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魔術学園の最強黒板消し  作者: noah太郎
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7話 主神に異議あり!

その日のうちに大規模な魔力の枯渇は、ヒューマニア王国で災害認定された。


国防省は大臣を筆頭に、徹夜で民の保護や原因の究明に当たっていたが、現在まで何も掴むことができないでいた。


一方で、タケシの魔力が満たされ、魔法の効果も収まったため、大気中の魔力は少しずつ回復していき、次の日の夕方には、魔力を要する全てのものが、その機能を回復させ、活動を再開できるようになっていた。


そんな中、学園の講義室にはワイドの姿があった。災害後であるため、学園は休講しており、講義室には生徒の影はない。


窓からは夕焼けの綺麗なオレンジが差し込んでおり、講義室を悲しげに照らしている。


ワイドは1人、生徒の席に座り、考え込んでいた。



(あの違和感。未だ正体が掴めない違和感。)



目を瞑り、記憶を辿る。



(倒れる寸前、感知魔法に何が反応していたのだ…しかし…)



悔しさからワイドは机をバンと叩く。



(重要な部分が思い出せない!くそっ!)




そのようにワイドが、必死に思考を巡らせる中、タケシはというと、



スピーッ、スピーッ、パチン!

わっ!なんだ…?あ〜ワイド先生か。どーしたんだ?生徒側の席に座って…


あっ!そうか!なるほどなぁ。

俺もやったことあるよ、それ!

長く教師続けてると、時々あるんだよねぇ〜

「このままでいいのか」「もっとやれることはないか」とか、考えちゃうこと!


そんな時にやるのが


"一度、生徒側に戻って、初心に帰る"


だよねぇ。


生徒からどう見えているか。

生徒側に立って、自分を客観視することって大事なんだよなぁ〜


しっかし、だいぶお悩みのようだな。

あんなに頭を抱えて…


俺に人の体があれば、同じ道を歩むものとして、声をかけ、話を聞いてやれるのに…



とまぁ、そんな感じで何事もなかったかのように過ごしていたタケシに声がかかる。



「黒井さん…」


ーーーあっ、女神様。お疲れ様です。


「約束の時間になりました…。いかがでしょう。」


ーーーもうそんな時間?早いなぁ。魔力のコントロールの話ですよね。


「はい。実際に目で見て判断させていただきます。」



女神がそう言うと、1人と1つの周りに、球体状の膜が広がっていく。



ーーー女神さま。これは何です?


「念のため、世界との干渉を一時的に断たせていただきました。この中で試験を行いますね。」


ーーーなるほど。



タケシが頷くと、今度は3つの紫色の小さな球体が、女神の前に現れる。



「この3つの魔力玉から、1つずつ私が指定した分の魔力を、黒井さんに吸い取っていただきます。」


ーーーわかりました。よろしくお願いします。


「では、右から10%、50%、80%ずつ、魔力を吸い取ってください。」


ーーーは〜い。


「………」


ーーー…………


「……黒井さん?」


ーーーん?どうしたんですか?


「いっ、いえ。どうされたのかと思いまして…」


ーーーえ?あっ!すみません。終わりました。


「はっ、はあ!?」



女神は驚いて、魔力玉に目をやる。



「なっ!本当に…?こんな早く、しかも3つとも寸分の狂いもなく!?」


ーーーあれ?早くって…3つ同時にしちゃったんですけど…もしかして1つずつってそう言う意味?


「どっ、同時にですか!!?」



明らかに女神の表情が青い。



ーーーもしかして…俺、またやらかしました?


「…最早やらかしたというレベルでは…ないです…。」



女神はゆっくりとタケシに顔を向ける。とりあえず、美人が台無しな顔であることに間違いはない。その口は、震えながら小さく開かれる。



「昨日、主神への報告を終えたばかりなのに…」


ーーーえ?主神ってなんですか?報告って…


「…あなたの存在は、この世界では異端すぎるのです。どうしてこうなったかはわかりませんが、私にはこういったイレギュラーについて、世界管理を統括する主神へ説明する義務があるのです…」


ーーーへっ、へぇ〜…。俺って異端なんだ…そっ、それで主神さまは何と…?


「なぜこうなったのか、原因を"必ず"突き止めろ、と。」


ーーーでも、女神さまはこの世界を管理してるんでしょ?そんなもん、すぐにわかるんじゃ…


「ですから、あなたは異端すぎるのです。先ほども申しましたが、何でこうなったのか見当もつかないのです…」


ーーーあぁ〜。では、どうするんですか?



