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あおられるラッキースケベ


 天使が二人もいる。


 彼らに足元に抱きつかれて幸せ絶頂の仁亜の元へ、さらに女神が現れた。


「あら、ニアに遊んでもらっていルノ?」


「「はい、おかあさま!」」


 女神の正体はヒルダ様だった。後ろにはシータさんもいる。お茶会以来だけど、美にますます磨きがかかっている気がする。殿下と仲直りしたおかげか。


「こんにちはヒルダ様。お散歩ですか?」


「ううん、コーデリアとソルトのボール遊びを見ていたケド…。いつの間にかいなくなっていたから、追いかけてきタノ。クルセイドも稽古から戻ってきたノネ」


「はい!今日もおけいこがんばりました!先生に筋がいいとほめられました!」


 ヒルダ様の所へ向かい、えっへんと胸を張るクルセイド様。頭を撫でられて嬉しそうだ。

 その様子を見たコーデリア様は、なぜかソルトの元へ走っていく。


「ねぇソルト、わたくしもさっき風魔法を上手に使えたでしょう?ほめてほめて!」


 そう上目遣いで見ている。うわあ、美少女だから破壊力がすごい。ボール投げの速球力もすごかったが。

 ようやく立ち上がれたソルトさんは、戸惑いがちにヒルダ様を見た。

 目が合い笑顔で頷かれると、苦笑し左手で胃をさすりながら、右手で頭を撫でてあげていた。


「うふふっ。実はこんな事もできるようになりましたの!」


 気を良くしたコーデリア様は、ポケットから数枚の花びらを出して両手のひらに乗せた。

 スゥ、と息を吸うと花びらがふわりと浮く。そのままらせんを描くようにクルクルとまわっている。


「これは…本当にすごいですね」


 ソルトも思わず感嘆した。


「もっと集中すれば速さも増しますわよ!」


 調子の良いコーデリア様は、先程よりも力を込めている。クルクル舞っている花びらの速度が上がった。


 おお、と皆がコーデリア様に注目している時に、ふと誰かにワンピースの裾を摘まれた。



「あら、クルセイド様。どうされました?」


「ボク、ニアさまにお願いがあるのですが、聞いてもらえますか?」


「はい、いいですよ」


「ボクのお嫁さんになって下さい」


「はい、いいで………ええっっ?!!!」



 いきなり何を言い出すの?!

 そんな、ちょっとオヤツでも下さいのノリで、と仁亜は混乱した。

 いつの間にか彼女の後ろにいたアイザックも、ピクッと反応する。


「どどどどうしたのですか急に?!」


「急ではないですよ。ボクは前から考えていました。渡り人さまが現れたと聞いた時から」


「そ、それはどうして…?」


「歴代の渡り人さまはふしぎな力をお持ちでした。そしてニアさまも。そのお力をぜひアイシスの血脈に加え、さらなる国の発展へとつなげたいのです」


 うわあああすっごく国の事を考えてるうううう。本当にあのチャラ殿下の御子息なの?!

 まぁ、どストレートに女性を口説いてきたのは血筋と言えなくもない…?


「とととても素敵なお考えだと思いますが…私とじゃ年齢の差が…」


「たしかにニアさまとは11歳ちがいますけど、ボクが結婚できる20歳の時にニアさまが31歳と考えると、そんなに気になりませんよね?」


「う、う〜ん?そうですかね…?」


「ニアさまはニホンに恋人がいるのですか?」


「いえ、いないですけど…」


「ボクの顔、好みじゃないですか?」


「ととととんでもない!将来美男子間違いないですよ!」


「じゃあいいですよね?自分で言うのもなんですけど、良い相手だと思います。王族だし」


「たたた確かに断る理由がない……!」


 今こそ誰か私にツッコミを入れて欲しい。きっと、きっと駄目な理由があるはずだ。

 そう思い、ふと視線を横にずらすとヒルダ様と目があった。

 そうだ、ヒルダ様!こんなアホ毛女が義理の娘になるなんて言語道断ですよね?!と視線を送ると…笑顔でパチパチと小さく拍手していた。ええんかい!!

 じゃ、じゃあシータさああん!とすがるような目で見つめると、真顔で口元を手で押さえて両肩を震わせている。これは楽しんでいるな。

 コーデリア様とソルトさんは花びらに夢中でこっちを見ていない。


「ボクはおとうさまとちがって、いろんな女の子に声をかけたりしません!一生その人を大事にします!…ダメですか?ニアさま」


 たっ、畳みかけてきたあああ!しかもチャラ殿下を完全に反面教師にしているうううううう!!立場ないな殿下!!


 あう、あう、といつぞやのオットセイになっている仁亜の後ろで右手が小刻みに震えている人物がいた。アイザックだ。

 何やら言いたそうな顔をしているが、相手が王族ゆえ発言できない。

 一瞬青ざめたかと思えば、目つきを鋭くし殺気を抑えようとする…実はシータはその葛藤を仁亜越しに見て、笑いを堪えていたのだ。


 彼の震える手が仁亜の肩をつかもうとしたその時、ふいに彼女がクルセイドの前に歩み出で前屈みになった。


「ねえ、クルセイド様。あなたは私を見てどう思いましたか?」


「え?笑顔がすてきで優しそうだなと…」


「それだけ?ドキドキとか、しません?」


「ドキドキ…?なんですかそれは」


「それはね、その人を想うだけで顔が赤くなったり、嬉しくなったり、時には苦しくなったりするものです。結婚するには必要なものなの。

 あなたは私に対してそう思わなかった、私からもそう。だからね、結婚はできないのですよ。私達は」


「そんなものが結婚には必要だったんだ…ボク知りませんでした」


「ふふっ、これから大人になるまでにお勉強したらいいんですよ。時間はたくさんありますから」


 ニコッと笑った仁亜を見て、クルセイドは真っ赤になった。そしてアイザックは密かに安堵していた。



 ―だが、これで終わりではなかった。

 ずっと花びらを舞わせていた、コーデリアの集中力が切れた。

 そのため高速で回転していた花びらがコントロールを失い、強風をまとって仁亜達に向かい飛んで来たのだ。

 咄嗟にシータはヒルダの前に出て壁となった。仁亜はクルセイドを包むように抱きしめる。そして後ろにいたアイザックは…固まっていた。


 なぜなら、強風にあおられた仁亜のワンピースがめくれて、彼の視界に入ってしまったからである…。

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