれた彼には最大限の感謝を示さなければなりませんね。
……そんな思いも、あちこちに包帯を巻いたルイスを見て吹き飛びましたが。
ルイスの右手の包帯には血が濃く滲んでいました。どう見ても転んだ傷には見えません。
「よぉ、シャーリィ。これ、取り返してきたぜ。ちょっとヘマして、姐さん達の手ぇ煩わせちまったけど……」
それでもルイスは笑顔で話しかけてくれた。きっと私を心配させないように、無理をして。
それが分かってしまった私は。
「バカぁあっ!!」
感謝ではなく、バカと言ってしまった。
「しゃっ、シャーリィ!?」
彼はビックリしているが、もう自分の感情を止められない。涙で視界が滲むのを自覚しながら私は感情のまま言葉をぶつけた。
「なんでこんな危険なことを!?そんなにたくさんの怪我をして!!ルミのケープが戻っても、ルイスが死んでたら私はどうすれば良いの!?」
「ぁ、いやそれはっ!」
「私にまた大切なものを失えと!?ルミの形見は大事だけど、あなたの命だって大事なんです!死んじゃったら、なにも出来ないんですよ!?あなたが死んじゃったら、私はっ……!」
「ー!……ごめん」
ああ、違う。本当はお礼が言いたいのに、彼は頑張ってくれたのにっ……。
「ううぅっ!」
「なっ、泣くなよ……ごめんって……もう無茶しないからさ……」
遂に涙を流し始めたシャーリィに右往左往しながらも、シャーリィを抱き寄せてあやすように背を撫でるルイス。
「なんとまぁ」
「青春だねぇ。お嬢の奴、ルイのことを大切なものって言ったぜ。自覚あるのか?」
そんな二人を暖かく見守るカテリナとベルモンド。
「あそこまで感情的なシャーリィを見たのは始めてですね」
「良いじゃねぇか、これでお嬢が元気になってくれるならな。ルイの奴には頑張って貰おうじゃないか」
「まだまだ認めるわけにはいきませんがね」
「親バカだよな、シスター」
カテリナの言葉に肩を竦めるベルモンド。そして二人を暖かく見守るのだった。
暫くして落ち着いたシャーリィは、羞恥に頬を赤らめながらもルイスから離れなかった。
「怪我は、大丈夫なんですか?」
「姐さん達が手当てしてくれたからな。ほら、傷は男の勲章だって言うじゃないか」
二人でベンチに座り、『大樹』を眺めながら言葉を交わすシャーリィとルイス。
「右手の怪我は……」
「刺されただけさ。気にすんな……は無理だろうけど、大丈夫。ちゃんと治るからさ」
「……さっきはごめんなさい。本当はお礼を言いたかったのに、自分を抑えられませんでした」
俯くシャーリィ。
「心配かけちまったのは本当のことだしな……これからは気を付ける。それに、お前に泣かれるのは、なんか嫌だからさ……」
ルイスは頬をかきながら恥ずかしそうに語る。それを聞いてシャーリィは顔を上げる。
「忘れなさい。今すぐに!」
「いや無理だろ!」
「むぅ、不覚です……責任を取って貰いますからね」
「はぁ!?」
「マーサさん曰く、乙女の涙は高いらしいので」
「乙女?」
「なにか?」
珍しく笑顔を向けるシャーリィ。
「いや、何でもない」
可愛いと思いつつも怖いとも感じるルイス。
「……これからも遊びに来てくださいね。あなたが無事なのか確認する必要がありますから」
「なんだよそれ」
「そして……その……ベルにはルイと呼ばれてましたよね?」
「ん?ああ、そう呼ばれてるな」
「私も……呼んで良いですか……?」
恥ずかしそうに上目遣いでお伺いを立てるシャーリィ。
「お、おう。別に良いぜ?」
頬を赤らめながら答えるルイス。
「ルイ……ルイ……ふふっ」
「ん……お、おう……」
シャーリィは嬉しそうに名前を呼び、そしてルイスは照れながらも答える。
この日から二人はお互いを意識していく。不器用で幼い、そして真っ直ぐな想いを抱きながら。
ここまで読んでくださったあなたに最大限の感謝を。もしもあなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。
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