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暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~  作者: イワシロとマリモ
模索

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キッド一派、ダンジョンへ

いつも読んでくださり、またブックマークしてくださりありがとうございます。今回も貴方にとって有意義な時間となりますれば、幸いでございます。

『エルダス・ファミリー』の幹部キッドは子飼いの部下十人と共に農園の入り口のひとつを訪ねた。




「冒険者ギルドから連絡があったと思うが、俺達が調査団だ。ほら、これが証拠さ」




 ナンバーの付いた腕輪を見せながらキッドは守衛に話し掛ける。




「はい、伺っております。どうぞこちらへ」




 守衛は疑うこともなくキッド達を農園内部へ招いた。ただ通路は巧妙に通され、農園心臓部である畑や工場などは『大樹』によって隠されるようになっていた。




「バカみたいに大きな木だな」




 通路を歩きながらキッドは『大樹』を見る。




「ええ、ここの象徴とも言える『大樹』です」




 守衛は疑問に答えながら歩く。




「象徴ねぇ」




 しばらく歩くと、岩山にたどり着き、ダンジョンの入り口と警戒する『暁』警備員達の姿が見えてきた。

 尚、欺くために警備員達はマスケット銃を装備している。




「彼方が入り口になります」




「急に現れたって聞いたよ。あんたらもツイてないな」




「全くですよ。その分冒険者ギルドから派遣された皆さんには期待しています。それと、一名皆さんに同行することになります」




「誰だい?」




「私ですよ」




 キッド達の視線の先には、豊満な肉体に修道服を纏い美しい銀の髪が特徴的な美人の姿があった。




「ヒューッ。どこのお姫様かな?」




「お姫様とはほど遠いですよ。カテリナです、宜しく」




「おっと、アンタがシスターカテリナかい」




 いきなり現れた暗黒街の有名人にして『暁』の幹部に流石のキッドも驚きを隠せなかった。




「知っていましたか」




「自分が有名人だって自覚は大切だと思うぜ?」




「関心のないことです。今回はわたしも同行させてもらいます」




「そりゃ監視か?だとしたら寂しいねぇ」




「監視と言うよりは、予防線ですよ。冒険者に頼りきりだとうちの評判にも影響しますから、わたしもついていくだけです」




「そうかい、ならお姫様を護るために頑張らないとな」 




 おどけたように言うキッドをカテリナは、感情の乏しい顔で見つめる。




「邪魔をするつもりはありませんし、万が一の時は見捨てても大丈夫ですよ。それであなた達が責められないことも保証しましょう」




「あんたの実力を疑ってる訳じゃないさ、シスターカテリナ。ちょっと仲間と準備するから、入り口で待っててくれ」





 キッド達はカテリナ達から離れて声を潜めて密談する。




「まさか、シスターカテリナが一緒に来るとはな」




「ですがキッドさん、チャンスですよ。ダンジョンの中で仕留めてしまえば誰にも疑われませんぜ」




「シスターカテリナは腕っぷしもかなりの物だと聞いてるがな」




「ダンジョンの中で不意打ちをすりゃいいんです。それか、上手いこと魔物に始末させるって方法もありますぜ」




「そうだな……まあ、あんまり長く話し込むと怪しまれるからな。ダンジョン内部で始末するぞ。どうやるかは状況に合わせていく。だが相手はシスターカテリナだ。無理はしないで行く、それで良いな?」




「「「へい」」」




 密談を終えたキッド達はダンジョンの入り口へ移動する。




「済まないシスター、待たせたな」




「話し合いは終わりましたか?」




「ああ、俺達が前後を固める。淑女の後ろに隠れる趣味はないんでな」




「それは頼もしいことです」




「で、確認しとく。今回の調査はダンジョン内部の魔物の種類とスタンピードの可能性を探るだけだ。つまり、あまり奥までは進まない」




 調査は偽装であり、あまり危険を冒すつもりはないキッド。




「それで構いませんよ。スタンピードの有無が分かるだけでもうちとしては助かりますからね」




「それと、無理は禁物だ。ヤバそうなら直ぐに逃げる。何があっても自己責任、構わないかな?」




「ええ」




「よし、それじゃ行こうか」




「名前を伺っても?」




「そういやまだ名乗ってなかったな。俺はキッドだ。ただのガンマンさ」




「そうですか。ではキッド、短い付き合いになりますが宜しくお願いします」




「シスターカテリナの腕前、期待しているぜ」




 こうして準備を整えたキッド達はカテリナを連れてダンジョンへ入っていく。




「予定どおりだな。慎重な男だと聞いていたが、あっさりと信じたものだ。これでは策を用意した我々がバカのようだ」




 それを見届けたマクベスは呆れたようにルイスへ話し掛ける。




「ベルさんが居ない今がチャンスだって思ってるんだろ。しかもあっさりと本名を名乗ってるし」




 ルイスは肩を竦めながら答える。




「うむ、チャンスこそ最大の危機であると言うのに。わざわざダンジョンへ招かなくても、あのまま抹殺することも出来た筈だ」




「相手は早撃ちキッドだからな。その時はこっちにも犠牲が出るぜ、マクベスの旦那。シャーリィはそれを嫌がってんだ。だからこんな回りくどい作戦を考えたんだよ」




「お嬢様の身内に対する慈悲深さに感謝すべきか、或いは敵を利する行為であると警戒すべきか」




「今は良いよ、上手くいってるしな。困った時は遠慮なくシャーリィに言えよ?旦那。シャーリィは『大切なもの』からの意見を無視したりはしない奴だからさ」




「畏れ多いことだ。お嬢様には敗残兵に過ぎなかった私を拾ってくださった恩義がある。元より意見を申し上げる立場にない。私は与えられた職務を遂行するだけだ」





「相変わらず堅苦しいよなぁ、旦那は」




「それがマクベスの良いところさ」




「ドルマン殿」




 ドワーフのドルマンが酒樽片手に近寄る。




「遠目で見た感じ、あいつらの装備は悪くない。全員がリボルバーを装備してる。うちに比べたら火力は少ないが、下手に戦うと犠牲が出るぞ」




「忠告痛み入る、ドルマン殿。シスターの力量を信じて待つとしようか」




「シスターなら心配するだけ無駄だろ。鼻歌交じりに終わらせてくるだろ」




「どのみち俺達は待つしかねぇからな。酒でも飲みながら待つとしようや」




 酒樽持参のドルマンはその場に座り込み、早速酒を流し込む。




「うっわ。真っ昼間から酒かよ、ドルマンのオジキ」




「お前はまだダメだぞ、ルイス。俺の酒はガキにはまだ早いからな」




「ドワーフの酒はバカみたいに強いって話だろ?飲まねぇよそんなもん」




「おう、まだお子様には分からねぇ味だ。マクベスもどうだ?」




「私は職務中だ、今は遠慮しておく。皆、手筈通り備えよ。不備があるとは思えないが、シスター以外は生きてここから出すな!」




「「「はっ!!!」」」




 戦闘部隊は機関銃を用意してダンジョン入り口へ向けて備える。

『エルダス・ファミリー』幹部キッドは、『暁』の仕掛けた罠に嵌まったのである。

ここまで読んでくださったあなたに最大限の感謝を。もしもあなたの暇潰しの一助となれましたら、望外の事でございます。お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。あなたの人生に安らぎと幸福が訪れますように。

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