3/あどけない添削者
<ギャルゲ平和条約第3条>
草食系男子は、学園系恋愛では最強。
肉食系男子は、NTR系では最強。
では、ヒロインの場合は?
この作品だと、素っ気ないクール系ヒロインが多い気がします……
年上成分多めなので……
●大学/中庭
昼食の時間になり、俣野縁は広場で弁当を広げる。
最近では当たり前になっている商子の手づくり弁当。高校生の頃、なぜか毎日のように持ってきたそれが今まで続き、日常となっている。
当時『申し訳ない』と断っても『うるせぇ口答えするな』と、突き返された。それを何度か繰り返していくうちに、あきらめて商子手製の弁当を受け取るようになった。
商子いわく仕込みの余りで作っているという。時には明らか手の込んでいる具材もあった。そうした時は、言葉で感謝しつつ空になった弁当箱を彼女に返していくのが通例だった。
しかし、今日は違った。
「げッ桜でんぶじゃねぇか……”オレ”は嫌いなのに……」
蒸した、甘い香り。鼻がむず痒くなる。2段箱の下、そこに敷き詰められたご飯の半分が白桃色。振りかけられたそれを恨めしそうに見つめる縁。
<――まぁ仕方ないね。我慢してよ>
「我慢できるっちゃできるけど……甘ったるい味がなぁ……」
<ごめんね>
「謝るなよ、キョウダイ。性格は違えど、同じ身体だ。なんとかなるだろ?」
「――キョウダイ? 俣野君にお兄さんや弟さんがいるの?」
唐突に背後から、女性の声。弁当を落としそうになりつつも、なんとか支えてゆっくり後ろを伺う。
「どうもー」
と、手を振る1人の女性――如月芽衣沙。大学の図書室を預かる司書である。
片手に抱きかかえる数本の文庫本。ゆとりある大き目なセーター。スカートから覗く、低いパンプス。服装はいたってシンプルながらも、柔和な色合い。まさに彼女の人当りの良さをあらわしているかのようだ。
「こ、こんにちは」
聞かれていたか、と内心、焦る。独白が恥ずかしいとは思わないが”オレ”と”ボク”の会話を深堀されたら面倒この上ない。
だが、それも杞憂に終わる。芽衣沙の視線は弁当に注がれ、気がそちらへ向いた。
「あら、美味しそうなお弁当」
「ああ、これですか」
「彼女さんの手作り? まさか私お邪魔虫だったかな?」
と、周囲を見渡す。大学内の恋人と、一緒に食べていたと勘違いしたのだろう。慌てず否定する縁。
「違いますよ、如月さん。これは……」
ある程度の事情を話す。うるさい幼馴染がいる事。そいつが作ってくれた弁当だという事。今日はたまたま友人達と都合がつかず、誰もいない中庭で気分良く食べようとしていた事。
「素敵だね、毎日作ってくれて」
「否応なしですけどね」
「でも、感謝してるんでしょ?」
「まぁほどほどに……」
ふふ、と微笑をこぼす芽衣沙。
「ホント素直じゃないなぁ……俣野君は……でもそこがいいんだけどね」
「え? 最後、なんていいました?」
「ん。なんでもなーい!」
と、小さく首を傾げる。その仕草に、つられて笑ってしまう縁。心が洗われるようだ。つい今朝の鉄拳女に傷つけらた心が、みるみるうちに回復する。そんな気がする。
加えて男らしい意見で恐縮だが、座っている縁の目線の先はちょうど芽衣沙の胸元辺り。少し大きめなセーターからでも、その主張した膨らみがよくわかる。まさに眼福である。
頭に花畑が咲き乱れていた後、やっと彼女が抱える本に目が止まる。
「……『マルクスの資本論述』『カーロ・マルクス学』『現代経済におけるマルクス学』……小難しい本ばっかですね」
「ああ、これね。実は経済学の先生がギックリ腰になっちゃったらしくてね。頑張って出勤したはいいものの、借りてた本も持てないみたいなの」
「経済学……あのお爺ちゃん先生ですか」
「そうそう。それで申し訳なさそうに『返却したいから持ってってくれ』って頼まれちゃって。断りづらくて、頼まれちゃった」
芽衣沙、大事そうに数冊の本を抱きしめる。人のためになったと嬉しそうな表情に、縁は言葉が出ない。お人好しすぎるというと、彼女が凹んでしまうからだ。
ついこの間も、金欠だった学生にお金を貸していた。それを見かけた縁。話を詳しく聞いてみると、ほとんど見ず知らずの男子学生だったらしい。流石にそれは偽善すぎると、年上の彼女に注意をした。
しかし、思った以上に心が折れてしまった芽衣沙。立ち直って笑顔を振りまくのに数日が必要だった。
<なんていうか、あどけないよね。年上なのに可愛いらしさがあって>
「……だな」
「あ、そうだ! 頼み事で思い出した!」
芽衣沙、しゃんと背筋が伸びる。今度は申し訳なさそうに片手で拝む。やはりコロコロと表情が変わって面白い。
図書館で知り合った当初、物静かな女性だと思った。しかし、実際に面と向かってみると、表情が多彩で魅力的な女性だと実感した。
なにより彼女と話していると”オレ”も――そして”ボク”も楽しいのだ。
「頼まれてるヤツ、明日には読み終わると思うから。まとめた感想は明日でもいい?」
「いいですよ。急ぎませんから」
「ありがとう。じゃあそろそろ行くね。ご飯中に邪魔してごめん」
と、手を振りながら去っていく。話していた時間も数分足らずだが、濃密な時間だった錯覚もあった。それだけ彼女への印象や意識は深いモノなのだろう。
読了ありがとうございます!
じっくりと、作風の味を出せていけたらいいと思ってます。
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上がったテンションを、作品にぶつけていきますので(笑)