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アイザッ空気

ただの説明回その2


(ああ…こうなったら洗いざらい話すわ…バレちゃったんだもの…なんでも聞いてちょうだい…)


「そんな急に投げやりな。あ、そういえば天上人様には名前はないのですか?」


(アーバンにも聞かれたから…考えたわ…私の名前はアマタ…アイシスとマルロワとタナノフの頭文字を取ってつけたわ…これでも精一杯考えたのよ…天上人に名前なんて概念はないもの…)


「じゃあせっかくだからアマタ様と呼ばせてもらいますよ。天上人様より呼びやすいし。

 それで、今後私はどうしたらいいのですか?」


(アーバンは今…マルロワにいるわね…何をしているのかしら…それならニア…あなたはアイシスに戻って…3つの国に有事が起きたと伝えて欲しいわ…時間がないんだもの…)


「戻るのは構いませんけど、アマタ様は回復できそうなんですか?というか、どこにいらっしゃるんです?」


(もうあなたが私を認識したから…城まで離れていても力はもらえるわ…安心して私の養分になって頂戴…あと私は…目の前にいるわ…噴水前にある像…それが本体よ…以前から民が救いの女神様って言いながら拝むけど…困るわ…私は『天上人』だもの…勝手に変な呼称をつけるのは…やめて欲しいわ…)


 ああ、遠くに見えるあの女性の像か。民もこんな傲慢な人が女神様だと知ったらさぞショックだろうな、とひそかに思う仁亜だった。


「はいはい。じゃあ城に戻って報告して、各国に伝令を送って…数日はかかりそうですけど平気ですか?」


(大丈夫よ…彼は…各国に一斉攻撃するのでしょうね…魔獣を大量に発生させているわ…あと一週間くらいはかかるんじゃないかしら…数自体はまだ少ないもの…)


「わああああ全然大丈夫じゃない!!それは一週間がタイムリミットって事じゃないですか!!」


(アーバンは…私はもちろん、各国の王族にも強い恨みを持っているわ…昔、神器によって痛めつけられた過去があるものね…魔獣が王族のいる城へ直行するのも…彼が闇の力で操っているせいよ…)


「ああなるほど、基本的には一般市民よりも王族を優先して襲え、と。完全に逆恨みだけど」


 そうだ、最近魔獣が増えたと城で話があったじゃないか。一刻も早く城に戻って迎撃の準備をしないといけない。



(もう質問はいいかしら…ニア…私はより早く回復するために…あなたとの交信を一旦止めるわね…でも何かあれば強く念じて頂戴…助けてあげるわ…天上人だもの…それぐらいは朝飯前よ…それじゃあ準備が整ったら…またこの像の前に来て…)


 そう言いたい事だけ言って、アマタ様の声は聞こえなくなった。



「じゃあもうちょっと真面目に世界を作って管理してくれませんかねええええ?!!」



 そして仁亜のむなしい叫びが馬車内に響いた。




・・・・・・・





 大声で叫んでから、ハァ…どうしよう…とため息をついた仁亜に、スッと水筒が差し出された。



「えっ?!誰?!」


「……俺だが…?」



 あ、アイザックさんだった。そういえば居たわ。すっかり忘れていた。


「…すみません。いただきます。……ぷはぁ!ああ〜渇いた喉にしみる〜」


「どうやら話は済んだようだな。では、最初から説明して欲しいのだが…叫んで疲れただろう。城に着くまで少し休むといい」


 そう言いつつ、彼は私が返した水筒の水を飲んでいる。普通に口つけて。飲んでいる。


 つまりですよ。関節、あ、間違えた間接の…



「おっ、おうっ、おうっ、おやすみしなくても大丈夫ですうううう説明しますううう」


「?そうか、じゃあ頼む」



 …ついオットセイになってしまった。私はこんなに動じているのに、アイザックさんは普段通りだ。恥ずかしい。

 こういう回し飲みって抵抗ないのかな。近衛隊の訓練中とかで当たり前にしてるの?

 例えば部下と一緒に…サーシャさんにも同じ事してたのかな。あ、なんかモヤっとする。あとセルゲイにも同じ事するのかな。あ、なんかウエっとする。


 それから仁亜は深呼吸して一旦落ち着き、説明を始めた。天上人の存在、アーバンの目的、魔獣の大量発生と侵攻…。

 流石に普段冷静なアイザックさんもびっくりしていた。

 

「フッ…ニアと一緒にいると驚かされる事ばかりだな。いいさ、魔獣がアイシスに攻めてくるなら喜んで相手してやろう」


「さすが!アイザックさん頼もしい!」


「それで天上人とその紛い物らの、目的は理解したが…まだ肝心な事が分かっていないぞ。

 そもそも何故ニアが召喚されたんだ?ニアじゃないと駄目な理由が?」


「えっ、確かに…。私日本では本当に普通の人間で…って言い方もアレですけど。

 うわあああああアマタ様の要求ばっかり聞いてたら大事な事を聞き忘れてたああああ」


「…そういうお人好しな所は個性といえば個性だが…」


 アイザックさんが呆れている。

 くうっ、さっきまで存在感なかった癖に、痛い所はついてくる。仁亜はほっぺたを膨らませた。

 

「…そうだ、アーバンを倒したらアホ毛を直すって言ってたんだ。けどそれより日本に帰してもらわないとですね!

 天上人は力を取り戻せばなんでもできるって言ってたし、こっちに召喚したなら逆に帰すこともできますよね。

 アマタ様のお願いばっかり聞いてましたから、それぐらいしてもらわないと。割に合わないですもん」


「なっ?!!なんだって?!!!!ニホンに帰るだと?!!!」


「わっ、どうしたんですか急に」


 彼は先ほどまで空気のような存在だったが、一転して嵐へと進化したのだった。

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