エピローグ
「あのね……あんたが出て行った日にね、お父様がお客さんをつれてきたのよ、私の婚約者だって……」
「婚約者だって……」
「ええ、お父さんとの競合会社の社長の息子さんらしいわ。パーティーで私にひとめぼれをしたんですって……まるで漫画家おとぎ話みたいよね」
「……姫奈はそいつの事が好きなのか……?」
「わからないわよ、だってろくに話してもいないもの……大体私が乗りきだったら家出何てすると思う?」
「そうだよな……」
私の言葉に彼は眉をひそめる。そして、しばらくの間沈黙が支配をする。彼はどういう反応を返してくれるだろうか? そんなやつほうっておけっていってくれるかしら? それとも、お父様に抗議をしてくれる? それとも……笑顔で言って来いって言うのかしら? 私は自分の心臓がすごい速さで鼓動しているのを感じる。皆は両想いっていってたけど、実際のところはわからないものね……でもね、私はあんたが一緒になってくれるって言ったら実家を捨ててでもついていくつもりなのよ。家事だって習ったしお金だって私名義の株があるから食べるのには困らないの。だから、お願い。私と一緒にいたいって言って。
「ねえ、一夜……もしも、私が助けてって言ったらあの映画みたいに助けてくれるかしら……?」
「それって……」
私は最後の願いを込めて彼につげる。だけど彼は何かを悩んでいるかのように喋れない。ああ、これはだめだ……もしも、困っているだけだったらあきらめようと思っていた。ううん、きっとあきらめられないけど身を引こうと思ってた。だけど何でそんな辛そうな顔をしているのよ。何を考えているの? あなたは私と一緒にいたいっていってくれるだけでいいのよ?
「ごめんなさい……変な事を言ったわね。ちょっと席を外すわね」
煮え切らない彼に対して私は最終手段に出ることにした。私は席を立って、裏口へと向かう。そこには金髪のウィッグで変装をした誠ちゃんと七海さんが待機してくれていた。
「どうだったんだい、姫奈ちゃん」
「バカ一夜!!」
「これは……計画スタートですな」
私の一言で誠ちゃんと七海さんが察してくれたようで即座に行動を開始する。外に出て車の前に待機した私は一夜あてにメッセージを送る。少し待って、カフェの入り口をみていた誠ちゃんが言った。
「あ、一夜くんが来たよ。じゃあ、始めるね」
そういうと誠ちゃんは、端正な顔を歪めてクソムカつく上にNTRでもしそうな笑みを浮かべて、一夜の方をみつめた。殴りたいこの笑顔!! 演技だと知っている私ですら、不信感を湧くくらいなのだ。一夜は相当イラついただろう。私は彼の表情が気になるが決して振り向かないまま車に乗る。
車がトロトロと法定最低速度で走り始める。一夜は追ってきてくれるかしら? 今頃七海から事情を聞いているはずである。これでもしも、彼が私をあきらめるようだったら……最悪の想像をしてしまったけれど、それは杞憂に終わってくれたみたい。
「お、七海さんの車が追ってくるよ、じゃあ、始めようか」
「でも、流石に盗聴はやりすぎじゃないかしら……」
どうやら彼は追ってきてくれているようだ。それを聞いてホッとすると同時に罪悪感が襲ってくる。実は七海の車には盗聴器が置いてあり、私達に聞こえるようになっているのである。
「でもさ、姫奈ちゃんも確信が欲しいでしょ」
『私としてはお嬢様には幸せになってほしい。だが証拠がない以上雇われの身に過ぎない私はうかつに動けないんだ。旦那様にも迷惑をかけてしまうからね……』
『俺がやります。俺が彼女を助けます。彼女には言いたい気持ちがあったんです。俺は逃げてきた、薄々感じてはいたけど気づかないようにしてきたけど……もう、逃げるのはやめようと思います。だって俺は彼女が姫奈が大好きだから』
「あーーー、一夜しゅきぃぃぃぃ」
「うわぁ……」
私の顔がよっぽどやばかったのか、誠ちゃんが引いた声を出す。でも仕方ないと思わないかしら? 私はずっと好きだったのよ。盗聴器越しの告白でも嬉しいのよ。今の顏は誰にも見せられないだろう。
「ちゃんと録音しているからね、お店にいくよ」
「はいー、永久保存しなきゃ」
私は一夜の甘いセリフに顔がにやけて腰が抜けそうになったが頑張ってお店へと行くのであった。今回のは今後目覚ましボイスにしよう。ちなみにこのお店の店員はみんな私の友人である。今日一日だけだが貸し切ったのだ。誠ちゃんから一夜が入ったという連絡を聞いてそれで……
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「というわけだったのよ」
「回想なが!! って、まって? え? 最初っから計画だったの? ていうか盗聴してんの?」
「ええ……一生の宝物にしていいかしら。将来ね、子供が出来たらお父さんはね、お母さんの事をこうおもっているのよって教えてあげるの」
『俺がやります。俺が彼女を助けます。彼女には言いたい気持ちがあったんです。俺は逃げてきた、薄々感じてはいたけど気づかないようにしてきたけど……もう、逃げるのはやめようと思います。だって俺は彼女が姫奈が大好きだから』
「死にてぇぇぇぇぇぇぇ!! 待って、子供って早すぎない? てか、それを聞かせるのおかしいでしょ!!」
店内に俺の絶叫が響く。しかし、みんなはほほえましいものでも見ているようにこちらを見つめている。いやいや、犯罪スレスレじゃないか。訴えたら俺勝てそうじゃないかな?
