プロローグ/黒い自分が笑う
新作です。
目に止まってくださり、ありがとうございます!!
エロゲ大好き筆者が、
ギャルゲーっぽい雰囲気で、
でもシリアスなとこは重たく、
楽しくかけたらいいな、と。
そう思って書きました。
どうぞゆっくりしていってください。
●夢の中/高台(夕方)
「――で、話って何? こんなトコでどうしたの?」
「いや、その…………」
「もじもじしない! シャキッとする! その癖やめなさいっていつもいってるでしょ?」
「……ごめん、なさい……」
「ほら男でしょ。今年から高校生になったんだから!」
「うん……わ、わかった……」
「さっきから変だよ? 深呼吸なんかして、どうしたの?」
「……従姉さん……」
「ん?」
「――ボクは貴方の事が好きです!!」
「へ?」
「昔から好き、でした……ボクと付き合って、ください」
「ちょ、ちょっと! 好きって、もしかして彼氏彼女で付き合って欲しいってこと?」
「……うん」
「あー、そういう事かー」
「…………」
「まぁ悪いけど、無理。今、ちょっと恋愛する気なくてさ」
「…………そう、なんだ……」
「こんな私より、もっと可愛い子いるでしょ? ほら同い年の子とか?」
「……いない、よ」
「…………ホントに?」
「……うん、ホント」
「ああ、もう男のが泣かないの。ったくそういうトコは昔っから変わらないんだから」
「……うん、ごめん」
「いいよ、幼馴染でしょ。んー、でも同情で付き合うってのもなぁ。私も仕事に集中したいし」
「…………」
「わかった。わかったからそんな悲しそうな目で見ないの」
「……ご、めん」
「んーそっか、んじゃこうしよう」
『貴方が25歳になればその時、私は30歳。どちらもフリーだったら付き合ってあげる』
××××× ××××× ×××××
それは淡く、鮮明な、悲しい夢。
霞む視界に、佇む少女。彼女の言葉は、今でもはっきりと耳に残っている。
この時の自分は嬉しかったのか。今の自分は悲しく思っているのか。喜怒哀楽が入り混じる。この夢を見る度に目尻にたまる涙は一体、どんな感情なのだろうか。
俣野縁も、それを知る由もない。
なぜならそれはかつての記憶。現在の夢。記憶を空想で脚色したそれに過ぎない。何が本当だったか、定かではないのが現状だ。
しかし脳裏に焼き付くあの言葉は、はっきりと覚えている。
『貴方が25歳になればその時、私は30歳。どちらもフリーだったら付き合ってあげる』
そう、この言葉だ。途方に暮れながら――困った顔も愛らしかった――彼女が口にした、約束。
高校1年生になってすぐ。夏休みに入る前、あの高台で告白した時のそれだ。
失恋した後も亡骸のような生活を繰り返した縁。両親や友人、部活の先輩にもえらく心配をかけてしまった。
そうした日々を過ごしていくうち、とある事を思い浮かべる。
今、15歳の縁。
では、あと10年。好きな彼女と付き合うのを我慢すればいい。別に死に別れるわけでも、友人として会っていけないわけではない。会いたい時に会えるのだ。
――別に簡単だな。
と、目からウロコの気分だった。自分が我慢すればいいだけの話。自分があと10年間、彼女の事を好き続けていればいいだけ。
もしその時、彼女に違う恋人がいたら仕方がない。彼女が選んだ恋愛だ。口を挟むつもりはない。その場合、断腸の思いで身を引こう。あくまで、できればの話だが。
縁自身、この恋愛が決して普通ではないのは理解している。しかしただ、重たいと思われようが長いと思われようが関係ない。これは、自分自身が決めた恋愛だからだ。
小学生の頃から、ずっと温めてきた憧れのような恋心。この想いをまた10年、仕舞い込めばいい。
小学校のように、一緒に通学したい。
互いの両親が留守の時と同じく、一緒に夕食を食べたい。
一緒に遊び、無邪気な笑顔を見つめていたい。
そうした想いを、また心の宝箱に仕舞おう。鍵を閉めて漏れないように。会ってつい、その想いが溢れないように。
それから3年。大学生の春。彼が笑った。
気づけば心の宝箱が、人の影を成している。まるで鏡の前の自分。手を前に出すと、あちらも手を合わせてくる。
「オマエの大事な恋心、オレが守ってやるよ」
――黒い、等身大の自分が、にやりと笑った。
読了ありがとうございます!
じっくりと、作風の味を出せていけたらいいと思ってます。
もし面白いと思った方、続きが気になる方、
どうぞブックマークや評価を押していただけると幸いです。
上がったテンションを、作品にぶつけていきますので(笑)