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暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~  作者: イワシロとマリモ
動乱の始まり

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黄昏防衛戦3

いつも読んでくださり、またブックマークしてくださりありがとうございます。今回も貴方にとって有意義な時間となりますれば、幸いでございます。

 魔物の群れは鉄条網を次々と踏み潰し、飛来する砲弾や銃弾で数を減らしながらも着実に陣地へ迫っていた。地面はレイミの魔法により凍り付いているが、その環境をものともせずに突き進む大群は、対峙する者に恐怖を植え付けた。

 既に距離は百メートルを切っており、有効な銃撃による効果も目に見えて向上し魔物を次々と撃ち倒していくが、その巨体は生半可な被弾では倒れず撃破数は伸び悩んでいた。




 それを塹壕からじっと見つめていたシャーリィは、凄まじい銃声に耳を塞ぎながらも遠距離戦闘の限界を正しく認識していた。




「着剣!!着剣!!白兵戦用意!」




 マクベスの号令により歩兵達は一斉に銃剣を取り付ける。だが当然その間射撃が疎かとなる。

 それを見越してシャーリィは塹壕から躍り出る。




「シャーリィ!?待てよ!」




 ルイスの制止では止まらず、塹壕の外に乗り出したシャーリィは、勇者の剣を群れの先頭集団に向ける。すると魔力の収束に合わせて柄が光輝く。そして周囲が帯電を始める。シャーリィが最も得意とする雷属性の放出魔法。




「サンダー・レイ!!」




 シャーリィの言葉と共に柄から放出された蒼い稲妻は、集団の左端を突き進んでいたアーマーリザードに直撃。極めて高い電流はその巨体に一瞬にして深刻なダメージを与える。




「まだまだぁ!」




 シャーリィは放電を継続したまま勇者の剣を右へ薙ぎ払うように振るう。当然放出される電流は右へ流れ、先頭を突き進むアーマーリザード十数体を纏めて薙ぎ倒す。倒れた死骸に後続がぶつかり、更に足を滑らせて将棋倒しのような有り様となる。




「すげぇ……!」




「貫けぇえっ!!」




 更に復帰したレイミがシャーリィの隣に立ち、魔力を解き放つ。

 足を止めた群れのあちこちで無数の鋭い氷柱が大地から突出し、十数体のアーマーリザードを貫いた。




「レイミ!」




「お姉さま!お供させてください!」




 妹を案じるシャーリィであるが、レイミの言葉を聞いて前を見据える。




「体力を残してください!少しでも数を減らします!」




「もちろんです!」




「射撃を継続しろ!間違ってもお嬢様方に当てるなよ!」




 二人で群れに向かっていく姉妹を見て号令を飛ばすマクベス。





「ああ、もうっ!」




「お嬢達のあれは慣れてるだろ?さあ行くぞ!」




「はい!お二人をお守りします!」




 それを見てベルモンド、ルイス、エーリカ、カテリナも塹壕を飛び出す。




「レイミ!足元の氷を溶かせますか!?」




「もちろんです!」




「では直ぐにお願いします!」




 シャーリィは妹に指示を飛ばすと、再び帯電を始める。




「溶けよ!氷解!」




 レイミの髪が再び青色に変わり、放たれた魔力は自らが産み出した氷を瞬く間に液体へと変容させると、魔物達の足元は水浸しとなった。




「走れ雷光!ライトニング!」




 そこへシャーリィが射程は短いものの、より高い電流を放出。これによって何が引き起こされるか。それは。




 ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!!!!!!!!!!




 水浸しとなった大地を電流が流れ、その上に存在する魔物に例外無く電撃を浴びせたのだ。

 原理は単純であるが、強力な広範囲攻撃によりアーマーリザードの群れは次々とその巨体を大地に沈めていく。

 鋼のように固い皮膚は電流を通しやすく、それ故に絶大な威力を発揮したのである。『暁』からすれば嬉しい誤算であった。

 だが、逆に悪い意味での誤算も発生した。




 ヴルルッッ!!!!




 アーマーリザードの群れの後ろに控えていたアーマードボアの群れが一斉に加速したのである。

 アーマードボアは固い骨格を持つが、鋼のような鱗を持つわけではない。

 この鋭い牙と頑強な体躯、体長三メートルを優に越える巨大な猪は、ゴム質の皮膚を持ち打撃に対して高い耐性を持つ。そしてそのゴム質の皮膚が電撃によるダメージを最小限に留めたのである。

 更に踏ん張りが効かない故に氷の大地に苦戦して遅れた結果、アーマーリザードがまるで盾に成るように銃弾や砲弾からアーマードボアの群れを護ったのだ。





「アーマーリザードほぼ撃破!しっ、しかし!アーマードボアほぼ無傷です!」




「これでは近すぎます!砲兵隊は支援に備えます!」




 アーマーリザードの死骸を乗り越えてまさに猪突猛進するアーマードボア。その数は優に百を越える大群である。

 観測員の悲鳴と、接近しすぎたために砲兵隊が射撃を中断するに及び、遂に各員は覚悟を決める。




「トカゲはシャーリィちゃん達が始末してくれた!後はデカい猪だけだよ!野郎共ぉ!今夜は猪鍋だぁ!」




「「「はい船長ぉおっっ!」」」




 先ずエレノアがカトラスを抜きながら吠え、それに合わせて海の荒くれ者達五十人が武器を片手に雄叫びを挙げながら塹壕から飛び出す。




「海賊衆に遅れを取るな!黄昏の、暁の盾たる我らの名を轟かせよ!続けぇーーっっ!!」




「「「おおぉーーーっっ!」」」




 マクベスが剣を抜きながら塹壕を飛び出し、暁戦闘団三百名も一斉に塹壕を飛び出して銃剣突撃を敢行する。



 ォオオオオオッッ!!!!!!!




 雄叫びに反応するようにアーマードボアの群れも真正面から突っ込む。




「自警団は戦闘団の後ろに!間違っても一人で対処しないで!集団戦を意識して!」




「「「おうっっ!!!」」」




 エーリカも抜刀しながら自警団を鼓舞する。




「最後は真正面からか。ルイ、お嬢から離れるなよ?」




「当たり前だ!ベルさんだってヘマすんなよ!」




「二人とも、シャーリィの足を引っ張らないようにしなさい」



 ベルモンドは大剣を引き抜きシャーリィの側に陣取り、ルイスはシャーリィの隣に立ち槍を構える。カテリナはAK47を構えてシャーリィの背を護る。




「レイミ、疲れたでしょう。直ぐに下がってください」




 シャーリィは大規模な魔法を立て続けに行使して疲労の色を見せる妹を気遣う。




「いいえ!まだまだいけます!お姉さま!私達姉妹に勝利を!」




 抜刀しながら力強く答える妹を横目に見て、シャーリィも迫り来る群れを見据える。




「ならば是非もありません!真正面から叩き潰します!私達の大切なものを護るために!」




「氷の刃よ!」




 レイミの日本刀の刀身が凍てつく冷気を纏う。

 そしてシャーリィは勇者の剣を静かに構えて、魔力を解き放つ。




「輝けぇ!!!」




 次の瞬間、試作の魔法剣を上回る目映いばかりの光輝く刃が現れる。それはまさに、伝説の勇者が用いていた勇者の剣そのものであった。




「続けーーーっっっ!!!」




 そしてシャーリィを先頭に暁各員はアーマードボアの群れに真正面から切り込む。

 暁存続を賭けた戦いは終盤戦を向かえたのである。

ここまで読んでくださったあなたに最大限の感謝を。もしもあなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。あなたの人生に安らぎと幸福が訪れますように。

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