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「絶対〜するなよ」はフラグだ


「うわっ!お前ひでぇ顔だぞ大丈夫か」


「ひどいのは顔じゃなくて顔色でしょうが!!!相変わらず失礼なヤツだな!」


 悪夢から覚めて、寝不足でボーッとする頭と体を、洗顔と朝食でなんとか動かし始めた矢先。

 本日の護衛係だと訪れた近衛隊メンバーがコイツである。失礼セルゲイ。


「…なあ、悪かったって。この前の事は」


 急にセルゲイが謝ってきた。


「お前がその…元の世界で結構苦労してたってのを聞いたし。

 『頼むからこれ以上騒ぎを起こさないでくれ』ってソルトから胃ぃ押さえながら言われたし」


「謝った理由は大体後半のせいでしょ…。別にいいよ。

 こっちもカッとなっておっぱいの谷間見せてごめんなさい」


「おっ、お前なぁ!またそういう淑女らしからぬことを…!っていうかお前20だってな。俺22で年上なんだから敬えよ」


「嘘?!あまりに言動が幼いから年下だと思ってたわー。はいはい敬うよセルゲイお兄たん。ついでになんかちょーだい」


 そう言って仁亜は手を出すが、即弾かれた。


「う、うるせぇ!妹系は俺の好みじゃねぇんだよ!俺が何かもらいたいくらい…

 そうだ、お前『救いの渡り人』なんだろ?俺まだ何も救われてねぇぞどうなってんだ」


「何そのネーミング。だって別に意図的に救ってる訳じゃないもん。あ、妹系が嫌いって事は年上好きなの?」


「なんだよ藪から棒に……まあそうだな。

 年上でしっかりしていて、身だしなみもちゃんとしてて芯の強いヤツ。

 そんで髪はサラサラの銀髪ストレートでクールで長身でスタイルがいいと、なお良しだな」


「まじかよサーシャさんか」


「なっ、なぜわかった?!!」


「わからいでか」






・・・・・・・






「言うなよ、絶対本人に言うなよ!」と某芸人を思い出す前フリをかまされながら、仁亜はセルゲイと訓練場へ向かっていた。


 今日は部屋で歴史の勉強をする予定だったが、近衛隊と騎士団との合同訓練があるそうなので、せっかくだから見学させてもらう事になった。

 元々私の護衛予定だったセルゲイにも、私は見学してるから参加して良いと伝えると嬉しそうだった。脳筋め。


 なぜ合同訓練があるかというと、最近魔獣の動きが活発化していて、一般市民を守る騎士団と要人を守る近衛隊で、スムーズに連携できるよう交流を深めるのだそうだ。


 訓練場に着くとサーシャさんが走っていた。銀髪のポニーテールが揺れていて綺麗。彼女は仁亜達に気づくとこちらに向かって来た。


「おはようございますニア様。セルゲイも」


「おはようサーシャさん!今日もカッコいいね」


「お、おう、おはようサーシャ。オレも訓練に参加する事になった。わ、悪ぃけど着替えてくるから少しだけこの場を離れていいか?」


 明らかに意識しているセルゲイ、わかりやすい。サーシャさんも気づけばいいのに、真面目な顔で答える。


「ああ、ニア様の事は任せておけ。…ニア様、顔を洗いたいので少し移動してもいいですか?」


 返事をして、訓練場の端っこにある井戸へ向かった。

 サーシャさんは顔を洗いタオルで拭いているが、前髪に水がかかりキラキラしている。女の私でも惚れそうだ。

 こんな美人さんでもアイザック隊長は相手にしなかったのだ、隊長はよっぽど理想が高いのだろう。30過ぎてまだ独身って聞いたし。


 あれ、なんかちょっとイライラする。なんでだろ。

 そうだ。昨日サーシャさんに寝技をかけられて(夢の話)こっちは寝不足でグロッキーなのに、当の本人は朝からキラキラと爽やかなのだ。

 ちょっとからかってやろう、と仁亜のイタズラ心がわいてきた。


「ねぇ、サーシャさん。セルゲイがさ、『オレの好みは年上長身銀髪美女だ』って言ってたよー」


「へぇ、セルゲイが。意外ですね。アイツは年下の小さくて可愛らしい女の子が好みだと思っていたので」


 ……悲しいほどにすれ違っている!!!

 さすがに仁亜はセルゲイに同情した。ちょっと助けてやるか。


「結構、というかほぼサーシャさんに当てはまってると思うんだけど…どう思う?」


「どう、と言われても…。私は近衛隊の連中から好意を伝えられた事は一度もないし、モテないと思うので」


「そうかなあ?」


「酒癖が悪いのが発覚したし、連中には女として見られていないのだと思う。悲しいけれど」



「―――そんな事はねぇよ!!!!!」



 仁亜が「そんな事はないよ」と言いかけた時、同じセリフが勢いよく後ろから聞こえた。セルゲイだ。サーシャさんが驚いている。


「サーシャが近衛隊に入った時何人の野郎がお前に目ぇつけてたと思う?!

 オレが同期ってのを利用して、そいつらから何かと遠ざけてたんだよ!

 …まあ酔うと寝技をかけると知って大抵のヤツは尻込みしたがな、オレは首絞められて気絶しても嬉しかったぞ!好きだから!!」



 そういってサーシャさんを抱きしめるセルゲイ。



「な、何を急に…今までそんな素振り一度も見せなかったじゃないか!」


「…今見せた」



 固まって真っ赤になったままのサーシャさんに、同じく真っ赤になったセルゲイがぼそっと言った。




 ―そして仁亜はというと、「昨日の話に出ていた変態はお前だったのか」と若干引いていたのだった。

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