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天上人だもの

ただの説明回になってしまいました。


 町に着き、一泊した翌日。


 仁亜達が乗った馬車は城下町の広場を通過しようとしていた。


「もうすぐです。あの辺りで気を失いました」


「そうか。できれば避けて通りたかったが、そうもいかなくてな。身体は大丈夫か?」


「はい、今のところ何もないで……」 


 そう言いかけた時だった。



(ニア……ニア………聞こえるかしら…?)



「えっ…女の人の声………誰……?!」



 誰かが私を呼んでいる。



(私は『天上人』…この世界を創りし者…今あなたのアホ毛を通して…直接脳内に話しかけているわ…ずっと呼んでいたのに…あなた全然気づかないんだもの…)



「初っ端からツッコミ所のオンパレードおおおおおお!!!」

 

「どっどうしたニア?!誰と話している!」


 突然大声を出す仁亜に、アイザックさんも混じってさらにカオスだ。私は下を向きながら手で制した。


「ちょっ、ちょっと待ってくださいねアイザックさん!今多分めちゃくちゃ重要な人物と脳内で交信しています!馬車を止めて!

 身体は平気ですから続けさせてくださいお願い!」


「?!わ、わかった。何かあったらすぐ言ってくれ」


 仁亜の勢いに押されて、馬車を止めた後静かになるアイザック。彼女はそれから祈るようなポーズをとった。


「えっとすみません…天上人?さん。色々、いーろいろ聞きたいんですけど。順を追ってご説明頂けますか?」


(そんな時間はないわ…『あの男』に気づかれるもの…私の『力』が戻りつつある事を…今だってあなたのアホ毛を通して力を貰っているわ…完全に戻るまでもうすぐよ…)


「…人を養分扱いしないでください!はっ!まさか、この世界に来てからアホ毛なんてできたのは貴女の仕業ね!!」


(そうよ…あなたをニホンから呼んだ時…私の位置が分かるように…アンテナ代わりのアホ毛をつけたのだけど…あなた中々気づいてくれないんだもの…気が気じゃなかったわ…)


「知らんがな!そりゃ城から一歩も出なきゃ、毛がどんな方向を示そうがわからないじゃない!

 こっちだってこのアホ毛と一生付き合うかもと思ったら、気が気じゃないわ!」


(力が完全に戻って…あの男を倒したら…元の髪に戻してあげるわ…私天上人だもの…ちゃんとお礼もするわよ…)


「そのテンジョウビトって何ですか?それであの男を倒すって??」


(私は…この世界を創った者よ…簡単に言うと…あの男というのは…元は人間で…私が血を与えた天上人紛いの者…彼は力を得た途端私に楯突き…この世界を支配しようとしたの…欲が出たのね…目つきがヤバかったもの…だから私は彼を倒さないと…)


「簡単になんてもん創っちゃったんですか天上人様!え、今もその男の人がどこかにいるんですか?」


(ええ…彼は昔私と戦って…お互い身体を失いかけたわ…でもどちらも完全に消滅してはいない…きっと私のようにどこかで再起を図っているわ…アイツ執着心強かったもの…)


「うええ。じゃあそいつも誰かにアホ毛をつけて養分吸い取ってるの?怖っ!

 あ、もしかして昨日見た夢の人物って…」


(そう…あの男…アーバンと私よ…昔の記憶をあなたに見せたの…あなたに理解してもらいたかったんだもの…)


「いやあれだけじゃ全然理解できませんでしたよ。2人とも血塗れで終盤戦って感じだったし。

 さっきの話で、そのアーバンさんが貴女と争いになった事はわかりました。でも、どうして貴女は彼に血を与えたのですか?」


(順を追って話すわね…最初にこの世界を作った時…なかなか成長しなかったのよ…文明も文化も…私は何百年も見届けていたけど…退屈しちゃったの…だからそれぞれ特徴を付けて3つの国に分けた…そうしたら国は急成長したけれど…やがてお互いの国を支配しようと争い始めたわ…そんなの予想外だったもの…驚いちゃったわ…)


 え、この世界ってそんなに適当に作られたの?と仁亜は思った。天上人は続ける。


(多くの民が亡くなったわ…私は大陸の中心にある山に降りて…今後どうしようか考えてたの…その時にアーバンという人間がやってきたわ…住んでいた村を焼かれて…逃げ延びてきたのよ…彼は私に…戦争を終わらせて平和な世界にしたいと訴えたわ…だから血を与えて力をつけさせた…感動しちゃったんだもの…)


「今更ですけど天上人様って語尾が特徴的ですね。ふうん、アーバンさんって良い人じゃないですか」


(ここまではね…彼はあっと言う間に3つの国を制圧したわ…だって天上人に等しい力だもの…でもその頃には…既に彼の心は欲に支配されてしまった…久しぶりに私の前に現れたと思えば…自分がこの世界の管理者となるから…お前は妻になれとぬかしたのよ…)



「うわぁ、唐突なプロポーズ」



(彼の気持ちが理解できなかった…だって私が与えた力なのに…それをさも自分のモノのように…そもそも私は人間じゃない…妻だの何だの分からない…天上人だもの…冗談じゃないと断ったわ…その瞬間彼は激怒して…力づくで私を屈服させようとしたわ…)



「うわぁ、唐突な病み」



(分が悪かったわ…私は彼に血を与えた影響で…弱体化していたのだもの…だから逃げて…3つの国に助けを求めたわ…それぞれにアーバンへ不満を持つ者達がいたから…神器と引き換えに…)


「神器?」


(私の上司が…親だけど…私に作ってくれた武器よ…剣と盾と羽衣の3つ…どれも強力よ…本当は人間に渡してはいけない代物だけど…私は弱っていて使えなかったんだもの…彼らに持たせてアーバンと戦わせた…お陰で形勢が逆転したの…だから私は最後の力を振り絞って彼と対峙したわ…)



「なんか天上人様、美味しいところだけ持っていった気が」



(最後はあなたが見た夢と同じ…ほぼ相打ちだったわ…私も…多分彼も…身体が消失しかけて…長い時をかけて回復して…今に至るの…協力してくれた3つの国の英雄達には…そのまま神器を与えて…お互い牽制し合いながら国を統治しているわ…)



「良くも悪くも、3つの国がそれぞれの神器を持つ事で、争わずに発展していったのですね」


(そうよ…それでね…ハッ…巨大な闇の気配が…大変!…アーバンに気づかれたわ…)


「はああああ?!!!!でも実はちょっと気になってたんですよ!!!天上人様ってば『時間がない』って言いながらずいぶん長いこと話すなあって!!!」


 ―この世界、ダメかもしれないと思う仁亜だった。

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