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2/優しい減らず口

<ギャルゲ平和条約第2条>

ハーレム系主人公は、平凡スペックなのになぜかヒロインに好かれる。

あれか、フェロモンか。

それとも、ハチみたいな習性か。


この作品のサブヒロインとの出会いは偶然でも……

好かれている理由はしっかり描きたいですね……(遠い目)

●アパート/103号室/縁の部屋


「ほら、起きろ寝坊助が。課題が終わらないから早く起こせっていったの誰だよ!」


 座るのも面倒だ。十六夜商子いざよいしょうこはネイルが光る右足で、俣野縁またのえにしの腹を踏んづける。嗚咽して芋虫のように丸くなる縁。

 

「……出てたよ暴力女……」


 と、くぐもった声。鈍い思考も相まって、爽快な起床とはいいがたい。別段、痛くて転がるほどではないが、起き抜けに腹を踏まれて気分が良い人間がいるだろうか。


 しかし、それが聞こえない商子ではない。


「あぁ? なんつった? このままてめぇのキンタマ、センベイみたいに押しつぶすぞ?」


 流石にそれは勘弁だ。寝ぼけ眼をこすって、伸びをする縁。


「おはよ、商子」

「ああ、おはよう。寝坊助くん」


 縁はボサボサの寝ぐせ頭をかき、腹もかき、携帯電話を無意識に探す。窓際まで転がっていた携帯を掴み、時間を確認する。


「げ、もうこんな時間じゃん」

「だからいってるだろ。つーか、ヒトに起こしてもらった時はなんていうか教えただろ馬鹿エニシ、あぁ?」


「……ありがとう、ございます」


 それで良し、と大きく頷く商子。


「ほら、さっさと着替えちまえ。こっちの掃除はやっといてやるから」

「ふぁい。頼んます」


「ってお前ッ!? なんでココで着替えるんだよ!? 洗面所に行けよ!?」


 上着のシャツを脱ぎかけている縁。腹はもとより、乳首も垣間見える。商子は咄嗟に扉の方を向き、背中で喋る。


「あの、狭い洗面所じゃなぁ」

「……よく大家の前でそんな事いえるな」


「『大家の娘』だろ? それに今さら恥ずかしがる事じゃないだろ? ガキの頃から見てるんだし」

「……お前はよくても、あたしが困る……デリカシーつーもん持てよ、ったく……」


 デリカシー。それを商子が語るのか。


 朝から人の腹に蹴って起こしてくる暴力女。知り合って10年近くになるが、心配りや気配りといわれても未だにピンとこない。

 

 

××××× ××××× ×××××

   


 十六夜商子とは、いわゆる幼馴染である。


 そのきっかけは本当に些細な事だったと思う。確か家が近所で小学校の通学班だった事。そこで商子の家が食堂屋で、縁の両親が料理に疎い事を知る。それから縁一家はよく”恵比寿”へ訪れるようになった。


 そこで自然と顔を合わせるようになったのが、商子である。


 歳は縁の1歳上。ガサツで意地っ張りで負けず嫌い。それが当時の――いや、今も変わらずの印象だった。客には愛想が振りまき、すばしっこく店内を駆けるその姿に、羨望を抱いた時もある。


 学校が休みの時は、内気だった縁の手をとり色々な場所に引きずっていかれた事も覚えている。傍から見れば、縁も商子もまるで姉弟のように見えただろう。


 そして商子は学生時代にヤンチャをしつつ、時間をつくって食堂の手伝いをよくしていた。おそらく自分が店を継ぐと想定していたのだろう。口から出てくる言葉は悪いが、家族思いの優しい娘なのである。


 高校卒業と同時に、食堂の修行を始める。元々、手先が器用なため料理や作業を覚える事に苦労はなかったそうだ。しかし、昨今の客数減少で売り上げも厳しくなっていると聞く。


 そうした意味では、十六夜家が大家をしているこのアパートも幾分かの維持費になっている。彼女の曽祖父が地主だったらしく、ある程度の土地は持っていたらしい。それを活用したのが、この”七福荘”だ。


 オンボロアパートと呼んではいる反面。縁は商子、並びに彼女の両親達に頭が上がらない。昔からの付き合いとはいえ、両親と疎遠になった貧乏学生に衣食住の場所を与えてくれたのだから。


 

××××× ××××× ×××××



「……おまえさ、前と比べて何か変わったよな」


 それは、無意識の言葉だった。

 特別、意味はない。ただ、昔の泣きじゃくっていた縁と面影が重ならないだけ。その違和感が、ぽつりと言葉になっただけだ。


 一緒に風呂に入った小学生の時。縁が恥ずかしくてタオルで股間を押えていた頃が懐かしい。もちろん商子は、何も隠さず暴れていたのだが。


「……そう、か……?」


 と、首を傾げる。商子があっちを向いている間、そそくさと着替え終わる縁。商子の横を通り過ぎ、台所で蛇口をひねる。コップも使わず、蛇口付近に口を持っていき、咽喉を潤した。


「コップぐらい使えよ」

「面倒なんだよ、洗うのが」


 と、次は顔を洗って歯ブラシを持つ。


「…………」


 気づけば、数年前から違和感があった。内向的な縁が、いつからか性格が変わってしまったのだ。その性格を、あえて表現するならば――


「コップ使って商子の洗い物増やすわけにいかないだろ?」

「あたしが洗うの前提かよ、おい」


 そう、縁は減らず口になった。

 気障には程遠い、優しい減らず口に。

読了ありがとうございます!


じっくりと、作風の味を出せていけたらいいと思ってます。


もし面白いと思った方、続きが気になる方、

どうぞブックマークや評価を押していただけると幸いです。


上がったテンションを、作品にぶつけていきますので(笑)

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