番外編 渡り人とロリ王女
「転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい」完結記念に。「渡り人〜」&「ロリ王女〜」共に本編終了から半年後の話。
「うわあああああ!!!
すんごい美少女だーー!!!!
リ◯ちゃん人形じゃないの?!!!」
「ちょ、デフォでその顔なの?!!
転移特典ガチャ無しでそんな可愛い顔とか…
恵まれすぎやろ!!!!」
…前半は仁亜、後半はライネベルテのセリフである。
―ひと月前に、話は遡る。
あの魔獣騒動から半年が過ぎ、ようやく人々の暮らしが元に戻り始めた頃。
仁亜の所に、一通の手紙が送られてきた。
差出人は、マルロワ王国の王女ライネベルテとあった。
彼女とはこれまで何の接点もなかった仁亜は、送り先を誰かと間違えたのではないかと思った。
そしてマルタナアイ語がわからないので、アイザックに読んでもらう。
その内容は、「奇跡の力を持つ、救いの渡り人と呼ばれる貴女と是非話がしたい。よろしければマルロワ国へお越し下さい」と書かれていた。
さらに追伸もあった。アイザックでも読めないと言われ、覗いてみると…
日本語で、「この文字が読めるかしら?私は前世で日本人でした」と書かれていたのである。
仁亜は仰天し、すぐさま返事を書いて…今回の対面に至るのである。
それからの、冒頭のセリフだった。
「あ、いきなり騒いでごめんなさい。
はじめまして、仁亜です。日本から異世界転移してきました」
「こちらこそ、興奮してしまって申し訳ございません。
マルロワ国王女、ライネベルテです。どうぞロリとお呼びくださいな。
元日本人の、異世界転生者ですわ」
…二人ともツッコミ所満載の自己紹介であった。
「わかりました、ロリ様。早速ですけど…。
元日本人って本当ですか?
…って、まぁ手紙に日本語が書かれていたからそうなんでしょうけど…」
「仁亜様。ロリと呼び捨てで構いませんわ。っていうかタメ語でいいし。
ふふっ、じゃあ証拠を見せよっか?」
「じゃあ…ロリちゃん、私も仁亜ちゃんって呼んでくれると嬉しいな。
それで、証拠って…」
すると、ライネベルテはドヤ顔で、当時日本で流行っていたギャグを言いかけた。
「……安心して下さい?」
「……え?何に??」
「ジェネレーションギャップですよおおおおお?!!!」
…とにかく明るい、若干古いライネベルテのギャグが、仁亜には分からなかった。
・・・・・・・
「………そっか、仁亜ちゃんはまだハタチそこそこなんだ。
あたしは前世では26歳だったの。転生して、さらに11年経ったから…当時流行ったギャグが古くなっても仕方ないかぁ…」
少し落ち込んでいるライネベルテに、仁亜は頭を下げた。
「な、なんか…ごめんね。
だけどロリちゃんが元日本人ってのはわかったよ…」
「ううん、それならいいわ。じゃあ本題に入るわね。
仁亜ちゃんをマルロワへ招待したのは…日本から来たって聞いて、是非お話ししたいと思ったからよ。
それと…重要な事を聞きたかったの」
「重要な事?」
そう聞いて、仁亜は少し身構えた。
なんだろう。自分を異世界転移させた人物…天上人についてだろうか?
それとも魔獣騒動の犯人、アーバンについてだろうか?
そう、色々と考えを巡らせていると…
「仁亜ちゃん、あなたアイシス国の近衛隊長と婚約したそうね?
その…もう、したの?」
「……………はい?」
突然、自分とアイザックさんの話になった。予想外の流れに仁亜は目が点になる。
「…さっき仁亜ちゃんの後ろにいた人よね?近衛隊長さんって。
真面目そうなイケメンさんだったわね。
それで、もう、したの?」
「……?したって、何を??」
ライネベルテはたちまち顔が真っ赤になる。
「〜〜〜〜っ!!アレよ!アレ!!
婚約したって聞いたから!彼とは、もう、したの?!
良い家柄の所は婚前はダメで、初夜まで我慢するって話も聞くけれど…!」
「え…?!アレ、ってまさか…」
仁亜も何となく意味が分かり、顔がみるみる赤くなっていく。
「う、うわああああいきなり何を聞いてくるのよロリちゃーん!!!」
「だだだだって!!私前世でも経験なかったんだもん!!!
私、好きな人が出来たし…いずれその時が来たらどうしたらいいの?!教えて仁亜ちゃん!!」
「うわああん!!私だってまだだもん!!
わかんないよおおおお!!」
「……え?あ、なーんだ。そっか!
仁亜ちゃん達はまだだったのね。なら別にいいわ。ごめんね、しつこく聞いて」
途端にライネベルテは通常運転に戻った。
仁亜は拍子抜けする。
「ちょっ!ロリちゃん態度変わり過ぎ…!
でも…わ、私だって少しは知識があるよ?!友達に借りた少女漫画とかだけど…!」
「うーん、漫画と現実じゃあ全然違うでしょー?」
「そ、そんな事ないんじゃない?少女漫画でもリアルな所はあったよ?
例えば…男性が女性にキスしながら胸
『ムーンライトながらああああああ!!!!』
え?!大声出して突然どうしたのロリちゃん?!」
ライネベルテは、仁亜の際どいセリフを、日本で有名な深夜の夜行列車の名前を出してかき消した。
「ゼェ…ゼェ……に、仁亜ちゃん…ここでそれ以上詳しくその話を進めたら……ムーンライト乗車してしまうわ………!!」
「??よく分かんないけど…
な、なんかごめんね…ロリちゃん…」
仁亜はまだゼェゼェ言っているライネベルテに、思わず謝るのだった。
―その後。
ようやく二人はお互いの生い立ちや近況について詳しく話し、交流を深めた。
そして仁亜が帰る時間になったので、泣く泣くお別れの挨拶をする。
「仁亜ちゃああああん!!ウチらズッ友だからねええええ!!!」
「ロリちゃああああん!!また絶対呼んでねええええええ!!!」
二人はすっかり仲良しになった。
仁亜は帰り際、道中護衛をしてくれたアイザックを見る。
「…?どうしたニア?」
「ふふっ、別に。なんでもないです」
「?ライネベルテ様と随分楽しそうに話していたな。何を話していたんだ?」
「えへへ、内緒です」
「?」
仁亜は照れながら答えた。
いずれ彼とは「その時」が来るだろう。そう思うと顔が真っ赤になる。
それでもまあ、何とかなるだろう。と、仁亜はそっと彼の手を握るのだった。
そしてライネベルテは城へ戻り…
「…まぁ、成人するまであと何年もあるんだから…ゆっくり心の準備をすればいいわね…
スヤァ………」
と、未来の自分に色々丸投げをして爆睡するのだった。