「その……ごめんなさい……引いたわよね……こんな女……」
俺が叫んでいると隣に座っている姫奈がしょんぼりとしながら不安そうにこちらを見つめている。そんな彼女を見ながら何と答えようか悩む。いや、答えはもう決まっているんだよ。だけどさ、直接言葉にしたらこれが告白になるわけで……そうしたら俺達はもう、戻れないのだ。彼女を幸せにできるなんてわからないのに……
いや、違うだろ。そんなのどうでもいいんだよ、大事になのは俺が姫奈をどう思っているかなんだよ。世間体とかさ、身分とかどうでもいいんだよ、目の前の恋愛に関してはクソザコなお嬢様ががんばったんだ。だったら俺だって……もしかして、父と母のように俺達の関係も破綻するかもしれない、だけどさ……これだけがんばってくれた彼女に対して自分がこわいからって理由だけで逃げちゃいけないと思うんだ。
「姫奈……その、幸せするとは保証はできないかもしれない……、でも俺は姫奈が好きだ。だから俺と付き合ってくれ」
「一夜……いいの……? 私は一夜の気持ちを知るためにこんな三文芝居をしたあげく盗聴をするような女よ」
「いいっての、それだけ俺を好きって事だろ。姫奈こそ俺でいいのか?」
「いいに決まっているでしょう、私も大好き!!」
姫奈が泣きながら抱き着いてくる。それと共に周りから拍手の雨があふれる。いや、これまじで恥ずかしいんだけど……よく考えたら俺って部活の友人や同級生の前で公開告白をしたんだよね……
「七海」
「はい、お嬢様」
姫奈がパチンと指を鳴らすとともに七海さんがなんかでかい本と一枚の紙をもってくる。何だこの辞書みたいな厚さの雑誌は……ゼク〇ィだぁぁぁぁぁ。ってことはこの紙は……
「さすがに入籍届は早くないかなぁぁぁぁぁ!! 俺達まだ高校生なんだけど!!」
「なによ、私たちは一緒に5年も暮らしているし、気心もしれてるじゃない。それとも遊びのつもりで告白したの?」
俺の反応に姫奈が拗ねたようにこちらを睨んでくる。やっべえ、怒ってる顔も可愛いな。でもさ、まだ問題があるんだよね。
「嬉しいけど愛が重すぎるぅぅぅぅぅ。てか、王牙おじさんを説得しなきゃいけないだろ」
「それなら心配ないよ」
俺のツッコミに厨房の奥から一人の男性が出てくる。王牙おじさんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! え、なんでいるんだよ。てか、さっきの告白は王牙おじさんにも聞こえてたの? さすがに死にたいんだが!!
彼は姫奈と俺を交互に見た後に大きくため息をついた。やっぱり気に喰わないよね……俺が説得しようと姫奈への思いをぶちまける前に王牙おじさんが口を開く。
「まずはおめでとうと言っておこう。やはり血は争えないな……実は私もね、妻の使用人だったんだよ。そして、君と同じように妻と相思相愛だったんだ。だけどやはり身分というものがあるだろう? だから中々私たちの関係もすすまなかったんだよ……」
「え? そうだったんですか、王牙おじさんの時はどうやって……?」
「ああ、高校二年の時にね、車が渋滞で来れないというから歩いて一緒に帰ったんだが、雷雨におそわれてね……雨宿りと称して誘惑をされてラブホにね……そこからはなし崩しだったよ……君はそうならないように貞操帯を身に着けてもらってたんだが無駄だったようだね……」
マジかよ……どうやらあの貞操帯は姫奈だけでなく俺も守るためだったらしい。というか姫奈のお母さん会ったことないけどマジでやばいな。どうやら、姫奈のやばさは遺伝の様だ。いや、一緒に寝た時に襲われなかった分姫奈の方が常識があるのかもしれない。俺がちょっと恐怖を感じながら彼女を見つめていると、照れくさそうに確認をしてくる。
「ねえ、一夜……これからは恋人でいのよね?」
「ああ、色々突っ込みたいことはあるけどさ……その……よろしく頼む」
「そう、あと一つだけ否定させてもらうわね、あなたは私を幸せにする自信がないっていっていたけど、あなただけが頑張るなんておかしいでしょう? 一緒に幸せになるのよ」
そういって満面の笑みで抱き着いてくる姫奈はとても可愛くて、魅力的で、あと胸の感触がやばくて……俺の愛馬が暴れそうになり激痛が走る。いや、マジで洒落にならない!!
「うおおおおおおおおおお」
「どうしたの、一夜?」
「いやなんでもないから……大丈夫だから……ちょっと一瞬だけはなれてまじで」
「なんでよ」
そう言って俺が彼女から距離を置こうとすると唇を尖らせて不満そうな顔をする。まさか、貞操帯をつけさせられていた後遺症とは言えずに俺は笑ってごまかす事しかできない。
「まあ、いいわ。いつかちゃんと理由を説明してもらうんだから。それでね……一夜と色々と行きたいところややりたいことがあるの」
そう言って目を輝かせてこれからの事を語る彼女は何ともまぶしくて美しかった。これからも、まだまだ困難はあるけれど俺は彼女の幸せな未来を作っていきたいと思う。
なろうコンにまにあわせるためにバタついてしましました。すいません。
これにて完結です。
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