ー巫女(マナ)ー
私は、
イオリくんの言葉に、
ギュッと
心臓を捕まれたような感じがした。
・・・・・
・・・・・・聞いちゃいけなかったかも知れない
ーー・・・・あ、
ご、ごめんなさい・・・。ーーー
「・・・・・。
別にお前に謝られる覚えはないよ。
マナは、昔、
ある村で巫女をしていて、
日照り続きで飢餓状態だった村で雨乞いの儀式をするために、
禁忌とされていた儀式を執り行ったんだ。
僕は、その儀式の材料として小屋におびき寄せられて、
・・・抵抗する間もなく殺された。
僕も元は人間だったんだ。
胸くそ悪いけどね。」
イオリくんはそう言うと、
深いため息をついた。
ーー・・・・そうだったんですか・・・・ーー
私は、当時のイオリくんの気持ちを思った。
・・・・・やっぱり、
前に感じた通りだった。
・・・・凄く辛い過去だったんだ。
「・・・・・・・・。」
アカズサさんは、
イオリくんの過去の話を聞いていて、
何か考え事をしているみたい。
・・・・・なんか、眉間に皺が寄ってるような・・・
「・・・・そうか、
巫女のマナ・・・・・か。
その子が、今回のシオンが巻き込まれた件と、
深く関わりがありそうだな。」
アカズサさんは、何やら含みのある言い方をしたけれど、
イオリくんは気がついていないようだった。
「・・・・そうだね、
-------、
・・・・あ、そうか。
名前で呼ぶとシオンは分からないんだよな。
じゃあ、
元の地位でもある<死の番人>で
呼び名を固定しよう。
ここでいくつかの疑問が生まれるんだけど、
<死の番人>は、
何故、マナの事を知っているのか。
何故、マナを欲しがっているのか。
何故、それにシオンが巻き込まれたのか。
とりあえずはこの3つが僕は知りたい。
・・・・そもそも、マナは、ーアチラ側ーの、
無数に存在していた村の中の、
これまた無数に存在していただろう、
(普通の巫女)だ。
それなのに、
ーコチラ側ーでは、
畏怖の存在として名が知れている
<死の番人>の知るところとなったのは、
一体どういう理由があっての事だろうな。」
イオリくんの考察を聞いていると、
確かに、
不自然な点が多いような気がする。
<死の番人>たる者が、
何故、人間の女性1人に、
そこまで固執するのだろう?
・・・・・そして、
何故
・・・・私が関わってくるのだろう・・・?
私はそこまで考えてから、
ふと、
ある事に気がついた。
ーー・・・・・、
イオリくん。ーーーー
「・・・・何?」
ーー・・・・・・違っていたらごめんなさい。
もしかして、
私の姿って
そんなにマナさんに
・・・・似てるんですか?・・・・・ーー
「・・・・・・・。」
イオリくんは黙ってしまった。
・・・・・だって、
カンヌイさんも、
以前そのような事を言っていたし、
<死の番人>の者も、
私の事を(マナ)と呼んでいたと言う。
なら、
私の姿は、
イオリくんの憎む
マナさんに、似ているって事なんじゃないだろうか。
イオリくんは、私を見つめている。
その瞳は、
(どっち)を見ているのだろう。
シオンとしての私なのか。
・・・それとも・・・・
「・・・・イオリ、
それは、俺もずっと気になってた。
シオンは、
マナと言う子に似てるのか?・・・」
アカズサさんも、イオリくんを急かすように問う。
「・・・・・
似てるよ、かなりね。
僕が知っている当時のマナより、
子供の姿だけど。」
イオリくんの言葉に、
予想はしていたものの、やはりショックから、
何の返事も思い付かずに、
今度は私が黙ってしまう。
「・・・・だとしたら、
シオンは、
マナと言う子の血縁者なのか?」
アカズサさんは冷静に、
あり得そうな可能性を上げる。
「・・・・いや、
マナに子は居なかったはずだ。
第一、
当時は巫女としての命を持って生まれた女人は、
生涯その純潔を神々に捧げる決まりだったしね・・・」
・・・
・・・・何だか、そう言うイオリくんの顔が
一瞬だけ
悲しそうに見えたのは
私は気のせいではないような気がした。