黒乃姫奈の完璧なる計画 2
「お父様、お話があるのですが……」
「おお、なんだい?」
家に戻った私は帰ってきた父の部屋を訪れた。彼は私の顔を見ると一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに顔を引き締める。その様子で父が私が何の話をしに来たのか気づいているという事を察する。ならば、話は早い。
「お父様に我儘をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「可愛い娘の言う事は聞いてあげたいのだけどね……一夜君の事だったらあきらめなさい、彼が自分で姫奈と一緒にいたいというのならともかく、無理やり彼と一緒にいようとするのは違うんじゃないかな?」
「さすがですね、お父様……、つまり、彼が自分から私と一緒にいたいというなら問題はないという事ですね」
「ああ、そうなるね、でも、彼は自分の意思で出て行ったんだよ」
怪訝な顔をするお父様の言葉に勝利を確信した。言質はとった。私はにやりと笑みを浮かべる。恋愛の駆け引きは苦手だが、こういう駆け引きは学校生活や、お父さんのお仕事を習っているうちになれた。そして、奥の手を持っている以上私に負けはない。
「それではお父様、私が一夜を説得するのに協力をしてはいただけないでしょうか? 必ず、彼にもう一度屋敷に戻ると言わせて見せます」
「悪いがそれはできないな、彼は自分の意思で出て行ったのだ。ここで私が君に協力をするのはフェアじゃないだろう?」
「そうですか……」
私の言葉に父は首を横に振る。ええ、そうね。お父様の言う事はもっともよ。でも、私はもう一度一夜の気持ちを知りたいの。彼とちゃんと話したいの。だから私はスマホを掲げて、動画を見せる。
『ほらほら、いいじゃないか? キャバクラ何てみんないっているよ。今日はゆっくり楽しもうじゃないか』
「んんん!!! まて、姫奈……これはどこから……」
「さあ、どこでしょうね、それはそれとして海外にいるお母様ににそろそろ近況報告をするのですが……」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
これは善意の協力者に送ってもらった動画だ。父がだらしない顔をして、部下とキャバクラに行くのが映っている。私は情けない顔をして頭を掲げている父に再度笑顔を浮かべてお願いをする。
「それで……お父様、協力していただけますよね?」
「ああ、くそ……油断していた……それで……何をすればいいんだい? やはり血は争えないのか……」
そういって何やら呻いている父に私はいくつかお願いをするのであった。後は彼女のシナリオの通りにやるのだ。私は気合をいれる。今こそ頑張るのよ、姫奈、私ならきっとできるもの。だって、彼を思う気持ちはまけないのだから。