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シェパード家の番犬

ニア達がわちゃわちゃしていた頃その3


「クルセイド様!コーデリア様!ご無事ですか?!」


 奥の扉がバタン!と勢いよく開き、シータが入ってきた。


「うん、大丈夫だよ。魔獣もソルトが倒してくれたし」


 クルセイドが答える。


「急にお二人で飛び出して行ったかと思えば…もう、心配させないで下さいませ!

 …って、既に同じ事をソルトに言われたようですね」


 シータは苦笑して、大泣きしているコーデリアに近づき、ハンカチで顔を拭ってあげている。それでも泣き止まない。

 シータはチラッとソルトを見た。彼は今日何度目かのハァ…というため息をつき、頷いた。


「クルセイド様もこちらへ…お二人が無事で良かった。助けて頂き、ありがとうございました」


 そう言って、二人をそっと抱きしめてあげた。


「危ない事してごめんなさい」


 とクルセイドは謝り、


「…ぐすっ…うふふっ。どういたしまして」


 コーデリアはあっさり泣き止んだ。


「それにしても…あの体当たりの威力は異常だ、魔法の力だけではない。

 先程背負っておられた、その盾に秘密があるのですね?クルセイド様」


 ソルトは質問した。


「うん。この盾はね…あまり詳しくは言えないんだけど、魔法とかも防げるすごい防具なんだ。

 大人なら一人で使えるらしいのだけど、ボクとコーデリアは子供だから、二人で一緒なら使えるんだ」


「すごい武器ですか。風魔法と合わせれば、防御しながら攻撃できる…凄く便利ですね。

 ちなみに、それはギリアム殿下から譲り受けたのですか?」


「うん、おとうさまは使わないからあげるって」


 そこへ、コーデリアのツッコミが入る。


「使わない、じゃなくて使えなかったのよ。おとうさまは。だって重たくて持つのも嫌、って言ってたじゃない」


「ハハ…殿下らしい…」


 と、そこへもう一人息せききって駆けつける人物がいた。


「ハァ………ハァ………!や、やっと追いついた……」


「宰相様?!大丈夫ですか?!」


 ソルトはゼェゼェ言っているシュルタイスの元へ駆けつけた。


「ああ…だ、大丈夫だ…王子達を追いかける途中で急に腰をやられてな…もう歳か……かばいながら走るというのは中々大変だな……」


 そう言いながら息を整えたシュルタイスは、王子達に向かって言った。


「全く……貴方達は……」


「シュルタイス、同じお小言は3人目だからもう嫌だよぉ」


 ガミガミと始まったお説教に、クルセイドは半ベソをかいていた。


「だまらっしゃい!全く…この年頃の子供は平気で無茶をするから手に負えん!

 子供………はっ、セイバーは大丈夫だろうか?!コハルは?!!コハルは無事だろうか!コハルーーー!……っつ!腰が……!」


 シュルタイスは腰をさすりながら、自宅がある方角を見ていたのだった。





・・・・・・・






 ここはシェパード家へと続く登り坂の途中。



 一体の魔獣と、とある少年が対峙していた。


「本当、アマタは自分勝手だよねー。マルロワに向かうなら、この辺の魔獣を全部倒してから行けばいいのに」


 少年の足元には何体かの魔獣が転がっていた。全てこの子がやったのだ。


「…アーバンはおかあさま…渡り人も狙っていたんだね。こんな所まで魔獣がやってくるなんておかしいもん。僕がいて良かったよ」


 白髪に虹色の目…彼の人らしからぬ姿形と雰囲気に、大鹿型の魔獣は警戒していたが、痺れを切らし角を向けて突進してきた。


「おっと!危ない危ない。うーん、僕小さいから避けるのは得意だけど、流石に疲れてきたなぁ」


 サッとかわし、首元に光をまとわせた手刀をお見舞いする。魔獣は全身をビクつかせた後気絶し、その場に倒れた。


「ふう、これで最後かな。あー疲れた。コイツらまとめて広場に置いとこ。まだ息してるけど後は殿下達に任せちゃえ」


 やれやれ、といった感じで少年はその場から魔獣を連れて姿を消した。

 いつの間にか髪が銀髪に変わりつつあったが、周りには誰もいなかったため見られる事は無かった。





・・・・・・・





 しばらくして、シェパード邸のキッチンでは小春がセイバーと話をしていた。


「まぁセイバー、ここにいたのね!急にいなくなるから心配したわ。何をしていたの?」


「えっとね、おなか空いたから何かないかなーって」


「えっ?あらそう、何か食べたいものがあるの?私が作ろうかしら?」


「ううん、何か眠くなっちゃったからいいや。自分の部屋でちょっとお昼寝するよー」


「?そう?外は魔獣がいるかもしれないから、絶対に出てはダメよ」


「はーい」


 セイバーは返事をして、自室へと戻った。


「ふわぁ…頑張りすぎたかな。体に全然力が入らないや…少しだけ休もう。

 こっちは大丈夫だから、後は任せたよ。ニアおねえちゃん」


 セイバーは窓から外の様子を見つつ、そう呟いたのだった。


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