ロリータ嬢爆誕
翌朝、アイザックはカイザー王に呼ばれていた。
「朝早くから呼び出して悪いのう」
「いえ、大丈夫です」
「おやアイザック、その顔…昨晩はあまり寝ておらぬのか?」
「ええ、まあ…」
「ほう?あの子の様子はどうじゃ?」
「まだ就寝中でございます。疲れていたのでしょう」
「疲れて…ほう!ほほう!そうか〜やはりお主も男じゃったか〜」
「…?私は元々男ですが?」
何か盛大な勘違いをしている王であった。そして後ほど二人の間に何も起こらなかった事を知り、(手を出さぬとは…あやつ本当ニブチンじゃの)と内心毒づいたのである。
話を戻そう。
「まあよい。お主を呼んだのは、ちょっと面白…いや大変な事になってのう。お前の兄についてじゃ」
「兄上がどうしましたか?」
「隣のマルロワ王国の、第一王女との結婚が決まったぞい」
「はい?!兄は武闘会に参加した際に大怪我をし、マルロワ王国の静養所にいるそうですが」
「うむ。この前ワシも見に行った大会じゃ。その大会を王女も観覧していてのう、一目惚れだったそうじゃ」
「自由奔放な兄上でしたが、まさか隣国の王女に懸想するなんて身分不相応な事を…」
「何か勘違いしとるな。一方的に惚れて押しかけて、直接プロポーズしたのは王女だそうじゃよ。もし好きでなくとも立場的に断れんじゃろ。ワシもビックリしたわい」
「いえ、兄上は自由人ですから。嫌だったら神でも王族でも敵に回してでも断れる人です。きっと本人も満更ではないのでしょう」
「王族はダメじゃろ…。それでじゃ、近々挙式をあげる準備をせねばならん。向こうが王族じゃろうが、こちらでもそれなりに身支度させてやらねば、アイシス王国の名が廃るからの」
「………」
「今まで秘匿にしておってすまぬ。話がある程度まとまったからのう。お互いの国に周知して良いという事になった。お主も急ぎ実家に戻り父親に伝えるとよい」
「………」
「なんじゃ、ずっと黙り込んで。まあ王族と親類関係になってしまうのじゃから、驚くのは無理ないが…」
「私が不在になると、ニア様の護衛は…」
「そっちかーい!」
驚いたのは王だった。
・・・・・・・
とてもスッキリした朝だった。仁亜はゆっくりと目を覚まして、欠伸をする。窓を見ると太陽の光が上から降り注ぎ…えっ、太陽が上に?!
「やっば寝坊した!!遅刻だ!!」
普段社員寮で布団で寝ていた仁亜は、いつもの癖で毛布をめくって慌てて飛び出…そうとしてベッドから落ちた。
「いったー…あ、ああそうかここは寮じゃないんだ…」
そうつぶやいて寂しくなる。やっぱり異世界に来てしまったのは夢ではなかったようだ。すると隣のドアが開こうとしたので仁亜は隊長かと思い焦る。
「すごい音が…!あら、ニア様、起きましたのね。おはようございます」
ドアから顔を出したのはシータさんだった。
「おはようございます、あれ、アイザックさんは…?」
「急用だと王に呼ばれたので朝早く出て行かれました」
「そうですか。起床時にも様子を見にくるって言ってたんだけどな…」
「…あらあら。きっと用事がすんだらまたニア様の所へ戻ってきて下さいますよ。
さ、まずはお支度致しましょう」
ちょっと残念そうな表情をした仁亜をシータは見逃さなかったが、(今聞くのは時期尚早よねぇ)と黙っていた。
この空気を読む能力が、彼女が侍女長になれた所以である。黙ってそのまま仁亜へ服を用意する。
「じゃあ顔を洗ってきます。あ、それは昨日私が着てた服!」
「勝手ながらお洗濯させて頂きました。洗いやすい且つ上質な生地で、洗濯係も驚いておりましたよ」
「そんな〜安物なのに。すみません、洗っていただいて」
「ところで、このようなものがあったのですが…これは何に使う物でしょうか?」
スッと両手で出されたもの、それは…昨日着用していたブラジャー。堂々と出されたため仁亜は仰天した。
「のおおお!」
「こちらも洗わせて頂きましたが…レースやフリルがふんだんに使われていて美しいですね。初めて見ました」
「えっ、コレの着け方をご存知ないんですか?」
「着ける…という事は首に巻くものではないのですね」
…なんてことだ。
確かに昨日ドレスを着る時はコルセット、夜は胸の部分だけ生地が厚いネグリジェだった。ブラの文化がないのかもしれない。おそるおそる聞いてみる。
「じゃ、じゃあどこにどうやって着けると思います?」
「……そうですねぇ…………」
シータさんはブラのカップ部分を私の頭に乗せ、両端のベルトを首下にもっていき、ホック止めした。
それはまるで、ロリータ嬢のヘッドドレスのようだった。
「…こうでしょうか?あらまあ、とっても可愛らしいですね」
(これじゃ変態だよおおおおお!!)
仁亜は心の中で激しくツッコミをするのだった。