タケシがそう言った瞬間、女神は瞳に大粒の涙を浮かべる。



ーーーめっ、女神さま?だっ、大丈夫で…



「うわぁぁぁぁん!そんなのわかる訳ないじゃないですか!私にだってわからないことはあるんですからぁ!」



女神はまるでシャワーのように、両目から涙を流して泣き叫んでいる。見兼ねたタケシは、慰めるように声をかけるのだが…



ーーーめっ、女神さま…まぁ少し落ち着きましょうよ…ね。


「あなだもあなだでずよぉぉぉ!どゔじで規格外なごどばがりするんでずかぁ!もぉぉぉう!主神様には怒られるし、グロイさんは勝手なことばがりじでぇぇぇ!」


(ーーーおいおい…俺の名前がグロテスクさんみたいになってるし…。)


ーーーでも、規格外って言われてもなぁ。好き好んでやっている訳じゃないし…元はと言えば、黒板消しに転生させら…あっ。



タケシが気づいた時にはすでに遅し。その言葉を聞いて、女神は更に泣き出してしまった。



「わがっでまずよぉぉぉ!わだじがミスしなげれば、こんな事になってない事はぁ!でも、間違っちゃっだものはぁ、しがだないぢゃないでずかぁぁぁぁぁ!」


ーーーあちゃ〜、やっちまった…



その様子を見て、タケシはない腕でない頭を掻く。そして、ため息を吐き出すと、女神に向かって声をかける。



ーーー女神さま、とりあえず落ち着きましょうよ。原因究明については、俺も一緒に手伝いますから。


「ひっく…ほっ、ほんどうですがぁ…?」



色んなものでぐちゃぐちゃになった顔を、こちらに向ける女神に対して、タケシは若干引きつつ、



ーーーえっ、えぇ、本当です…



その言葉を聞いて、女神は落ち着きを取り戻したのか、取り出したハンカチでチーンッと鼻をかむ。



「…ほんとですよ。本当に手伝ってくださいよ…」



涙を拭いながら、ジト目でタケシを見る女神。それに対してタケシは、必死に肯定の意を唱える。

すると、女神は小さくため息をついて、再び話し出した。



「…それとですが、クリーナーの付喪神については、転生処分が下りました。」


ーーーしょっ、処分ですか?!


「はい。神の力を勝手に譲渡し、この世界の一部に悪影響を与えたわけですから。主神様もたいそうご立腹でして…」


ーーーでっ、でも彼女はそれがダメと知ってたんですか?!


「…それは知らなかったかと。」


ーーーなのに主神様は、彼女だけに罰を与えるんですか?!


「…一応、私も力の一部を封印されてしまいました。」


ーーーそうですか…。転生処分って…具体的にどうなるんですか?


「おそらくは、一旦"無"に戻されて、一から作り直されるかと…」



タケシはそれを聞いて、我慢できずに唐突に声を荒げた。



ーーーそれって実質"死ぬ"って事じゃないですか!そんな事、俺は断じて受け入れません!



タケシの叫びに、女神はビクッと肩を震わせる。



ーーー大体!彼女に説明はしてたんですか?力は勝手に譲渡しちゃダメって!それも無いのに、失敗したからお前はクビって!そんなん絶対許さないっすよ!


ーーーそれに、主神かなんか知らないけど、自分は責任取らずに部下だけ罰するとか、怠慢も甚だしい!


ーーー部下の失敗は上司の責任、上司の失敗は社長の責任でしょ!!!上に立つ者こそ、率先して責任を取らなければ、その組織に未来はなぁぁぁい!!!!!



タケシの勢いに女神は言葉を失っていた。

タケシは全てを言い切った後、我に返って猛省する。



(ーーーうわぁぁぁぁぁぁぁ、神様に啖呵切るとか、俺は何やってんだ!理不尽さにイラッとしたのは確かだけど、これじゃ前と変わらんではないか!しかも今回は"神様"だぞぉぉぉ!洒落にならんではないか!)



タケシの頭には、まだ駆け出しの塾講師時代に、運営会社の社長の怠慢に我慢ならず、今と同じように申し立てて、クビになった事を思い出されていた。



(ーーーあ〜これで異世界スローライフも終わりかなぁ。1日で終わりってのも歴代一位かもしれないなぁ。なんのランキングか知らんけど…)



そう落ち込むタケシに、女神が静かに声をかける。



「…本当に主神様の言う通りでした。」

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