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WOLF  作者: cou
2/7

2.別視点

少し編集をくわえました。 

それは、なんと表現すべきだろうか。


その日も、お祖母様から言いつかっていた対象の観察をしていた。

学校が終わり、対象が帰っている途中、急に、ピタッと立ち止まった。と思ったら、こちらを向いてまるで獣の様なスピードで駆けてくる。その速さに、目を見開いた。ありえない。

私は、幼い頃から偵察の技術を身に着けている。なのに、つけていたのがバレたの?それとも…って、速すぎる!ど、どうしよう…………。考えていた私の前を、風と共に槇が通り過ぎる。考えてる暇はない。できる限り、追跡を続行しなきゃ。

しばらくして、槇を見失った私は、一匹の濁り切った目をした狼のような獣を発見して肩をはねさせた。狼から離れたところで一旦立ち止まり、周囲を見てみると、随分昔に捨てられた集落なのか狼の唸り声以外は、水を打ったように静まり返っている。

槇はどこだと探す前に、狼を挟んでその反対側にその狼に向かう存在がいることに気がついた。

あれは…槇?!目をこらしてようやっと見えるぐらい遠くにいる。何をしようとしてるのかわからないけど、どうにかして止めないと。しかし、訓練されたはずの私よりも圧倒的に速くて、さらに向こう側にいるのに止められるわけがない。私が一歩踏み出した頃には、槇は狼へたどり着いてしまっていた。そしていつの間にか持っていたナイフを…って、あれは、私の!咄嗟にナイフの入っていた懐を探る。そこにあるはずのものの感触はない。あれはお祖母様からもらった一族の紋章が刻まれた銀製の特別なナイフだ。どれだけ離れていたとしても、見間違えるはずがない。きっとすれ違ったときに取られた。なぜそんな技術を?

見つめた先には、一瞬目を離した隙にやられた、四肢の健を斬られ、トドメに首を切られ血を流した狼が転がっていた。

狼の上に載っている槇に視線を移すと、なぜか、顔を狼へ近づけていく。何をするつもりなんだろうと戦々恐々としながら、しかし、確実に報告するために目はそらさない。…まさか、まだとどめがさせていないとか?でも、明らかに息の根は止まっている。では何を、と考えたところで、答えは出た。

狼へ向かって口をおもむろに開けて、その口で食いついたのだ。…食いついた?!あり得ない。意味わからない。何してんの、嘘でしょ?まさか、夢?しかし、頬をつねっても叩いても目の前で肉を食い千切り、狼を食らっているのは変わらない。しかも、咀嚼しているその顔は、恍惚の表情に染まっている。

 そして一口目を飲み込んだとき、その変化は起こった。急にうずくまったと思ったら、その体が、ブワッと膨らみ、瞬きした時には、成人男性程の狼よりも一回り大きな、しかしその毛並みや色は、槇の髪を思わせる白や灰色の混じった毛並みの立派な黒狼が槇のいたはずのところに存在していたのだ。その黒狼は何もおかしなことなどなかったかのように、まるでもとからそこにいたかのような振る舞いで、死体となった狼をあっという間に骨ごと食らっていく。

その光景は、私を恐怖させるのに十分過ぎた。

 なんだ、こいつは。槇はどこに行った?いや、槇が、黒狼に、なった…?私は、それを、この目で見たの…?こいつは、何者?私は、何を、観察させられていたの?お祖母様は、これを知っていた…?どうして。私は、何も知らない。なにも、聞いてない。それよりも、黒狼が食べ終わったら、次に狙われるのは私だ…今のうちに逃げなきゃ。でも逃げ切れるわけがない…。私の脳裏に槇の風を巻き起こす程の足の速さがよみがえる。足も恐怖から萎えてしまって動かない。私ここで死ぬの…?絶望的な現状に呆然となる。

 やがて、こちらの心配をよそにすべてを食らった黒狼が気を失ったように倒れ、人間体に戻ったとき、しばらくして目の前の槇に気づき、命があることに心底ほっとして気が抜けそうなのを一度両手で頬を叩くことで、気を入れなおす。

お祖母様が、私を捨て駒に使うとは考えられない。もしかしたら、槇のことについても知らなかったのかもしれない。勝手な憶測はするな。どちらにしても、私はお祖母様に報告の義務があるし、お祖母様の下についたときから、一族からは逃げられない。とりあえず、槇はこのままにしておけないし、もし私が槇を連れて行ったとしたら、私にもなにか教えてくれるかもしれない…か。槇をこのまま放っておいてもいいけど、流石にかわいそうだし。




そうして、その場に唯一残された血痕は数十分後にはまるで地面に吸われるように静かに消えていった。




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